崩壊二日前
「よ! おはよう!」
「おはよう!」
「お? なんだ? やけに今日は元気だな」
「え?そうかな」
別に元気なつもりはないんだけど、もしかしたら昨日が影響しているのか?
昨日はあやねと、2人きりの時間の最長時間を更新した。
でも、最長会話時間の更新とはいかなかった。緊張してしまい、母が帰ってくるまで、ほとんど話しをすることができなかった。
母が帰ってきてからは、母とあやねの時間が流れた。
その時間に少しの間、父が入っていたことは、腹立たしかったが、それはなるべく顔には出さないようにした。
それでも公一にとっては楽しい時間であったことには変わりがない。
なので、その影響で少し今日はテンションが上がっているのかもしれないと公一は思った。
キーコーンカーンコーン
4時間目のチャイムがなった。
「ええ、それでは、今日はこれで授業を終了します」
「起立! 礼。」
『ありがとうございました』
(やっと、終わった)
公一は、伸びをする。
今日は、最近の中でも、特に睡魔に襲われる日だった。
一学期の頃の自分であれば、睡魔に負けて机に突っ伏してしまっていたであろうが、受験が迫ってきて、公一は、授業だけでも必死に聞く努力をする決意をしていた。といってもいつまで続くかはわからないが・・・。
公一はクラスの友達とお昼ご飯を食べるために席を移動する。
「お前はいいよな。いざとなったら、実家継げばいいんだからさ」
「そんないいものじゃないよ。別に俺の店、儲かってないしな。それにそもそも継ぐ気がねーよ」
「それでも、俺らよりかはいいと思うけどな」
中学三年にもなると、みな将来のことを個人差こそあれども考えるものだ。
その会話を二学期ともなると昼休みにするようになっていた。
その中でも、実家の家業といわれるものがある人は、うらやましがられる。その一人が公一であった。
「それにしても、将来、誰が一番この中学で出世するかな?」
友達の中に一人が言う。
「そりゃ、お前、沢村だろうよ。あいつ、イケメンで、しかも金持ちだぜ、そもそもの地位が違うぜ」
中学生は出世の意味を深くは考えない。
「男子はあいつで決まりだろうな。それなら女子は?」
「それも決まっているだろ。草津川に決まってるぜ」
「あいつ、高校は東京に出るらしい。なんでも、もう芸能事務所が決まってるとか」
「え? うそ!?」
それは初耳だった。
「ほんとだって、学校になんか芸能関係の人が来てたって、俺のダチがいってた。この学校で芸能人になるとしたら、草津川くらいだろう? 絶対あいつ関係だって」
(マジかよ・・・。)
公一は、自分がかなり落胆しているのを感じた。
でも、すぐにそれはなくなる。どうせ、高校にあがれば、あやねが地元に残ろうが、公一との成績の差を考えれば、一緒の高校に行くことは万に一つもない。
「俺、トイレ言ってくるわ」
公一は、席をたった。