表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/28

【番外編】中間試験 ~職員室の午後~

王立学園・西棟の一角、薄暗い職員室。窓から差し込む午後の光が、積み上がった答案用紙に斜めの影を落としていた。


「……よし、次はクーニャか」


赤ペンを手に、タカシはにやけそうになるのをぐっと堪えながら、答案に目を落とす。


そこには、ひらがなとカタカナが入り混じった一文があった。

「"わたしは ドーナツが いちばん たべたいです!"」


「……うん、ぶれてないな。最高だ」


後ろでガタンと椅子が鳴る。ドラン・ザ・スケイルが太い腕を組んでこちらを見ていた。


「試験というのは、もっと厳粛であるべきだ。……なのに貴様は、その顔は何だ」


「いや、嬉しいんですよ。ただ、答えが正しいってだけじゃなくて、その子らしさがちゃんと出ててさ」


「ふふ、いいじゃない。テストで“自分”が出せるなんて、素敵なことよ」

ミネル・シェリアが香茶のカップを片手に、隣から微笑む。


タカシはうなずいた。

「筆記は“〜が ほしい”“〜たい”の作文。あと、簡単な口頭インタビューもやりました」


答案をめくりながら、自然とあの時のやり取りがよみがえる。



「リリィさん、“きのう なにを しましたか?”」

「えっと……“やくそうに みずを あげました。あと、べんきょうしましたっ!”」

(ほんとに毎日まじめでえらい)


「ヴァイスさん、“ひまなとき、なにを しますか?”」

「……“にほんごの しょもつを よみます。ことばを くらべるのが すきです”」

(研究者かよ、すごいな)


「ユウトくん、“いま なにを べんきょうしていますか?”」

「“『カンジ』の れきしと ぶんぽうの ちがいを しらべています”」

(止まらなくなりそうだったから途中で切ったけど、すごい熱量)


「クーニャさん、“にほんごで いちばん すきな ことばは なんですか?”」

「“ドーナツ! ……あ、ことば? えーと……『たのしい』!”」

(それ、理由も聞きたかったけど、まあクーニャらしい)


「セイアさん、“にほんごの どんな ところが すきですか?”」

「“……『ことばの おと』です。ふしぎと こころが しずかに なります”」

(さすが水霊族、詩的すぎる)


「グンゾさん、“にほんごの べんきょうで たいへんだったことは?”」

「“ジョスウシだッ! いち、いっこ、ひとつ……まぎらわしいッ!”」

(本当に苦戦してたな……)



「おい、タカシ。……で、結果はどうだった?」


ドランの問いに、タカシはプリントされた一覧を取り出した。


「全員、合格です」


「甘いな」

「優しいの間違いじゃないかしら」


タカシは笑って肩をすくめた。

「でも、これでちょうど半分。『ミンナノニホンゴ』も13課まで終わりましたし。後半戦、気を引き締めていきますよ」


ミネルが紅茶を一口すする。

「じゃあ次は……期末試験も、楽しみにしてるわね?」



【中間試験 結果一覧】


● リリィ=フロスティア

 筆記試験:46点/50点

 口頭試験:46点/50点

 総合点:92点

 評価:合格

 備考:丁寧な日本語。書き方も花丸。


● ヴァイス=グランフォード

 筆記試験:49点/50点

 口頭試験:49点/50点

 総合点:98点

 評価:合格

 備考:語彙が高度。表現力も高い。


● ユウト=カンジ

 筆記試験:47点/50点

 口頭試験:46点/50点

 総合点:93点

 評価:合格

 備考:言葉のセンスがややマニアック。


● クーニャ=ベルン

 筆記試験:42点/50点

 口頭試験:45点/50点

 総合点:87点

 評価:合格

 備考:内容は偏ってるが、情熱は本物。


● セイア=ミレシェル

 筆記試験:50点/50点

 口頭試験:50点/50点

 総合点:100点

 評価:合格

 備考:音の感覚に優れ、表現が詩的。


● グンゾ=アイアンベルク

 筆記試験:38点/50点

 口頭試験:40点/50点

 総合点:78点

 評価:合格

 備考:語彙と表現力はまだ途上。声量は満点。


――次回、後半戦スタート!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ