日本のような、インドのような
この屋敷で過ごすことになって数週間が過ぎた。
夜明けから日没までみっちりとパルパティさんから言葉を習い、休憩の合間に屋敷のなかを案内してもらううちに、
少しずつこの世界のことが分かってきた。
まず何よりも驚いたのが、この国の地形がほぼ日本と同じだということ。
大広間のテーブルに広げてあった布に描かれた地図を見たときには心底びっくりした。
もしかして・・・ここはファンタジーの世界なんじゃないのか?
インドっぽい人たちがわんさかいる日本なんて、現実じゃとてもありえないだろ。
そして、この国があるのはおよそ九州の北のほうのようだ。
地図は九州を中心に綺麗に描かれているのに対して、本州のほうは関東に向かうにつれて雑になっている。
ちょうど群馬のあたりなど、なにかよく分からない生き物?のようなものさえ描いてある。
それを指さしてこれは何?と聞くと、聞いたことのない単語が返ってきた。
首をひねっているとそのあとの休憩後にパルパティさんに一冊の本を手渡された。
これまた驚いた。
その本に描かれていたのは、見たこともないような奇怪な・・・モンスターともいうべき生物だったからだ。
それらの生物の姿に加えて、火や水、雷のようなものが描かれている。
火を噴いたり雷を落としたりするのかな。生きてるうちにはなるべく会いたくないな。
最後のページには、地図に描いてあった生物がそのまま非常に大きく描かれている。
名前らしきところには、さきほど聞き取った単語。
地図に描かれるほどの生物って、ドラゴンとか海竜とか、ああいうヤバい生物が定番だったりするけど・・・
こんなもんが群馬にいるとか、いよいよファンタジーっぽいよな?
そしてこの国において、踊りというものはすごく特殊なものらしい。
軍の訓練を見せてもらったときに、通常の武器訓練とは別に、踊る訓練をしている部隊がいたからだ。
そして軽装の彼らがひとしきり踊ったあと、衝撃的なものを俺は見た。
踊り終えた彼らの前方に、勢いよく爆炎が噴き上がったのだ。
それは前方にあった藁人形をいともたやすく焼き尽くしてしばらく燃えあがっていた。
あれは何?!とパルパティさんに聞くと、またも知らない単語、そしてその単語がタイトルの一冊の本。
そこには踊りの図解と、火や水や雷、矢印や波のような図が載っていた。
まさかあの踊りって・・・魔法みたいなものなのか?
しかし踊って生まれる魔法なんて聞いたこともない。この世界ならナンでもアリなのか?!
魔法って唱えるもんだと思ってたけど、踊っている最中は声も出してなかったしなー。
なんつーか、ファンタジー要素全開すぎてすごく気になる。
自分でもああいうのが出来るならやってみたいよなー。
今度パルパティさんに踊りを教えてもらえないか聞いておこうっと。
そういや、いつもティランとパルパティさんの2人と食事をしていたのだけれど、
最近になって娘さんがそこに加わって一緒に食べるようになった。
年は・・・インドっぽいからかだいぶ大人びて見えるけれど、17才ぐらいらしい。
名前はサーミ。
まあ、あの2人に息子か娘ぐらいいてもおかしくないとは思ってたんだけど、
人種が違ってもはっきり分かるすごい美人さんなんだ、サーミ。
出るとこ引っ込むとこすごいしっかりしてるし、こげ茶の長い髪も綺麗だし。
きょうだいも親しい女友達もいなかった俺にはちょっとばかし視線を合わせづらいかな。
照れくさいんだよ、分かるよな?
サーミはそこまで気にならないみたいでよく話しかけてくるけど。
でも、そんなサーミの加わった食卓は少しだけ賑やかで、
いまの俺にとって貴重な憩いのひとときになっているのは確かみたいだ。
親子仲も円満みたいだしな。
こういう家族って、いいよなー。
知っておくことは山ほどあるけど、ここでの暮らしはすごく幸せかもしれない。
そんな風に思いながら俺は充実した非日常を過ごすのだった。




