なんて情けないことでしょうか①
彼女のSOSに気付いたのは、
僕一人だった。
僕が今になって思うのは、
誰も子供の戯言になんて付き合わなかったし、
もし付き合う大人がいたとしても…
いつだって後から来て、「残念だったね」と。
偽善者の癖して決めつけて去っていくのがオチなのだ。
そういう大人にはなりたくないと思っていた。
でもきっとなるのだろうなとも思ってはいたけど。
その子は周りと馴染めない、変わった子だった。
合わせようともしないし、気にしないもんだから、
いつも嫌がらせだったり、陰口を叩かれていた。
みんなそんなことは分かっていたけど、
当たり前となれば誰も助けようとしなくなる。
そりゃあ、その子が例えば…
転校生で、可愛くって、それでイジメられてたんなら、
きっとみんな助けたんだろう。
僕は臆病なのでどっちゃにせ助けなかったけれど。
「勇気がない」だとか、「目を背けている」とか、
そういう話じゃなかった。
事実はもっと状態が酷いのに、誰もそういうことに
気付けないという話だった。
僕は彼女、「ゆうちゃん」に憧れていた。
なんか、一匹狼って感じで、格好いいなぁって。
僕もゆうちゃんも、小学生だったから、
今思えば、何だそれ。ってなるんだけどね。
目すら合ったことがない僕だったけど、
ずっと、ずっとゆうちゃんを見ていたのを覚えている。
気持ち悪いと思われているだろうななんて
一切考えずに、ひたすら夢中だった。
だから僕がきっと一番、イジメを見てきている。
いや、ゆうちゃんが一番目だから二番目だけど。
ゆうちゃんは、特別オシャレな訳でもなかったし、
おしゃべりが好きでも、歌が上手い訳でもなかった。
なんなら声はかなり小さめだった。
友達だって、いない訳じゃなかったと思う。
ゆうちゃんが友達だと…
自分を助けてくれない人間を友人であると思っている
かは分からないけど。