一度はいるとなかなか出れないこたつ
しいなここみさま「冬のホラー企画4」参加作品です。
使用キーワード:こたつ
『こたつってさ。いったん入るとなかなか出れなくなるよね』
そういえば、去年の冬にアイツはそう言っていた。あれ、アイツって誰だっけ…あぁ、同じバイト先の名越くんだ。いつも寒がりで冬は毛糸の帽子かぶって、手袋もして、完全防寒でバイトに来てた。
私は内藤美沙子。ごく普通の女子高生。近所のハンバーガーショップでバイトしてる。ここ、家の近くで行きやすいからいいんだけど、登録してる人多いからなかなかシフトいれてくれないんだよね。もう季節は冬だ。外は木枯らしも吹いていて、今年は暖冬だってなんかテレビで言ってた気がするけど、やっぱ冬は寒い。もうどっちにしても寒くなるんなら、暖冬なんて言わないでほしい。だって私寒いの嫌いなんだもん。
「ミサ〜、そういえばさ〜、年末どうすんの?ウチくる?」
話しかけてきてるのは、同じバイト先の同い年のサトミだ。高校も同じ。
「ん〜、どうしよっかな〜、なんかウチの親、外泊とか結構厳しくて、しかも年末は紅白みんなで見て、そして年越し蕎麦を食べるんだ!ってうるさいんだよね」
「げ。マジで言ってるん、ミサ。子供じゃないっつうの。まぁいいよいいよ、せっかくだから親子仲良くしときな」
ドン引きしているサトミ。んー、そんなにウチっておかしいのかな。でも、親子ってそんなもんじゃないの。あ、サトミんちはお母さんだけなんだけどね、結構仕事も遅かったり、帰ってこないことも多いみたい。だから、家に友達とか勝手に呼んだり、泊まったりしても何も言わないんだってさ。
「私もサトミんち、行ってみたいのはあるんだけどね。あ、親に聞いてみよっかな。たしか友達と親の番号とアドレスちゃんと教えたらいいとか、言ってた気がする」
「もう、いいっていいってそんなの。知らん親に番号とかメール教えるのキモいんだけど」
つれないなサトミ。私、中学の時から友達って思ってたのにな。
「あ、全然話変わるんだけどね。こたつに入ったら、出れないんだよね、って言ってたのって、名越くんだったっけ?サトミ覚えてる?」
「誰それ?」
え。
「え、同じバイトの名越くん…めちゃくちゃ寒がりだった子」
「ミサ、頭大丈夫?そんな子バイト先いないよ?」
え。そうだっけ…。
「あ、そっか…まぁいいや。あ、サトミも家にこたつある?こたつにミカンさいきょーだよね〜」
「あはは、確かに。ウチのこたつ小さいから4人はいるとぎゅうぎゅうなんだよねー」
「そうなんだ〜。じゃあいっぱい泊まりにきてもはいれないじゃーん。じゃあまた明日ね」
サトミと別れた。
◇ ◇ ◇
次の日。
お昼くらいにバイト先から連絡がはいった。
「ミサちゃん?ちょっと急なんだけど、今日の18時からシフト入ってくんないかな〜?いきなり穴あいちゃって…」
「んー、まぁ大丈夫ですけど、何にもないんで。今日の夕方ってサトミが入ってませんでした?体調悪くなったとかですか?」
「サトミ…?誰それ?」
え。
「いや、あの私の友達で同じ高校の…」
「んー、わかんないけど、ミサちゃんとりあえず入ってくれるんだよね?助かるわ〜。なんか今日のシフト入れてたはずなのに、気づいたら誰もいないの。びっくりしてさ」
誰も入ってなかった。なんでだろう、確かシフト表にはサトミの名前が入っていたはず。私は携帯の中に保存していた、今月のシフト表を見てみる。
サトミの名前が消えていた。
『こたつってさ。いったん入るとなかなか出れなくなるよね』
誰だったっけ…
こたつに入るとなかなか出れないらしいです。
みなさんもお気をつけて。




