第12話 ドラゴン娘、事情を知る。
「ここを使って、空き部屋だから。」
アンナが扉を開けると、ベッドに机と棚しかないシンプルな部屋だった。
「誰も使ってる様子がないな?」
「従業員用の貸し部屋よ。」
「従業員を雇ってたんだ?」
「2年前まで住み込みで一人働いてたんだ。田舎から上京してきた冒険者の女の子がね。」
「冒険者の女の子か、会ってみたかったな。」
「あの子は真面目でいい子だったわね。」
「君も他人を褒めたりするんだ?」
「うっうるさいわね、私を血も涙もない悪魔かなんかだと思ってるわけ?」
「そこまで言ってないだろう、ただ意外だなって。」
「余計な御世話よ。」
「お姉ちゃんと同い年だったから仲良かったもんね。お店の手伝いが終わった後、よく二人で遊びに行ったりしてたし。」
「こっこらっ、アリア!それ以上は話さなくていいから!」
「お姉ちゃんったら。照れちゃって。」
「別に照れてなんかないわよ。」
「可愛い所あるじゃん。」
「角へし折って、素材にするわよ?」
「ツンデレだな。でもその子は何でここを辞めちゃったんだ?」
「もっと強い冒険者になるための修行の旅に出たんだよ。」
「なるほど、修行の旅な。その子が居なくなった後は従業員を雇わなかったのか?」
「あんたには関係ないわ、こっちにも色々と事情があるのよ…」
「1年前の店の事件があってからはね、防犯設備がちゃんとしていない店だって悪評がつけられて、それからギルドに求人を出しても働きたいって人が来なくなったの。」
「アリア!」
「この町にいたら聞くことになるはずだよ。」
「それはそうだけど…」
「ひどい悪評だな、誰なんだ、そんな悪評つけやがったのは?」
「アルドの薬屋だよ…」
「アルドの薬屋?」
「知らないの?」
「あっうん、初めて聞いた…?」
「この町に本店があって、世界各地に店を展開してる有名な薬屋なんだ。」
「そんな有名な薬屋が何でアリア達の店に悪評をつけたんだ?」
「ライバル店だからだよ、あっちも薬のほかにポーションも売ってて、私達の店は専門店だからポーションではアルドの薬屋より品質は上だって評判だったんだ。」
「なるほど、それで潰すために悪評を…卑怯な奴らだな?」
「うん、だけどそれだけじゃないんだ…」
「それだけじゃない?」
「実は…」
「もういいでしょう、これ以上は話すのは止めて。」
「わかった…ごめんね、リュウカお姉ちゃん?」
「いいよ、いいよ。」
(余程、話したくない理由があるんだな…)
「それよりアリア、もう寝なさい。あなたいつもなら寝てる時間でしょう?」
「うん…お姉ちゃん、リュウカお姉ちゃん、おやすみなさい…」
「おやすみ、また明日な。」
アリアは自分の部屋に入った。
「私はまだ店でやらなきゃならない作業があるから、それじゃ。」
「なっ何か手伝える事ないか?」
「えっ…?どうしてよ…?」
「なんかさっきの話聞いちゃったら、この店の役に立ちたくなってさ?」
「素性もちゃんと話さない人にうちの店の手伝いさせられるわけないでしょう?配合とか盗まれたら嫌だもの。」
「俺がスパイだっていうのか…?」
「疑われたくないんだったら、あなたが何の半人なのか教えなさい?」
「そっそれは…」
「偽善者ぶって、その程度の覚悟なら手伝うとか言わないでよ。」
「あっ待って…」
アンナは怒った顔してその場を去って行った。
「偽善者か…そうかもしれないな…」
俺は部屋に入ったら、ベッドに倒れ込んだ。
「やっぱり寝てる間に調べるしかない…」




