第十六話「メイドや執事」
新たなクラスメイト登場。
「なんだか分からない物語」と同じキャラがいる?
気のせい。
ヤブ医者が言っていた。
「この学校って普通じゃないと思ってるようだが、それは君の勘違いだ。高校なんてみんなこんなもんだよ。狂人を作り上げ、育て、実戦で使えるようにする。そんなところだ。だが安心していい。世界はそれを正義と言うからな」
それを聞いたとき私は嘘っぱちだと思っていたが、今この光景を見ると本当のことなんじゃないかと思ってしまった。
「何じゃこりゃ」
私の目の前で今、ヤンキーの風貌をした他校の生徒と、今回暴走族討伐を任された私たち十人が壮絶な戦いを繰り広げているのだ。
こうなってしまった原因は少し時間を遡ること四時間前。
土曜日と言うこともあり学校が午前で終了した私たちは、先生から言われていた罰をクリアするために暴走族が集まるとされている廃工場へと向かっていた。
メンバーは十人。
私
ヤブ医者
ハルク
三枝信一
手塚変野
ここまでが罰として来た大掃除組み。
ここからが特別賞として来ることになってしまった大掃除組み
木村木々
今川冴
ゆっくり
和田京成
夜名黄泉
一応クラスメイトの名前と顔は一致するように覚えていた。
おなじみ頭だけのゆっくりがいたことは驚きだが、もう一つ驚いたことがある。和田と夜名のことなのだが、和田が何故か執事服を着ており夜名が何故かメイド服を着ているのだ。初めて教室に入っておかしな奴らがいると思った二人がいる。
それに、彼、彼女が着ている執事服やメイド服をよく見てみると、かすかだが私の着ている学校の制服の名残がある。それこそ「何故つくった」と言いたくなる代物だった。完成度はかなり高い。
木村はいたってまともそうだったが、とても眠そうな顔をして雨が降るわけでもないのに傘を持っている。今川も見た目はまともで、別にこれと言った特徴もなかった。
だいぶ個性的なメンバーが揃っていると思ったが、まともそうな人たちがいてよかった。メイドとか執事とか医者とか生首饅頭とか普通に考えて沢山いるわけねーよ。沢山いてたまるか。
そんなことを考えている内に着いた廃工場。
同じ町内にあるとはいえ、学校と廃工場は同じ町外れで反対方面にあるため時間がかかった。
その分新しい仲間とワイワイ騒ぎながら来たので、この異様なメンバーにもだいぶ馴染んでいた。話をしてみれば結構まともな人たちだった。
木村や今川は別世界に行ったことがあると愉快なジョークを会話にはさんで皆を笑わせたり、夜名はドS発言で男性陣(手塚を除く)を怯えさせ、和田は全国を歩き回ったことを自慢げに話していた。
「おっ、見えてきたぞ」
三枝が山のふもとにあるいかにも何か出そうな廃工場を指差した。
「暴走族が日が昇ってから動き出すとも考えられないし、ここらへんで時間を潰すか」
着いてみればまだ四時頃だった。まだ時間がありそうだな。
私たちは持ってきたレジャーシートを広げてピクニック気分で遊び始めた。
暇になるかと思ったが、手塚がバトミントンやらバレーボールやらインディアカやらを学校のバックからいろいろと取り出すため、暇することはなかった。
そして時間が少し経って二時間後
私たちが遊んでいると、いかにもぐれた集団が廃工場前に集まりだした。
「あれが暴走族か?」
「いや、あれは近くの強羅高校の奴らだね」
「噂には聞いたことがあるな。確か結構な悪名を持っているとか。『ハイエナ』だったか?」
「それは昔の名だ。今じゃ『軍勢』と呼ばれている」
「ただの野獣から軍隊にねー。こりゃ何かやばそうだ」
三枝とヤブ医者、手塚がいたってまじめな話をしている横で、私はゆっくりのほっぺを伸ばしたり突っついたりしていた。何か面白い。
今までバラバラにたむろっていた五十人以上はいるであろうその集団が急に整列し始めた。まさに軍隊のように列を作り気をつけの姿勢で背筋を伸ばす。
列の間から誰かが歩いて集団の前に立った。
そしてその前に出てきた人物を見て三枝が一言つぶやく。
「隊長……」
これで登場人物半分は出てきたかな?