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第12話

「今週は君たちのクラスかな?」

と風紀委員長の男子生徒は尋ねてきた。


僕と楠本くんは風紀委員。


この学校での風紀委員の活動として、放課後の見回りを行うことになっている。


僕はそうです、と応えた。


「風紀委員の仕事は、校内の風紀を取り締まること」

マインドは取り締まり刑事で、と付け加える。


「・・・取り締まり刑事、ですか。」


何とも言えない表情の楠本くん。


「僕たちは風紀を取り締まる役割を与えられているんだよ、つまり風紀の取締役ってことじゃん」

「取締役って会社の偉い人だろ」

意味が変わってるぞ、と楠本くんは応える。


まぁ、と肩をすくめた風紀委員長は続ける。

「風紀委員とは言っても、実際は教室の窓が開いてないかどうかを確認する程度かな」


え、風紀委員の仕事ってそんなものなの?


「あと、もし残ってる生徒がいれば早く帰るように言って、全クラス終わったら僕のところに報告してきてね。」


さっそく、風紀委員の仕事を始めるように言われた。




「風紀委員の仕事って、意外と地味だよねー」

「あぁ」

教室の窓が閉まってるか確認する程度の楽な仕事で助かった、と楠本くんは軽く応える。


仕事をしつつ、僕たちは雑談をしていた。


まだ外からは運動部の声が聞こえるが、今のところどこの教室にも生徒は残っていない。


「風紀委員ってさ、結構ラブコメで見かけるじゃん。あの人たちって何してるんだろうって思ってたら、ただ窓閉めてただけなの?」


ウィンドウオープンアンドクローズ?


「まぁ、学校にもよるだろうけど」

実際、お堅いヒロインが窓閉めてるだけだったら地味すぎるな。

そういって楠本くんは窓の鍵を閉める。


「風紀委員といえば、不良に対して果敢に立ち向かい最終的に手に負えなくなるみたいなシーン見たかったな」

「窓を閉めるだけの役割しかない奴が、不良に突っ込んでいく余地なんてないけど」


越権行為ですね。


「他にも、風紀委員がむしろお仕置きされるみたいな!」

グヘヘ、悪い子にはお仕置きが必要だなって。


それは同人作品だろ、と楠本くんは言い、

「っていうか、お仕置きされるのお前のほうだけど、それでいいのか?」

お前、風紀委員だし、と楠本くんは付け加える。


えっ、されるのはちょっと・・・



そうこうしているうちに、僕たちのクラスにやってきた。


僕たちはこれまでと同じように教室の扉を開ける。


ガラリ、という音を立てて目に入ってきた教室には、2人の女子生徒がいた。



なんだあれ。



僕の目の前には、めちゃくちゃ至近距離にいる女の子たち。


前後で座っており、後ろの女の子は窓側を向いて眠っているように見える。

しかし前に座っている女の子は起きているみたい。


後ろの席に座っている女子生徒が眠るために使っている机の余ったスペースに、手前の女子は顔を乗せている格好で、顔が対面している状態。


なんか見てるの恥ずかしいなと思っていると、その手前の女子生徒は僕たちの視線に気が付いたようだった。


彼女はビックリした様子で、手をあたふたさせながらこう言ってきた。


「・・・あの、誤解してるかもなので、ちゃんと言っておきますと・・・」


あっ、本当は別のことをしていたのかな?



「・・・キ、キスできるんじゃないかって顔を近づけてただけです!!」



僕たちはまさに、その誤解をしているんだけど。


彼女の声で、後ろの席の女の子は起きたようだ。


その女子生徒は軽く伸びをしてから、僕たちと目の前の彼女を見てから、何事もなかったように鞄に教科書を詰めて、教室から出ていこうとする。


「待って待って、夜野さん!!」


彼女は慌てて、その女子生徒の腕をつかんだ。


夜野さん、と呼ばれた女子生徒はいったん止まり、掴まれた女子生徒を見る。

そして僕たちの方を向くと、こう言った。


「あの私、深山と無関係なので帰ってもいいですか?」


えっ、無関係なの?

じゃあ何してたんだ、深山さん。


「違うって!夜野さんと一緒に帰ろうと思って待って、起きるまで待ってたんだよ!」

と深山さんは慌てて応える。


なるほど、普通に帰るのを待っていただけか。

夜野さんが起きないから、放課後まで残ってたということね。


落ち着いて深山、と言って夜野さんは穏やかな表情を見せる。

そして次第に彼女が静かになると、夜野さんは僕たちの方を見た。



「・・・すいません、やっぱり無関係だったので帰りますね」

「ここまで聞いてそんなこと言う?」


待って夜野さん、と言って深山は後を追いかけ、教室から出て行った。

僕たちは聞こえないだろうが「早く帰ってくださいね」としか言えなかった。





「・・・僕たちのクラスって、あんな人たちいたんだね」

「風紀委員っていう仕事も実は大変なのかもな」

来年は別の仕事にするわ、と楠本くんはちょっと疲れた様子で応えた。


僕たちは仕事の報告をするため、元来た廊下を戻る。


結局、あれは何だったんだ。


「・・・なんか、あの深山っていう生徒、お前に似てたな。」

と楠本くんが言う。


そうかな、と僕は曖昧な返事をすると、


「はっきり言えないけど、お前と同じ匂いがしたんだよ。」

「なに、楠本くんって匂いフェチだったっけ?」

「直接的な意味じゃねぇよ。なんだろう雰囲気っていうの?よくわからないけど、同じ属性って感じがしたんだよな。」


なんか面倒くさそうだった、という楠本くんの言葉は聞き流し、風紀委員長のいる教室までたどり着いた。



彼はスマホで音楽を聴いていた。


校内でのスマホの私的利用は校則違反ですよ、と楠本くんが言うと、

「ごめんごめん」

と言ってスマホをポケットの中にしまった。


楠本くんも学校で普通にゲーム実況見てるじゃん、と思ったが、僕も学校でネット小説を読んでいるので口に出さなかった。


一斉検挙はごめんだ。


「それで、何もなかった?」

何食わぬ顔で聞いてきた。



楠本くんは一瞬考えた様子を見せたが、

「はい」

どの教室にも生徒はいませんでした、と楠本くんは応えた。


深山さんと夜野さんの存在、揉み消されたな。


まぁそんなもんだよね、と彼は応え、

今週の残りもよろしく、と言って彼はそそくさと帰っていった。


なんか、いろいろあった気がするけど、まあいいか。


じゃあ、俺たちも帰るぞ、と楠本くん。


外は徐々に暗くなってきていた。


寺田くんもそろそろサッカーの練習が終わる時間だ。

3人で一緒に帰ろうと言って、僕は鞄を手に取った。


今日もラブコメっぽいイベントは起きなかったなぁ。


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