第3話 音楽室
第3話 音楽室
「とにかく、はあ、はあ、旧校舎と行き来するタイプの怪談は、
最初に言った旧校舎の怪談と、大鏡、13階段、あと……
あと元の世界に帰るって言ったらやっぱり七不思議を全部解決!」
「はあはあ、それはシンドそうだ」
4人は廊下を走る。
青白い腕がそれを追いかける。
トモヤはメガネの力であの腕が見えている。
でも3人には見えていない。
だめ――追いつかれる。
イオリの足を青白い手が掴んだ。
「キャ」
体勢を崩してイオリが倒れる。
「い、痛っ」
「伊織さん!」
倒れたイオリの周りに廊下から生えた手が集まる。
「や、なに!? ヤダ、ヤダヤダヤダ、助けて! 助け――」
青白い手がイオリの両手足を押さえつけ、口を塞いた。
「伊織!」
「伊織さん、う、うわ……」
イオリの近くにいたシンにも手が襲い掛かる。
シンはそれを払おうとする。
けど壁から生えてきた別の腕がシンの左腕を掴んだ。
「な、何なんだよ、これっ」
「ち」
引き返したトモヤが舌打ちをしブレードを発生させシンを掴んでいた腕を切断する。
「信一、栞、先に行け!」
シンの肩をシオリの方へ押す。
「信、掴んで!」
シオリが手を伸ばす。
シンがその手を掴む。
トモヤとシンの間に2人を間を引き裂くように一斉に腕が生えてきた。
青白い腕が2人に襲いかかる。
「こ、の……!」
右手を手刀のようにして斜め下に振り下ろす。
水の刃が全ての腕を切り落とす。
シオリとシンが離れていくのを尻目に見たあと、青白い腕に飲み込まれていくイオリに駆け寄る。
「ああ、くそ。どうすりゃいいんだ。一か八か、うらっ」
青白い腕に掴みかかる。
魔に接近したことでペンダントに埋め込まれた術式が反応する。
自動展開した障壁で青白い腕が吹き飛ばされていく。
ペンダントに充填されていた魔力も消費される。
イオリの腕が見えた。
腕を掴んで引きずり出す。
「と、智也ぁ! やだ、もういやー」
無事に助け出せたイオリを抱き寄せる。
ちょうどペンダントの魔力が尽きたのと同時だった。
執拗に2人の周りに腕が生えてくる。
2人が追い込まれ壁に背をつけた。
「くそ、多すぎる」
それが教室のドアであることに気づいた。
「イオリ、こっちだ!」
2人は中に入っていった。
入って正面奥中に古いグランドピアノが置いてあった。
「ここは音楽室か……。中には入ってこないんだな……」
トモヤが室内を見回す。
「伊織、大丈夫か?」
「う……ん。ぐす、ありがと……」
「泣くなよ……いや、仕方ないか。顔拭け、顔」
イオリはハンカチを取り出して涙を拭く。
「伊織、落ち着いたか?」
「うん、ちょっとは……。ぐす、でも、信一くんも栞もいなくなっちゃた……」
「大丈夫だ。栞はバカだけど知識あるし頭が回る。信一も俺達の中じゃ運動能力は一番だろ」
「そんなこと言ったって……」
「あー、思い出した。伊織って小学生の頃も泣き虫だったよな」
「な、何年前よ。うー……ばか」
「悪い悪い。よし。本当は、2人を探しに行きたいんだけど……外に出るとやばそうだよな」
「そう、よね……」
ギシ。
木の……軋む……音……?
イオリが「ひ」と声を上げる。
バタン。
「な、なに?」
今のは……ピアノの鍵盤の蓋が開く音だ。
でも2人はまだ気づいていない。
「智也……」
「大丈夫だ、ちゃんと守ってやる……」
2人は壁に背をつけ回りを見渡す。
静かなピアノの音色が流れ始めた。
2人がピアノに目を向ける。
「これって……」
「在り来りだな……曲目は覚えてないけど」
「エリーゼのためによ。うう……なんで誰もいないのにピアノが……」
「心配するな、俺には見えてる」
ずれたメガネを右手で押し上げる。
グランドピアノを弾くベートーベンの亡霊の姿が見えた。
「伊織、ここにいろよ」
「や、やだ」
「その方が安全だから。な?」
そう言い聞かせトモヤは亡霊に歩み寄る。
亡霊の近くに立ち魔法陣を描く。
亡霊は尚もピアノを引き続ける。
右手の中指にはめた指輪を経由して魔法陣に魔力が充填される。
「あいつは怖がりなんだ。遊園地のお化け屋敷を逆走して逃げ出してた奴なんだよ」
ピアノを弾きながら亡霊がトモヤを見上げた。
「み、見えている!? ま、待て」
同時にアクアランスがベートーベンの体を突き破った。
「ごはぁ」
血を吐いて亡霊の姿が消えた。
ピアノの音も止んだ。
「トモヤ、今の何?」
「ん? お前そうだったじゃん」
「じゃなくて……今の水みたいなの」
「ああ、これ? よく分からないけど使えるんだよ。不思議だよな」
「そう、なの……?」
「そんなことより2人を探しに行かないとな。伊織、いけるか?」
「ま、守って、くれる?」
「あたりまえだろ」
「じゃ、じゃあ、だいじょうぶ」
イオリはトモヤの袖をそっと掴んだ。
「さすが私が初めに目をつけた方ですわ」
目をつけた……?
私はその言葉に首を傾げた。
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シオリとシンは理科室にいた。
無事のようだけれどやっぱり心配……。
2人には怪物と戦う対抗手段がない……。




