第十七話「軍隊のような何か」
作者は厨二病にかかった。
「隊長?」
私は三枝の口から出た言葉を繰り返した。
「知り合いか?」
「……」
三枝は押し黙ってしまった。
あの集団の前に立つ男、とうに二十歳はいっているであろう貫禄があり、あの集団を纏めたことがプラスされすさまじいカリスマを感じる。
服装は独特で、集団の奴らが着ているような学ランではなく、茶色くコートのように改造された代物だ。
最近は制服を改造するのが流行っているのだろうか?
「お前ら、今日はよく集まってくれた。俺は心から感謝している」
急にその男が演説のような皆に行き渡る話し方でしゃべり始めた。
「今から言うのは俺からの頼みだ。聞いてくれ」
場が静まり返る。嵐の前兆のように風の音すらも止んだ。
そして隊長と呼ばれた男は口を開けた。
「お前らは一体いつ怒る。殴られた時か、罵倒された時か、大事な物が壊された時か、友人が馬鹿にされた時か、教師に理不尽な説教をされた時か、国が自分たちをのけ者にした時か、世界が自分を必要としない時か、この世の中が気に食わない時か。誰だっていつだって怒る要素はある。だが、怒っても一人じゃどうしようもない時がある。矛先がとんでもない相手に向かっている時がある。だからだ。だから俺はお前らを呼び出した。俺は今とんでもなく怒っている。この町が、俺たちの愛したこの町がよそ者の奴らに荒らされている。これは俺にとって怒るほどの事だ。だが俺一人で戦うにはあまりにも巨大すぎる相手だ。だからお前らの力が欲しい。相手と対等に、いや圧勝できるほどの力が欲しい。だからお前らの力が欲しい!自分の手を見てみろ。そこに込められている力はどれほどだ?ここにいる仲間達が集まったその手の強さはどのくらいだ?そうそれだ!それを俺に預けて欲しい!」
その一、二分の演説で全員の目が殺気立った。五十人以上が全員自分の手を見て拳を握り締める。
「答えを聞こう。お前ら、俺に協力してくれるか!」
「「「おう!」」」
「この町を愛する心で怒りを燃やせるか!」
「「「おう!」」」
「今お前らにある力の源は何だ!」
「「「地元愛です!」」」
「今お前らの敵はだれだ!」
「「「愛する土地を汚す者です!」」」
「俺は誓おう!ここに在る力を無駄なく全てを余すことなく使うと!」
「「「俺たちは誓います。己の力を有効に使える者に託すと!」」」
まるで宗教のようで、それにしては気高く一人一人に自我がありバラバラだ。バラバラの意思を持っているのに統一されている。これじゃあ本当に軍隊じゃないか。
「やばいなあいつら。あいつらは敵に回したくないな」
ヤブ医者が隣でつぶやく。
ヤブ医者がこんなことを言うなんて意外だ。意外なほどあの集団が危ないのかもしれないが。
「ところでだ。そこの茂みに隠れているのは誰だ」
隊長と呼ばれた男がこちらに向いて言う。その声に合わせて集団全体がこちらを向く。
「ちっ、バレたか」
手塚が逃げる体制をとろうとしたが、それよりも早く三枝が茂みから出て行った。
「三枝!」
私は止めようとしたがすでに遅かった。
「お前は……」
「お久しぶりです。隊長」
二人は向き合った。元仲間としての二人が。
「懐かしい顔だな。元気にしていたか?」
「おかげさまで今ではまっとうな生活をおくらせてもらっています」
人形やロボットが暴れている生活がまっとうなのか?
「その制服は……、あの学校に入ったのか」
隊長と呼ばれる男は怪訝そうな顔をする。
「ならそこの茂みにまだ隠れている奴らも同じ学校の奴らだろうな」
何者だ、あの男。素人の私にも分かる。あの男はずば抜けて危なく才能のある奴だと。ただの高校生にはとてもじゃないが思えない。
「しょうがない。出て行くか」
そう言ってヤブ医者は立ち上がった。その顔はやけに楽しそうだ。
「こんにちは、隊長さん」
ヤブ医者が深々とわざとらしくお辞儀をすると、隊長は「はっ」と鼻で笑った。
「偽理高校の亡霊がこんなところに何の用だ?」
『亡霊』私はこの言葉に少し引っかかった。それはひょっとしてヤブ医者のことなのか?それとも私たち全員のことなのか?
私がそんな事を考えているとヤブ医者は言った。
「そんな殺気立たないでくださいよ。僕たちはただ戦争をしに来ただけですから」
厨二病状態で書いた結果がこれだよ!
こうして黒歴史に新たなページが加わった。