第71話 ドラゴン娘、悪い領主に怒る。
リベツの町の領主でアズキ村の所有者でもある、今回のリュウカ誘拐を企てた張本人、貴族ゲイル・レート男爵は不安を抱いていた。
「マサキ達の帰りが遅い、半人の小娘を捕まえるのに苦戦しているのか、ハッハッ、まさかな、あのマサキ達に限ってそんなことは…」
すると扉の前で人の声聞こえてきた。
『ここが領主の部屋か?』
『そうだよ。』
「マサキ達が帰ってきたのか?しかし知らない声が混じっている、誰だ?」
『まさか本気でやるつもりですか…?』
『ああ!そのまさかだ!』
強い衝撃音と共に扉が倒れた!
「何だ!?」
「おまえがアズキ村の領主のレートって男爵だな?」
「誰だ、おまえは!?」
「あんたが忍に捕まえて来いって頼んだ、半人の娘だ!」
「そうか、そうか、きさまが例の半人の小娘だったのか?随分と無礼な登場の仕方をしてくれるな?フタ!ナベ!これはどういうことだ!捕まえた者をなぜ自由に行動させている!手錠でもつけて大人しくさせないか!」
«そっそれは…»
「何を躊躇っている!」
「二人にいくら命令したってもうあんたには従わない、俺がこいつらを降参させたからな?」
「降参させただと?ふざけたことを?」
「レート様、彼女の言ったことは本当です!」
「ボクらはこの娘に負けたんだ、色んな意味でね。」
「ばっ馬鹿な!マサキはどうしたのだ!姿が見えないが!」
「マサキ様は命を絶ちました…」
「何…?今なんと言った…?」
「お頭は戦いに負けた責任を取って、自らの命を絶ったんだよ…」
「ハッハッ…嘘だ…嘘だよな…?」
«・・・・・・。»
「事実なのか…」
レート男爵はあまりのショックに力が抜けたようだった。
「最後にあいつ、あんたに役目を果たせず申し訳ないって言ってたんだぞ?」
「マサキが…」
「悪い奴だったが、主思いな所だけは少し理解できる、最低なあんたをぶん殴りたい気持ちがあるが、罪を償って村の人達に謝るなら、あいつの手前、抑えてやる、どうする?」
「全てきさまが悪いのだ…きさまが我の計画を邪魔したから…」
«レート様…?»
「どうやら反省するつもりは無さそうだな?」
「うるさい、半人の小娘!!きさまもしねぇ!!」
「危な!」
レート男爵は机から出したピストルでリュウカを撃ったが、リュウカはそれを躱した!
「この至近距離で当たらないだと…?」
「てめえ?」
「こんなことがあるか!あるか!!」
さらにピストルで撃ちまくった!
「やめてください!レート様!」
「ボクらにも当たります!」
「クズ野郎が!!」
「ぶぐぇっ!!」
完全に怒ったリュウカはレート男爵を頬を思いっきりビンタして椅子から叩き落とした!
「わぁ、痛そう…」
「貴族を本気ではたくとは…」
「うぎぎ…」
「どうだ!反省しないならいっそのことおまえをぶっ殺してもいいんだぞ!」
「殺せばいい…」
「何…?」
「十年前に好きだった人を奪われ、そして今度はマサキが居なくなってしまった…もうこの世に未練など一つもない…」
「十年前に好きだった人を…?それって誰のことだよ…?」
「フッ、我はこれで命を終えるんだ…教えてやろう…親友だったネル・オハキだ…」
「オハキって確か、村長の苗字だよな…?まさか!」
「ああ、村長の息子だ。」
「そっちだったのか…?俺はてっきりララのお母さんを奪い合ってたのかと…?」
「あいつの妻、ラノアとも幼馴染ではある、だが、恋愛感情を抱いたことなどなかった、俺が惚れたのはネルだ。」
「そっそうだったんだな…?」
(そういえば、忍の頭もあんな美人な容姿だったけど、男だって言ってたもんな…?)
「しかし、結婚してしまって、ララという子供まで出来たネルにこの気持ちを伝えられるわけがない、その悔しさとやり場のない憎しみが我を悪人に変えてしまったのかもしれない…きさまには言い訳に聞こえるだろうがな…」
「あんた…」
「話すことは以上だ、さぁ、殺せ…」
«レート様…»
「さぁ、早くしろ…」
「やーめた。」
«えっ!»
「やめたとは何をだ!」
「あんたを殺すことだよ?」
「なっなぜだ!」
「俺はそもそも人殺しなんてしたくないからな。」
「何…?」
「じゃあ、何で殺すなんて言ったんですか…?」
「そうだよね…?」
「こいつの真意が聞きたかったのさ、それだけ。」
「君は本当にぶっ飛んでるよね…?」
「私もそう思います…?」
「あはは。」
「きさまが殺さないなら、自分でやるだけだ!」
自分のこめかみにピストルを向けた!
«レート様!»
「馬鹿野郎!!」
しかし、引き金を引いても撃てなかった、中の弾は空だったのだ。
「ふぅ、一瞬、ヒヤッとしたぞ?」
「まさかちょうどよく弾が切れるとはな…」
「きっとあんたに生きて罪を償ってほしいって言ってんだよ、初恋の人と忍の頭がさ?」
「フッ、ハハハッ、ハハハッ!」
「おっおい…?」
「だと思いたいものだな…二人が我にそう言ってくれていると…」
レート男爵は涙目になって笑っていた。
「おまえ…」
「きさまの言う通り、生きて罪を償おう…村の者達にも謝らなくてはな…」
「そうか。」
«ふぅ…»
「村の者達には許してもらえるとは思えないがな…」
「それはこれからのあんた次第だよ、多分な。」
「ああ、そうだな…」
その様子を窓の外の木に登って、あの人物が見ていた。
「あの娘、やっぱり面白い子にゃ。自分を捕まえようとした人間を許すなんて、あの方なら生温いって怒りそうだけど、アタシは好きだにゃ。リュウカちゃん。」




