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結局安易な名前しか浮かばなかった

誤字脱字…以下略。

「う~ん…痛てて…くぅ~……」


 よく寝たな。うん。私が伸びをしながら辺りを見回すと、既に時刻は夕暮れ時だった。どうやら寝すぎてしまったみたいだ。


 防御壁に特に変わった変化もなく、危険な事は何も無かったようだが、お腹が空いた。

 何かさっぱりした物が食べたい。

 着替えや、お金に代わる宝飾品などは持ってきたが、肝心の食べ物の事はうっかり失念していた。


 防御壁を解除して辺りを探してみるが、当たり前だが食べ物などは特に無いみたいだ。


 つわりはあるが、今はそれほどでもない。私のお腹がグゥ~と鳴る。いやぁ…鳴られても食べ物は無いですよ。あはははは……はぁ~。


 私はフラフラとした足取りで泉に近づき、淵に座り込み空腹を誤魔化すため、泉の水を手で掬い浄化の呪文を唱えるとゴクゴク飲み始めた。


「ぷはっ……。うん…美味しいなぁ。結構喉も渇いてたんだ。でも水だけじゃお腹はそう都合よく一杯にはならないなぁ…」


 これ以上飲むと、お腹を下してしまいそうだ。

 まだ暗くは無いが箒に乗って飛んでしまおうかと、あれこれ考えて居ると背後からいきなり肩を掴まれた。


「っ……!サッ…サンダーストーム!!きゃっ…」


 驚きすぎてつい、中級魔術を使ってしまった。雷の嵐が辺りに吹き荒ぶ。


「うわっ…ヤベッ…ちょっ…」


 私の肩を掴んだ人物が慌てて真横に逃げる。それは咄嗟の判断にしては良い判断であった。

 私が放ったサンダーストームは後方に一閃しただけであった。後ろに下がっていたら、間違いなく直撃してました。中々の判断力ですね……ガボガボ…。


 何故最後にガボガボって言ったか、ですって?そりゃあ現在私が泉の中に落ちちゃってるからですよ。


 サンダーストームを放った衝撃で落ちましたが、何か。


 私が泉から中々の上がれず、ガボガボやっていると私の攻撃を避けた人物が近付いて来ます。

 しまった!止めを刺されるのでは?と、私が固まって居ると、その人物は怪訝そうにこう聞いて来ました。


「魔術師ってのは、皆お前みたいなのか?魔術を使う代償に、泉に飛び込むとかか?だとしたら大変だなぁ~」


 余りにも意味不明な発言過ぎて、一瞬ポカーンとしてしまう。


 私のそのポカン顔が面白かったのか、その人物……若い男性は、「ふははははっ!変な顔!!」と、私を見て笑い始めました。

 変な顔ですと?私の顔はソコソコ可愛いわよっ!

 美人よ!と、言い切れないのが痛い所だ。


「いつまで笑ってるの?男だったらか弱い女性を驚かせないで頂きたいわね?」


「か弱い…女性?ぷはっ…はははははは!!」


 私が笑っている男性に怒鳴り付けると、何が面白いのか更に笑い出す。這いつくばして土下座させたるっ!!と、私が魔術を使おうとしたタイミングで別の方向から声が聞こえてくる。


「ちょっと!アーウィン!!あんた最低ね?女の子が泉の中に落ちてんのよ?普通は手を貸してあげない?普・通・は?」


 うわっ!迫力美人……でも、それより気になるのは彼女のヘアースタイルだけどね。金髪縦ロールって、何処の貴族のご令嬢ですか?って、一応私も貴族のご令嬢ですけどね。逃亡中ですが。


 まじまじと縦ロールさんの事を見つめていると、その後ろから来たもう一人の男性がすまなそうに私に手を貸してくれた。


「驚かせてゴメンね。二人とも悪気は無いんだよ…悪気は、ね…ふぅ…」


 タレ目で柔和な人だ。そしてかなり苦労されておられるようだ。


「どうもありがとうございます」


 そ私はそう言いながら彼の手を支えにして、泉から脱出した。


 タレ目さんは直ぐ様全身ずぶ濡れの私に、タオルみたいな布を肩から被せてくれた。


「風邪をひかないと良いんだけど……。僕たち今は薬草と毒消し位しか持ってないから……」


 中々困窮していらっしゃる様です。この人達は多分出で立ちからからして、冒険者のパーティーでしょう。若いし、駆け出しか何かでしょ。


 それにしても、風魔術のドライで乾かせば一瞬で終わるけれど、タレ目さんの優しさが荒んだ私の心に染みるね。


 私とタレ目さんがやりとりしている間も、アーウィンと呼ばれた人物と縦ロールさんの舌戦は続いている。


「ははっは~!それよりミランダ!!さっきまで散々言ってくれてたなぁ~!魔術師なんか居ないって!居たじゃねぇかっ!酒を樽で奢れよ~?」


「チッ……。あれだけ待って出てこないから、完全に勝ったと思ったのに……くぅっ…」


「お前の敗因はここで一夜を明かすのを了承した事だなぁ~!はっはっはっ」


 アーウィン青年は、嬉しそうに縦ロール……ミランダさんの周りをグルグル跳び跳ねて喜んでいる。


 私が怪訝そうな表情でもしていたのだろう、タレ目さんが申し訳なさそうに理由を教えてくれる。


「ゴメンね……。魔術師が居たと居ないで賭けをしていてね。さっきまではミランダが勝っていたんだけど、君が現れたからね……アーウィンの勝ちになったんだよね……」


「そっそうですか………」


 って、こいつら何やってんだ?まさかとは思うけど、その賭けのためにここで一夜明かそうとしてたの?アホなのかな?


「フフ…君は言いたいことが全部顔に出ちゃうタイプだね?」


 タレ目さんは優しく微笑むと、私の頭をゆっくり撫でた。


 うん。理恵の時にも散々言われたな。お前は分かりやすくて良いって。


「それと…自己紹介がまだだったね?僕はヘスって言います。君は?」


 タレ目…いや、ヘスさんはほんわり笑いながら名乗ってくれました。

 ありゃりゃ…そういえば自己紹介などしてませんでしたね。

 ラズリエラって正直に名乗ったら不味いだろうから……。


「あっ!そうですね…えっとごめんなさい…私、名乗りもせずに…リエ……いや、リエラです……」


 グギョギョギョギョ~~~~。


 不振極まりない態度な上に、空気を読まないお腹の音が重なった。

 しかもしどろもどろに名前を名乗ったのにも関わらず、ヘスさんは優しく微笑むとこう言った。


「うん。宜しくリエラ…。それと火にあたった方が早く乾くし、温かいスープもあるからこっちにおいで」


 どうやら自己主張の凄い私のお腹の音を聞いて、スープを恵んでくれるそうです。

 優しすぎて、いつか悪いやからに壺とか無理やり買わされそうなタイプではないでしょうか?

 お姉さん心配です。



 まだまだ舌戦を繰り広げているアーウィンさんとミランダさんは放っておいて、私とヘスさんは一緒に焚き火がある場所まで歩いていったのでした。







妊娠の初期頃に泉に落ちるって、普通はアウトですかね?

まぁ…物語の中なので、ツッコミ不要です。

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