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第十二話「大掃除の終わりに光を見た」

大掃除は今回で終わり。

夏も終わりなのでホラーな話はこのくらいでいいでしょう。

(自己満足)

 掃除中にまさかこんなことになるとは。

 掃除をしていた教室が崩壊して、私は瓦礫に囲まれた空間で奇跡的に生き延びていた。

「出口が塞がれているな」

 突然暗闇から声がした。この声は手塚か。

「手塚、無事なのか?」

 私が暗闇に向かって叫んでみると「おう!」と元気な返事が返ってきた。

「真っ暗で何も見えないな。目が慣れるまでじっとしていたほうがいいぞ」

「分かった」

 そういったが、私はじっとしている性分ではないので暗闇に瓦礫を投げてみた。

「いたっ。何だ!?」

「どうかしたか?」

「いや、瓦礫でも落ちてきたのか?いたっ」

 数回瓦礫を投げて手塚の大体の位置は分かった。目も暗さに慣れたおかげで今の状況を把握することができた。

「どうやら昨日の謎の学校破壊事件の影響で、事件の場所に近かったここが崩れたってわけか。ここも旧校舎に劣らず古いって聞いたことがあるからな」

 手塚がこちらを確認して近づいてきた。つまり、あのロボットをヤブ医者が造らなければこんなことにはならなかったわけだ。アノヤロウ!

「あちらこちらに隙間があるから窒息死はないだろうね。それに、外にはヤブ医者や三枝もいることだからすぐ助けは来るだろう」

 手塚はこんな状況でも冷静に推測を述べている。だが、その推測は欠点が多々ある。まず一つはヤブ医者が素直に助けを呼ぶとは思えない。二つ目は、三枝はこの瓦礫の下に埋まっていることだ。そして最後に、この学校に「すぐに助けが来る」というまともな常識が通用する気がしないってことだ。

「現状は絶望的だ……」

 私は大きなため息をついた。この暗い崩壊した閉鎖空間で、ちょっとした怪我から大きな病にかかることはよくあること。だが、一番危険なのは精神異常だ。手塚は見たところポジティブで平気のようだが、気は緩めないほうがいいな。

「暗い閉鎖空間か……」

 どうやら手塚も同じことを考えてるらしい。

「だったらやることは一つだな」

 手塚がこちらに向きを変え、真面目な顔で私の顔をじっと見た。

「ど、どうした?」

 私が嫌な寒気がして引きつりながら聞くと、手塚は少し微笑んでネクタイを外し、Yシャツのボタンを上からゆっくり外しながら言っう。

「や・ら・な・い・か」

 私はさっき投げた瓦礫の数倍の大きさの瓦礫をさっきの数倍の力で手塚にぶつけた。


『気をつけろよ。男なんて狼ばっかりだからな』


 三枝の言っていた言葉が蘇る。本当に最悪な状況だ。

「ん?」

 私が頭を抱えていると、手塚は何か気づいたように私の肩を叩いた。

「見てよ。この黒板何かおかしくないか?」

 手塚が指差す黒板をじっと見てみると、何も分からない。

「一歩下がって見てみろ」

 呆れたように手塚が言う。瓦礫だらけの床を転ばないように慎重に一歩下がって黒板を再度見てみると、少しだけ違和感を感じた。

「この黒板、他の教室の黒板と違って反対側に設置されてないか?」

 普通の学校の黒板は何故かどれも一定の向きに設置されている。この学校の黒板だって例外ではなく同じ向きに設置されていた。

 だが、この黒板だけは違う。何か後ろを隠すように当たり前のように設置されている。

「後ろの奇妙な壁の厚さといい、この黒板といい、何かあるね」

 どうやら、手塚の探究心に火をつけてしまったようだ。

「この黒板を外したいんだが、どうやろうか……」

 手塚が隣で悩んでいるのを放って置いて、黒板を見ていると、中央に引き戸の取っ手のような窪みを見つけた。うまく目の錯覚を利用して隠されているようだったが、そんなもの私に通用するはずない。

 その引き戸を開けてみると、黒板が真っ二つに割れるように開き、壁があるはずの場所に襖が現れた。

「これは……」

 ふと、和室での人形のことを思い出す。

「空けないほうがいいな」

 そう思って黒板を元に戻そうとした時、すでに手塚の手が襖を開けていた。

「いやー、面白い物を発見したな。中に入ってみる?」

 襖の先には本物の暗闇が広がっていた。私は激しく首を横に振る。

 だが、襖を開けたことによる事実はそんな甘い考えを許してはくれなかった。

 襖の先から髪の毛らしき大量の毛の束が襲いかかってきた。横を向いていた手塚は有無を言わさず暗闇へと引き摺り込まれていき、私は何とか逃げ出そうとしたのだが片足をとられた。

「くっ、ここまでか」

 私はなんとか近くにあった柱にしがみついていたのだが、髪の毛の力は想像以上に強く、私の力は限界に近づいていた。

「コッチヘオイデ。タノシイコトヲシマショウ」

 背筋に氷を貼り付けるような声が襖の奥から聞こえてくる。

私が柱から離れようとしたその時、瓦礫を破って誰かが突入してきた。

破れたところから光が差し、髪の毛の力が緩んだ。私はすかさず髪の毛を振り払い光へ走り出す。

「ハルク、無事だったんだな」

 私が光の先で見たのは大きな身体で崩れないように瓦礫を支えているハルクだった。

「身体は頑丈なのがとりえなので」

 私はこうして大掃除を終えることができた。



 今回の犠牲者

 三枝信一 

 手塚変野 

 両二名は無事救出され、保健室へと運ばれた。その後の詳細は不明。

 保健室にはヤブ医者もいたとのことだが、ヤブ医者に事情を聞きに行った取材班二名が行方不明となった。

 これ以上に犠牲を出さないために、この事件はこれ以上追及しいないことにする。

                                 校内新聞 大掃除事件より


次回は番外編です。

ゆっくりまっていてね!!

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