第163話 ドラゴン娘、優勝を祝われる。
武術大会の後、リュウカは大勢の記者から取材を受けたり、観客達からサインや握手を求められたりと大忙しで、疲れたのか御屋敷に帰る馬車の中でアリアとメグに肩をうずめられながら一緒に眠ていた。
«スゥゥッ…»
『うふふ、本当のメグちゃんの姉と妹みたい。』
そしてその夕方、国王様の大会終了の打ち上げに参加しているクラウン男爵に代わり妻のハニーがリュウカと交流があった者達を参加させた盛大な祝勝パーティーを行ってくれた。
『みんな、グラスは持ったかしら。』
«持ちました!»
『乾杯の音頭は今日の主役、リュウカちゃんにやってもらいましょうか。』
「えっ!俺ですか!そこはハニーさんがやるべきじゃ?」
『いいから、いいから。』
「いいぞ、やれやれ!」
さらにロードがけしかけた。
『わっかりました…?ゴホンッ、それじゃあ、乾杯!』
«乾杯〜!»
パーティーに参加したリュウカの関係者はこうだ。先ほどのオーツクの港町のギルマスのロードやその親戚のローラにくノ一の顔を持つレノとその弟のノーラと付き添いの忍び三人組、そして武術大会で関わったAランク冒険者双子姉妹のベニーとレニー、眼帯男のレルム・アダムスと侍少女のキョウ、そして準決勝で戦ったSランク冒険者のロッド・スペードとサリーが戦った鬼の半人少女アンジュまでいた。
「それにしても拙者達まで祝勝パーティーに参加してよかったのか?」
「だっだよね、アンジュもそう思う?」
「私達もです。」
『いいのよ。半人同盟から国王様やそのご家族、観客を守ってくれたじゃない、そのお礼も兼ねてるから。』
「だっだったら…?」
「よいか…?」
「ですね…?」
「つまり無礼講ってわけだ!酒飲みまくるぞ!」
「うふふ、私もよ。」
「あはは、二人ともほどほどにしてくださいね…?」
(この二人が飲みすぎるとやばいことになるからな…?)
「リュウカ様、お祝いにあーんしてあげます。」
「うっうん…?ありがとう…?」
「いいえ、わたくしがして差し上げますわ。」
「ボクがしてあげるよ。」
「私よ!」
「わたくしです!」
「ボクだ!」
ベニーとメグさらには男の娘のノーラまでが睨み合い火花を散らした。
「俺は交互にでもいいんだぞ…?」
「ノーラの奴、すっかり夢中だな。」
「リュウカ君だもんね、仕方ないよ。」
「我々は見守りましょう。」
「うちのベニーがごめんね。」
「いいんですよ、リュウカお姉さんも困ってるようで嬉しいはずですから。」
「もしかして君、リュウカちゃんと将来を約束したって子?」
「なっ何でそれを!?」
「図星なんだ?」
「はっはい…」
アリアは顔を真っ赤にした。
「ロッド、おまえまで参加するとは驚きだったぞ?優勝出来なくて悔しくないのか?」
「んなものない、鍛え直して来年の武術大会で優勝するだけだ。」
「ハッハハ、そうかい。まぁ、俺もそのつもりだがな、次は負けないぜ。」
「ふん、そして来年もリュウカが参加したら今度こそ奴を倒して嫁にする。」
「まだ嫁にすること諦めてなかったんだな…?」
「正式に結婚するまでは諦めん。」
「リュウカはマジで男女から大人気だな、こりゃ武術大会にも優勝したし、これから忙しくなるぞ。」
遅れてクラウン男爵も参加して、パーティーの終わりにみんなで記念写真を撮った、もちろん主役のリュウカは優勝トロフィーを持って中心に写った。
「撮った写真、貰えますか!」
『ええ、現像して今度渡すわ。』
「ありがとうございます!」
「わたくしもリュウカお姉様コレクションに入れますわ。」
「そんなの作ってるんだ?」
「ここにサリー殿がいないのが少し寂しい気もするがな?」
「ですね…」
(サリーちゃん…)
警察署の取調室にいるサリーもちょうどリュウカのことを考えていた。
(リュウカちゃん、待っててにゃ。)
そして時を同じくして、半人同盟が撤退の際に集まっていた山奥にヤギの長い耳と角をした半人の少女がぽつんと一人いて、泣きべそをかいていた。
「メェ~!私だけ置いてぼりにされた〜!本拠地まで道知らないよ〜!」