第十五話「罰ゲーム」
バトルだ。
ついに念願のバトルフラグだ。
職員会議を終えて教室に入ってきた塩谷先生に私は呼び出された。
「おい、昨日は何があったか覚えてるか?」
先生に言われて、つい昨日何があったか私は記憶を遡ってみた。
「昨日は、大掃除がありましたね」
そう、昨日は大掃除があった。手塚達と一緒にやったのは覚えている。
「じゃあその大掃除でお前がやらかした事を言ってみろ」
記憶があいまいなのはきっと忘れたい過去があるからだろう。それを嫌にでも思い出させようとするのだから教師は鬼畜だ。
「えっと、大掃除でやったことといえば……」
そう思いながらも思う出だそうとする私はえらいと思う。
「人形をぶち壊しました」
「いや、他にもあるだろ」
私はさらに過去を深く探る。探っていると「ヤブ医者」「崩壊」「ふすま」「瓦礫」などの単語が浮かび上がってきた。
これをつなぎ合わせると……。
「あっ――」
私は全てを思い出した。
つい昨日の出来事。まだ24時間と経っていない出来事。あれほどの出来事。自分でも忘れるなんてありえないと思えるあの出来事を思い出してしまった。
「ようやく思い出したか」
「……それで私に校舎を壊した責任をとれと?」
私が恐る恐る聞くと、先生は「いや、そうじゃない。責任なんてどうでもいい」と首を横に振った。
「じゃあ何ですか?」
「昨日は大掃除だったろ?お前ら掃除どころか校舎を壊して散らかしたってことで、順位が最下位になったんだ」
「順位って何ですか?」
「昨日言ったろ。『一番掃除を頑張ったチームには理事長から褒美が貰える。二位のチームには校長から。ただし、ビリのチームには厳しい罰ゲームがあるから気をつけろ』って。だからお前らのチームは最下位となって罰を受けるわけだ」
「そうですか」
なんだか納得いかないが、決まってしまったことを言ってもしょうがない。
「で、罰って何をするんです?」
「そう、それなんだが『この町にいる暴走族を葬って来い』だとさ」
「は?」
「だから、お前らの力量に合わせて検討した結果このくらいの罰がちょうどいいんじゃないかということになったんだ。ちょうど暴走族が町で暴れてるってことで問題になっていたしちょうどいいだろ?」
知らねーよ。どう私達五人の力を検討したらそうなるんだ。
「それ罰ゲーム感覚で決めてません?それも極悪の心を持って」
「ははっ、知らんよ。職員会議はほとんど聞いてないからな。校長あたりが勝手に決めていることだから、逆らっても意味ないだろうしな」
「担任なら止めろよ」
「ああ、あと二位のチームが手助けすることになったぞ」
私の言葉を軽く流して思い出したように言った。
「何故二位のチームが?」
「二位のチームは校長からの褒美ってやつだ。あの校長のことだからほぼ強制なんだろうがな」
「褒美って言うよりも嫌がらせですね」
「まあこんな学校に入った自分のせいだと諦めるしかねーな。じゃあ他の奴らにも言っとけよ。心配すんな、頑張ればなんとかなるさ」
用件だけ言って先生は立ち去っていった。
「……あの先生朝のホームルーム忘れてないか?」
先生は出席すらとらずに出て行ってしまった。
「何か面白そうな話していたね」
いつの間にか後にヤブ医者がいた。とても楽しそうに、嬉しそうに私と先生の話を聞いていた。
あー、こいつなら本当に壊滅できそうだな。
私はため息をついて次の授業の準備に取り掛かった。
先生出番少ないな。