第0話 あらすじ
「こんなところに、作品のあらすじを書いてほしそうなスペースが!!」
「スペースの方があらすじを欲しがっているのか?」
本作主人公の僕が直々にあらすじを書いてあげよう。
僕の名前は吉川なおき、普通の高校生だ。
入学式当日の朝、遅刻しそうで慌てて走っていると突然曲がり角から・・・
「あらすじに嘘書くヤツ初めて見たわ。」
楠本くんは呆れた様子で呟く。
「ちょっと、私が出てきてないじゃん!」
2人の女の子がいつの間にか僕たちの目の前にいた。
「本作主人公の私がちゃんとあらすじ書くから」
私の名前は深山かなで、普通の高校生。
入学式当日の朝、遅刻しそうでパンをくわえながら走っていると突然曲がり角から・・・
「深山、この作品は少女漫画じゃないし、内容も全然違うって」
「でも最後にこういうの書けばいいんじゃないの?」
このあらすじはフィクションです。本作の人物、団体等とは関係がありません。
「じゃあこのあらすじは何なの?」
「読者があらすじ見てるわけないじゃん」
どうせ漫画だったらタイトルと表紙くらいしか見てないでしょ、と深山さんが応えると、夜野さんが溜め息を吐く。
「やっぱこういうのって、読者にどういうメリットがあるかっていうのを明確に示した方がいいんじゃないか?」
楠本くんが腕を組んで応える。
「じゃあこういうのはどうかな」
そういって僕は文章を書いてみた。
もし、あなたがこの作品を読んだら、この作品を読んだ時間だけ時間が過ぎていきます!
「お前、さっきから何がしたいの?」
「こういうのはどう?」
深山さんも文章をさらさらと書いた。
本作をお買い上げいただき、誠にありがとうございます!
あなたのおかげで、我が国の明るい未来が約束されました!
「なんか嘘くさいね」
夜野さんが呟いた。
「じゃあこれは?」
そういって別のあらすじを書き始めた。
あなたがこの作品を5人以上の人に布教しなければ、3日以内に不幸が・・・
「チェーンメールじゃん」
いい加減あらすじ書きなよ、と付け加える。
「あ、もうあらすじを書くスペースがなくなっちゃった。」
深山さんが顔を曇らせる。
「本当だ、どうしよう」
「本作のあらすじ何も書いてないけど大丈夫かな?」
「一旦この4人で多数決を取ってみよう」
賛成: 3人
反対: 2人
「ちょっと待って、あと1人いつの間に入ってきた?」
「最初からずっといたけど?」
「まあ賛成の方が多いし・・・」
楠本くんと夜野さんは渋々頷く。
ぽっと出の一票を同じ一票としてカウントしてもいいの?
ちょうど昼休みを終えるチャイムが鳴ったので、黒板に書いたあらすじを消した。




