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第十話『掃除の恐怖・衝撃・関心』

話数が二桁になったのでスペシャル!

いつもより長くなっています。


 掃除が始まったわけだが、正直割り振られた範囲を見てやる気がなくなっている。


 この人数でこの教室をやればいいんだな。

 そう思っていると、ヤブ医者が細かいことが書かれた紙を持ってきた。

「どうやら僕らの掃除場所はこの教室を中心に半径三十メートル。つまり廊下、隣の談話室とその隣の和室あたりだそうだ。この教室が端っこだから長さが倍になったのかな?範囲内の窓。壁、ドア、黒板など、全てを細かく掃除するようにだってさ」

 四人だけでは大変な広さだ。せめて箒や雑巾以外にモップがあったら少しは楽になるんだけどな。

「何だってそんなめんどくさい指定の仕方をするんだ?」

「さぁね。入学したばかりの僕には分からないよ。他のチームも同じ指定の仕方なのかいささか疑問だけどね」

 ヤンキーや手塚はヤブ医者のその返答に納得したが、私は妙に違和感を感じた。

ヤブ医者は何かを知っているように感じてならない。

そもそも昨日のロボットだってそうだ。入学して間もないヤブ医者が何故あんなロボットを作れたのか。それに、ヤブ医者は当然のように保健室を自由に使っている。ヤブ医者はずっと、あたかもこの学校にずっと居るような行動をしているのだ。

 でも今はそんなこと関係ないか。

「じゃあまずどこから掃除していく?」

「僕は和室行ってみたいな」

「おしっ、じゃあ行くか」

 私が考えているうちに話が進んでいた。まあこいつらが仲よさそうでよかった。



 和室に入ると独特な匂いが鼻を衝いた。新品の畳の匂いだ。

「広いな」

 手塚がつぶやく。

 確かに広い。教室の倍近い広さはあるんじゃないだろうか。

「広いが置物とかはないな。シンプルでよかった」

 プリントには部屋に置かれている置物もしっかり磨くと書いてある。この部屋には長机が壁に立てかけているだけで他は何もない。

「残念だけど、和室は障子の張替えもしとけと書いてある」

 またそんなめんどくさい指示を……。

「あとこの部屋は畳を拭いて、押し入れに座布団があるから干しとけだって。障子の紙と糊も押入れにあるようだね」

「んじゃまずは座布団でも出すかな」

 ヤンキーが押入れを開けると、上の段にかなりの量の座布団が重なり合っていた。

「えーと、紙は下の段かな?」

 薄暗い下の段をのぞいて見ると、日本人形がたくさん置いてあった。

「「「!?」」」

 全員が絶句した。

 昔聞いたことがある。人間は本当につらい時や怖いときは声が出ないって。

「……紙はあそこか」

 私が動けないでいると、ヤンキーが人形達の横にある紙と糊を取ろうと手を伸ばした。勇気があるな。

「うわっ!」

 ヤンキーが急に叫ぶ。

「どどど、どうした!?」

「手塚、動揺しすぎだ。少し落ち着け」

 手塚に深呼吸させていると、ヤンキーが震えている手で日本人形を指差す。

「人形の首が、首がこっちに向いた!」

 ヤンキーの顔が青ざめている。

 手塚は動揺しながら「そんなバカな」と苦笑いしているが、私は見てしまった。ヤンキーが紙と糊を掴んだ瞬間人形達の首が一斉に千切れんばかりの勢いで振り向いた光景を。

 もう一度確認のため除いてみると、人形達は正面を向いていた。

「別に変わりないが」

 手塚は震えながらも言うが、本当にそうなのだろうか。私にはさっきとは違い、人形全部がこちらを睨んでいるように見える。

「思ったんだけど、これも置物だよね?」

 ヤブ医者がにやけながら言ってくる。

「「「見なかったことにしよう」」」

 私たち三人の意見は一致して人形は知らなかったことになった。



 障子の張替えをしているヤブ医者と手塚より先に畳を拭いていたヤンキーと私は仕事が終わってしまった。障子の張替えを手伝いたいが道具が二人分しかない。

「ヤブ医者、これから私たち談話室の掃除してくるね」

「分かった」

 ヤンキーはその外見とは裏腹に率先して掃除をこなしていくので早く終わった。綺麗好きなのかな?

「じゃあ次いくか」

「おうっ」

 私たちは隣にある談話室に向かった。



 さっきの和室とは違い談話室はごちゃごちゃしていた。

「こりゃ凄いな」

「ああ、半端ねーな」

 談話室の広さは教室より狭いのだが、あちらこちらに壺やら絵画などの装飾品が飾ってある。本物のシャンデリアなんてはじめて見た。部屋の中央にはいかにもアンティークなテーブルとフカフカのソファーが設置されている。

「無駄遣いもここまできたら立派だね」

「いつまでも感心してても仕方がない。さっさと掃除始めるぞ」

 私が感心していると、ヤンキーは壺を磨き始めた。ちょうどいい機会だ。ちょっと聞いてみるか。

 私はヤンキーの隣で絵画を拭くことにした。

「そういえばまだ名前聞いてなかったね。ヤンキーはなんて名前なんだ?」

「そのヤンキーってのは俺のあだ名か?」

「呼ばれたくなければ大人しく名前を教えなさい」

 ヤンキーは小さく舌打ちしたが壺を磨く手は止まっていない。

「別に隠してるわけじゃねーよ。俺の名前は三枝信一だ」

「三枝か。私の名前は――」

「別に言わなくてもいいよ。お前の名前は有名だからな」

 また私の噂か。まったく誰がそんなことを。

「一つ聞いていい?私の噂って何?誰がそんな噂を流しているんだ?」

 私がそう言うと、ヤンキーは驚いたようにこちらを見た。壺を磨く手が止まった。

「お前知らなかったのか!?あれだけ噂になってるのに」

 私が何をしったて言うんだ!

「本人が知らない噂なんてよくあることか。それに関してだが、ちょっと質問していか?」

「質問?」

「お前なんで女なのに男子生徒の服を着ているんだ?」


「は?」


 私は三枝が何を言っているのかまったく理解ができなかった。

「まるで私が女のような言い方をするなよ。気持ち悪い」

「やっぱり男だったか。お前のこと女だと思っている奴がいるから『男子の制服を着た女子がいる』って噂が流れたんだよ」

 なるほど。どっかのバカがそんな誤解をしたわけか。確かに私は童顔で髪も長い方だが、女に見られるなんて、もう死にたい。

「そう鬱になるなよ。俺みたいにお前が女だって噂に疑問を持つ奴もいるし、ヤブ医者のように女なんて思ってもいない奴だっている」

「そう言われると少しは気持ちがまぎれる。ありがとう」

 なんだ、見た目ヤンキーなのにいい奴じゃないか。

「でも気をつけろよ。男なんて狼ばっかりだからな。まあ、男のお前に言ってもしょうがないか」

「ハハハ、恐ろしいこと言うなよ」

 私はこの先の学校生活が嫌な予感しかしなくなった。

 三枝は壺を磨き終えたので移動してアンティークなテーブルを磨き始めた。私は本棚を吹き始めた。

「じゃあもう一つ質問」

「一つだけじゃなかったのかよ。まあいいけどよ」

「何で三枝はそんなに掃除が得意なんだ?」

「……俺はさ、昔は見た目どおりのヤンキーで問題起こしてたんだ。そんな俺でもあこがれる人がいた。その人も俺みたいなヤンキーだったんだけど、どこか違っていたんだ。俺らがたむろって散らかしたゴミを最後に片付けて、俺らがやらかした事件を一緒に謝りにいってくれて、ヤンキーなんて外見だけの人だった」

 急に昔話を語りだした三枝を見ると、懐かしく微笑むような顔をしていた。

「そんな人が警察に捕まったんだ。どうやら俺たちがやった事件を一人で背負ったらしい。俺たちは自首しようとしたら、あの人はこう言ったんだ。『お前らの後片付けはこれで最後だ。これからは自分でやれ』ってさ。やっぱりあの人は立派だよ。俺もあの人のようになりたくて、掃除だけはしっかりやるようにしてるんだ」

 私は関心したというよりも感動した。

 やっぱりあの見た目変人ばかりのクラスにもまともな人がいるんだな。


 話しながらも、大掃除は続いていく。


主人公は『男の娘』に決定しました。

誰も止める人がいないので、カオス要素が追加されました。

ヤッタゼ!(>_<)/

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