第159話 メグの母、ハニー・クラウン現る。
リュウカ達が闘技場に向かっていた頃、その闘技場ではまだ半人同盟と人間側の戦いが続いていて、戦いは兵の数が多い半人同盟が有利かと思われたが、各町の冒険者ギルドのギルドマスターや大会出場者という強者達が応戦していたため、戦況は五分と五分となっていた。
【半人同盟の兵の皆さん!人間達を倒して逃げた国王を殺しに行ってください!】
「行きたいのは山々なのですが!」
「人間達が強すぎて先に進めません!」
「ハハハッ、当たり前だ、人間を舐めるなってんだ!」
「拙者達を見くびるな!」
«そうだ!»
❴なっなぁ…?グロル…?この状況まずくないか…?❵
【えっええ、アスカ様の計画通りに行っていれば、すでに国王は殺していて、この闘技場を制圧している流れになっていたはずですからね…?】
背中をピッタリつけて、半人同盟の幹部である犬耳の少年ガウオと悪魔の魔術師グロルが冷や汗をかきながら話した。
【やはり我々が殺しに行くしかありませんね…?】
❴でもそう簡単には行かせてくれないだろ…?❵
「その通りだ。」
【何!】
「させないぞ!」
❴やっぱりね…?❵
Sランク冒険者のロッド・スペードが凍らせる大剣でグロルの右足を凍らせて、ガウオは忍びの男の娘ノーラが鎖鎌で腕を縛り、国王様の元に行かさないようにした。
❴狐姉妹ー!頼むー!俺らはまだ戦ってる相手を倒せそうにないー!お前達が殺しに行ってくれー!❵
❴そんなこと私達に言われてもー!❵
❴私達だってまだ倒せないでいますー!❵
「チャンスよ、シャドー・バード!連続つつき!」
「エンジェル・バードもだよ!」
それぞれが巨大な鳥を操り、クチバシで体中をつついた!
❴痛だだっ!❵
❴つつくな!❵
「ベニー、効いてるみたいだよ!」
「モフモフな体にも効果があるみたいね!もう一度やるわよ!」
「うん!」
❴人間風情が調子に乗るんじゃねぇぞ!❵
❴ありゃりゃ、ロン姉がまた切れちゃった…❵
❴やられた分、返してやるからな!狐尾の炎!❵
「うわっ!」
「尻尾から炎が出せるとか反則じゃんか!」
ロンの尻尾から出る炎を空中を飛んで回避していたが、全てを躱しきれずレニーの乗る光の鳥の片方の翼に当たりクルクルと地上に落下していった!
「きゃああっ!」
❴そのまま落ちて、くたばれー!❵
「レニー!」
間一髪、姉のベニーが手を掴み、地上に落ちる前にレニーを救出、後ろに乗っけた!
❴おぉ、見事なキャッチだね?❵
❴リンちゃん、あなたはどっちの味方なの!❵
❴あっつい、ごめん。❵
「たっ助かった…ありがとう、ベニー。」
「お礼はいいから、あんたは防御の術を唱えて、いい?」
「そっか!私が守りに徹すれば攻撃に集中出来るものね!」
「そういうことよ!」
【役立たず共め、仕方ない、我が直接、国王を始末しにいくしかないか。】
半人同盟のリーダー悪魔の半人アスカはそう呟くと振り返った、目の前には傷だらけになって起き上がれないでいるオーツクの港町のギルマス、ロードの姿があった。
「ガハァッ…ゴハァッ…まさかこんなに力の差があったなんて…」
【ふん、我は半人、それも上位の半人だ、人間のきさまより強いに決まっているだろう?】
「チクショウ…」
【演技だったとはいえ昔の部下だからな、せめてもの情けだ、一瞬で首を跳ね飛ばして苦しみなく殺してやろう。】
アスカは大鎌を出した!
「いらねぇ、情けだな…」
(すまない、リュウカ、あたいじゃマスカのおっさんを止められそうにないぜ…)
「やばい!助けに行くぞ!」
「無理だ!ここからでは!」
「ベニー!」
「駄目、間に合わない!」
《だっ誰も助けに行けないようです!》
「見てられないわ!」
「逃げてくれー!」
「ロードちゃん!!」
観客席で戦う人間側の強者達、会場の建物内に避難してモニターから見ている観客達、さらにはラジオから状況を聞いていた国民達が絶体絶命のロードのピンチに叫んでいた!
【さらばだ。】
「くっ!」
『ほい。』
«えっ!?»
突然現れた黒をベースとした騎士服を着た超絶美女がアスカの振り上げた大鎌を小指だけで止めた。
«ガヤガヤッ。»
「何が起きたんだ…?」
「あれって騎士団の方だよな!」
「ええ!そうよ!騎士団のハニー様だわ!」
「国一の精霊使いと呼ばれたあのハニー様か!」
「いつ見ても美しいわぁ…」
「お父様!お母様ですわ!」
「あいつ遅れてきたと思ったらこんなベストなタイミングで来るとは。」
そう、現れた超絶美女はメグの母でクラウン男爵の妻にして騎士団の一員、ハニー・クラウンである。