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95.再会

俺達がその世界に着くと、辺りは真夜中だった。



以前転移した時も、元の世界は朝でこちらは真夜中だった。

時間の流れは同じでも、昼と夜は常に逆らしい。



そして、異世界や時間を転移する際にはお決まりの、森の中だった。



「今回も森の中なんだ………。ねえ、異世界への転移って森の中にしかできないの……?」


アルクが周囲を見回しながら呟く。

ウィルとソフィアも、恐々周囲を見渡していた。



「ああ、そうだね。どうも転移魔法が自動検出する位置が森の中みたいでさ。いいじゃないか、僕らが一緒なら危険はないんだし」


ラファエルは平然と答える。




俺達が初めてここに転移した時、最初に出会ったのはレナだった。

しかし今はこの世界に、魔王であるレオもレナも存在しない。



そこは前回と同じ、ミッドフォレストの中だった。


つまり西に向かって歩けば、猫族の町ガエルダがある。



前回は歩いて森を抜けなければならなかったが、今回は転移魔法があるので話は早い。

ロベルトが再度転移魔法陣を展開すると、俺達は全員で乗り込んだ。



そして俺達は森を抜けた地点、町のすぐ外側へと転移する。



「ねえウィル、獣人達を見ても、興奮して変な事しないでね………」

「お前な、いつもそうやって人を変態呼ばわりするんじゃねえよ!」

「だって変態じゃないか!」

「なんでだよ!!」



町へと近づきながら、アルクとウィルはあれこれ言い合いしている。

ソフィアはアルクの左手にじっとしがみ付いていた。




やがて、俺達の目の前には懐かしい光景が広がる。

とはいってもまだ半年少ししか経っていないので、あくまで感覚的に懐かしいのだ。



その町では薄い肌色のレンガでできた建物に、赤青緑などの色とりどりの屋根が乗っかっている。


しかしまだ真夜中過ぎなので、町の中を縦横無尽に動き回る獣人達の姿は見当たらなかった。



「時差ぼけで眠れないかも知れないけど、とりあえず今は真夜中だし、宿で休みなよ」


ラファエルはそう言って、俺達を宿屋へと連れて行った。




宿屋の店主はラファエルの姿を見ると、突然姿勢を正して挨拶した。



「ラファエル様!このような時間にお出でになるとは…………」


そして店主はアルクと俺に目を向け、口をあんぐりと開ける。


「あ………あなた方は、勇者様………!!!」



どうやら俺達のことを覚えているようだ。


控え目に笑うアルクの隣で、ウィルは店主の猫耳をじっと凝視している。



ラファエルが人数分の部屋を取ると、金すらかからなかった。


「僕が来るといつもこうなんだよ。皆かしこまっちゃって、お金を取ろうとしない」

「お前、特別扱いされすぎなんじゃないのか……」

「仕方ないじゃないか、皆が勝手にそうするんだから」


俺が呆れて言っても、ラファエルは平然としたものだった。




それから宿で仮眠を取った俺達は昼過ぎに目を覚ます。


全員が外へ出ると、宿屋の周囲には獣人達が大勢集まっていた。



「ここに勇者様達がいると聞いたぞ!どこだ!?」

「あ、あそこだ、でてきた!!しょこら様!アルク様!!」

「しょこら様!!もふもふさせてください!!!」



猫耳以外にも、犬や兎、狸の耳が俺達を取り囲んでいる。

ウィルはその光景に思わず卒倒しそうになっていた。


「す、すげえ…………獣人達がこんなに……………」



ソフィアは目の前の光景に圧倒され、身をすくめながらアルクの左腕をぎゅっと握りしめている。




するとそこへ、ひときわ大きな声で俺達に呼びかける者がいた。


「しょこら!アルク!!」



そう叫びながらこちらに駆け寄ってきたのは、エレーナだった。


相変わらず長い紫色の髪をなびかせ、満面の笑みで近づいて来る。

そしてその頭には、なぜか猫耳のカチューシャを付けていた。



「よう。久しぶりだな」

「エレーナさん!久しぶり………!!」


俺は前足を上げ、アルクは右手を上げて挨拶をする。



エレーナはアルクの手を取りしっかり握手すると、俺のことを早速抱え上げた。



「お前達、本当に久しぶりだな!!もう二度と会えないと思っていたぞ!!」


エレーナは、相変わらず男勝りのたくましい話し方をする。

しかし、その心の声は既に念話で漏れていた。


『ああ、やだ、やっぱりもふもふ~~~~…………』



俺は以前来た時にエレーナをテイムしている。

さすがに異世界間では念話は通じなかったが、再びこの世界に来たことで、念話で会話ができるようになったのだ。



「おい、念話のこと忘れるなよ。また心の声が漏れてるぞ」


俺がそう言うと、エレーナは顔を赤くして咳払いした。




そしてそんなエレーナの姿を、雷に打たれた表情で見つめる人物がいた。


ウィルは口をあんぐりと開けて、衝撃が走ったような表情で茫然としている。


「……あれ、ウィル?」


その様子に気付いたアルクが、怪訝な顔をする。

すると突然ウィルが動き、両手でエレーナの右手をガッと握りしめた。



「す、好きです…………」

「なっ………お前、何を………」


ウィルの突然の告白に、エレーナは面食らい赤面する。



アルクは慌ててウィルの服をぎゅっと掴み、引き離そうとした。


「ちょっとウィル!!この人は獣人じゃないよ、この猫耳は飾りで………」

「そんなこと見りゃ分かるよ!!けど俺は一目ぼれしたんだ!!!」

「もう、変な事しないでって言ったじゃないか………!!」



アルクとウィルがまた言い合う中、エレーナはふっと微笑み、ウィルの手を放す。

そしてまた、男勝りのたくましい話し方をした。



「……気持ちは嬉しいが、私は戦士だ。自分より弱い者に傾倒することはできない」


『いやだ、どうしよう、こんなこと言われたの初めて……いいえ、絶対馬鹿にされてるに決まってる!!それにこの人、見たところだいぶ年下じゃない………落ち着いて、本気な訳ないんだから………』



平静を装っているが、エレーナの心中は完全に混乱している。


全く、エレーナも隠れたコミュ障なのだ。




何とかウィルを落ち着かせ、俺達は初めて来るウィルとソフィアのために、ガエルダを案内する事となる。


興味深げに町を見回すウィルは、それでもたまにエレーナに視線を向けていた。



「ねえ、エレーナさん、どうして猫耳を付けてるの?……ウィルが変な目で見てるから、外した方が………」


アルクが小声で尋ねると、エレーナはまた少し赤面する。


「ああ、いや、猫族部隊の連中が、これを付けろとうるさくてだな……つい外すのを忘れていたんだ」



そう言ってエレーナは猫耳のカチューシャを取る。



それでもウィルの視線は、何度もエレーナに奪われているようだった。



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