第10話
「叙述トリックって知ってる?」
昼休み。
俺と寺田の2人で話をしていた。
「あぁ、読者の先入観とかを利用して最後にビックリ、みたいなヤツだろ」
知ってるぞ、と俺は応える。
「なんでいきなり」
「いや、国語の授業ってめっちゃつまんないじゃん。叙述トリックとか入れた物語を扱ってくれたら、眠気も覚めるのになって思って」
真面目に寺田は応えた。
そういえば、寺田はつまらないって感じるとすぐに眠くなるって言ってたな。
どうりで、さっきの国語の時間ずっと寝てたな。
いや待てよ、その前の数学の時間も寝てたな。
その前の英語も寝てなかったか?
・・・コイツ、大丈夫か?
「何の話をしてるの?」
俺が寺田を心配し始めたころ、ふらり、と吉川がやってきた。
「お前、叙述トリックって知ってる?」
そう尋ねると、
「・・・あぁ、読者を不意打ちにして作者が高笑いをするアレね。」
舌打ちしそうな様子で吉川が応えた。
なんか不機嫌。
「もしかして吉川くんって叙述トリック反対派?」
寺田は吉川に聞く。
「反対派というか、反対過激派だね。」
叙述トリックのこと、めっちゃ嫌いじゃん。
「そもそも、お前ってそんなに本読んでるっけ?・・・あぁ、ラブコメ以外で」
吉川の読書は基本的にラブコメに偏っているので、予め制限しておいた。
「・・・叙述トリックは本だけじゃないんだよ、楠本くん」
そう応える彼の目の下には深い隈が。
「全部、主人公の妄想だったんだよ・・・!!幼馴染も先輩も後輩も妹も・・・」
吉川は血の涙を浮かべるかのように言った。
ラブコメのノベルゲームでは、ヒロインたちが実際は存在せず、主人公が教室の隅でニヤニヤしながら作られただけのただの創作でした、みたいなエンドがあったりする。
プレイヤーによって評価が分かれるが、普通の王道ラブコメを楽しみたい人にとって、ショックを受ける内容なのだろう。
・・・ていうか、結局ラブコメじゃねぇか。
何ならお前、自分がラブコメ主人公だと思ってる節があるわけだから、現在進行形で叙述トリックの餌食だぞ。
「でも実際、どんでん返し系の作品って結構人気あるよね。」
寺田は話を変えるように言った。
吉川の話、完全に無視したな。
「本の帯とかで、『誰も予想できないようなどんでん返しが!!』みたいな宣伝文句とかも見かけるな。」
俺は例を挙げる。
「じゃあ、もし僕たちが物語の登場人物であったとして、その作品が書籍化されるんだったら、こういう宣伝文句がいいんじゃない?」
と吉川は言って、シャーペンを持ち、紙に何かを書き始めた。
『全部、楠本くんの妄想です。』
「どんでん返しっていうか、もうネタバレだろ」
ていうか、俺を攻撃するなよ。
「そういえば数学にはあるな、叙述トリック」
そういって隣にいた瀬野は数学のプリント見せてきた。
一見すると普通の問題だが・・・
「これ、最後に条件ついてるだろ?この条件を見ないで問題を解いて、あとで確認したときに気づくんだよ」
自分が時間をかけて作った答案、全部無駄だったって、と付け加える。
「おい寺田、お望みの叙述トリックはあったみたいだぞ。」
俺はそう言って寺田の方を見ると、彼は思案の表情を浮かべている。
ちょっと待って、と言って寺田は腕を組む。
「叙述トリックというどんでん返し要素があるような科目に触れていたのにも関わらず、授業中に眠っていた・・・それを踏まえると導き出される解はただ1つ・・・」
そして寺田は目を見開く。
「勉強をすること自体がつまらないということだ!」
勉強をしたくないです、と寺田。
「僕も勉強したくないんだけど」
吉川も賛同した。
俺に言われても困るんだが。




