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一度はいるとなかなか出れないこたつ

掲載日:2025/12/26

しいなここみさま「冬のホラー企画4」参加作品です。


使用キーワード:こたつ

『こたつってさ。いったん入るとなかなか出れなくなるよね』


 そういえば、去年の冬にアイツはそう言っていた。あれ、アイツって誰だっけ…あぁ、同じバイト先の名越なごしくんだ。いつも寒がりで冬は毛糸の帽子かぶって、手袋もして、完全防寒でバイトに来てた。


 私は内藤美沙子ないとうみさこ。ごく普通の女子高生。近所のハンバーガーショップでバイトしてる。ここ、家の近くで行きやすいからいいんだけど、登録してる人多いからなかなかシフトいれてくれないんだよね。もう季節は冬だ。外は木枯らしも吹いていて、今年は暖冬だってなんかテレビで言ってた気がするけど、やっぱ冬は寒い。もうどっちにしても寒くなるんなら、暖冬なんて言わないでほしい。だって私寒いの嫌いなんだもん。


「ミサ〜、そういえばさ〜、年末どうすんの?ウチくる?」


 話しかけてきてるのは、同じバイト先の同い年のサトミだ。高校も同じ。


「ん〜、どうしよっかな〜、なんかウチの親、外泊とか結構厳しくて、しかも年末は紅白みんなで見て、そして年越し蕎麦を食べるんだ!ってうるさいんだよね」


「げ。マジで言ってるん、ミサ。子供じゃないっつうの。まぁいいよいいよ、せっかくだから親子仲良くしときな」


 ドン引きしているサトミ。んー、そんなにウチっておかしいのかな。でも、親子ってそんなもんじゃないの。あ、サトミんちはお母さんだけなんだけどね、結構仕事も遅かったり、帰ってこないことも多いみたい。だから、家に友達とか勝手に呼んだり、泊まったりしても何も言わないんだってさ。


「私もサトミんち、行ってみたいのはあるんだけどね。あ、親に聞いてみよっかな。たしか友達と親の番号とアドレスちゃんと教えたらいいとか、言ってた気がする」


「もう、いいっていいってそんなの。知らん親に番号とかメール教えるのキモいんだけど」


 つれないなサトミ。私、中学の時から友達って思ってたのにな。


「あ、全然話変わるんだけどね。こたつに入ったら、出れないんだよね、って言ってたのって、名越くんだったっけ?サトミ覚えてる?」


「誰それ?」


 え。


「え、同じバイトの名越くん…めちゃくちゃ寒がりだった子」


「ミサ、頭大丈夫?そんな子バイト先いないよ?」


 え。そうだっけ…。


「あ、そっか…まぁいいや。あ、サトミも家にこたつある?こたつにミカンさいきょーだよね〜」


「あはは、確かに。ウチのこたつ小さいから4人はいるとぎゅうぎゅうなんだよねー」


「そうなんだ〜。じゃあいっぱい泊まりにきてもはいれないじゃーん。じゃあまた明日ね」


 サトミと別れた。




◇ ◇ ◇



 次の日。


お昼くらいにバイト先から連絡がはいった。


「ミサちゃん?ちょっと急なんだけど、今日の18時からシフト入ってくんないかな〜?いきなり穴あいちゃって…」


「んー、まぁ大丈夫ですけど、何にもないんで。今日の夕方ってサトミが入ってませんでした?体調悪くなったとかですか?」


「サトミ…?誰それ?」


 え。


「いや、あの私の友達で同じ高校の…」


「んー、わかんないけど、ミサちゃんとりあえず入ってくれるんだよね?助かるわ〜。なんか今日のシフト入れてたはずなのに、気づいたら誰もいないの。びっくりしてさ」


 誰も入ってなかった。なんでだろう、確かシフト表にはサトミの名前が入っていたはず。私は携帯の中に保存していた、今月のシフト表を見てみる。


 サトミの名前が消えていた。


『こたつってさ。いったん入るとなかなか出れなくなるよね』


 誰だったっけ…

こたつに入るとなかなか出れないらしいです。


みなさんもお気をつけて。

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― 新着の感想 ―
人がただいなくなるだけじゃなく、存在そのものが消える話って、好きなんですよね。 こたつで寝るとそうなるんでしょうか(´ω`) むかしは、こたつの中が囲炉裏になっていたそうですが、囲炉裏にいる妖怪とい…
こたつ怖い……(´・ω・`) 普通に出られないだけじゃなく、存在とか記憶自体抹消されちゃうなんて! 本論ではないですが、ミサとサトミのやりとりがリアルに家庭環境の違いを描写していてすごいな……と思いま…
 ええっと……。  炬燵に入ると出て来られなくなる……?  それを埋めるようにシフトに入り出られなくなる主人公?  炬燵に入ると仕事に出て来られない同僚と、一度入るとなかなか出て(抜けて)こられない仕…
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