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85.新たな任務

旅を再開した俺達の元に、ある日正式に王室から依頼が届いた。



俺達は旅をしながらも、各地のギルドからの依頼を引き受け続けていたのだ。


魔物討伐の依頼もあれば、普通の冒険者ではたどり着けない地域での薬草採取や、未開拓地の調査など、いわば“勇者向け”の依頼は常に溢れている。




今回俺達に依頼を送ったのは、もちろんユリアンだった。


俺達は再び王都へ転移し、王宮の門をくぐる事となる。




「お二人とも、ご足労いただきありがとうございます。何度もお呼び立てして申し訳ございません……」



いつものように俺達を執務室に招いたユリアンは、早速謝罪した。


「お二人に頼り過ぎているとは思うのですが、つい………」


「つい、お二人に会いたくなるのですよね。分かります」


横からミーシャが口を出す。

ユリアンは赤くなりながらも、否定はしなかった。



「い、いえ、あの、はい、もちろんそれもあります。ですが今回は、ぜひお二人の力をお借りしたく……。皆様、バルダン帝国で魔道具店の並ぶ有名な通りに行かれたでしょう。そこで魔法探知魔道具をウィルが購入したと聞いて、考えたのです」



ユリアンは改まって説明を始める。



「我が国はその後、バルダン帝国からいくつか、魔道具を買い入れました。それをアゼリア大陸各地に設置したいのです。いわば、定点観測地点を設け、常に魔物の動きが察知できるようにしたいのです」



そういえばウィルは、その魔道具を身に着けていた。

だからバルダン帝国の魔術研究所で、囚われている子供達の魔力を感知できたのだ。


俺の考えに答えるように、ユリアンがまた話し出す。



「ウィルが身に着けていたものは持ち運び可能な小型のものですが、今回購入したのは設置型のものです。より広範囲の探知が可能な上に、高精度です。そして人間の魔力ではなく、魔物が発する微力の魔素や闇魔法を探知します。お二人には、その設置作業を行っていただきたく……。作業と言っても、ただそれを指定地点へ運んでいただき、正常に作動しているか確認いただくのみで……」



ユリアンはちらりと俺達の様子を伺う。


「転移魔法があるのを良い事に、お二人にお任せするのは心苦しいのですが……。もちろん報酬は用意しています。それに、常に魔物の脅威に晒されているこの国にとって、これは急務ですので……」



それは確かにそうだ。

逆になぜ今まで、そのような魔道具が開発されなかったのかが謎だ。



「もちろん一日で終えろとはいいません。設置地点はいくつもありますし、お二人の旅の途中で、立ち寄れる場所からで結構です。むやみに転移魔法ばかり使うと、そのうち周囲から怪しまれるかも知れませんし……」



アルクは気づかわしげなユリアンの様子を見て、ふと笑みを漏らす。



「ユリアン、そんなにかしこまらないでよ。もちろん引き受けるからさ。ね、しょこら」

「おう」



普段から動き回っている俺達にとって、それは特に大きな負担ではない。

ただ旅のついでにちょっと時間を取れば良いだけだ。



「あ、ありがとうございます!ですが魔物に遭遇する可能性もありますし、気を付けてくださいね」

「フン、そんなもん一瞬で捻りつぶすまでだ」


俺がそう言うと、ユリアンもミーシャも笑った。




そんな訳で俺達は、ユリアンから託された魔道具をアイテムボックスに入れ、コクヨウに乗って最初の設置地点へと向かうことになった。



「いろんな場所を見て回るのに、むしろちょうど良いかも知れないね。そのうち、住みたい場所も見つかるかも知れない……」



空を飛びながら、アルクが俺に向かって言った。



「ああ。しかし設置地点が100か所以上あるってのは予想外だな」


俺達が依頼を引き受けてから、ユリアンは申し訳なさそうに説明を追加したのだ。

大陸中を網羅するためには、それだけの数が必要なのだという。


「そうだね……。まあでも、転移魔法も使えば、そこまで時間はかからないはず……」




やがて俺達は、大陸北西部の村の近くに降り立つ。

そこは俺達がこれまで訪れたことのない地域だ。


小さな村がいくつか集まっているが、もう少し南下しなければ大きな町はない。



村が集まる地域の北側の一角に、最初の魔道具を設置する事となる。



それは直径30cm程度の、長方形型の魔道具だ。

暗い灰色の魔石のように見えるが、よく見ると内側から鈍い青色の光を放っている。


ユリアンから渡された地図に従い、俺達はそれを地面に置く。

アルクが手をかざして微量の魔力を流し込むと、青い光が一瞬強くなった。



「これだけで良いのかな……。ちゃんと作動したかな?」



ちなみに、これと対になる魔道具が各地の護衛隊やギルドにも置かれることになる。

魔物を探知すると、直ちに知らせが届くようになるのだ。



魔道具を置く理由はもちろん、町や村に魔物が近づいた際、早急に対処できるようにするためだ。

しかしもう一つ、別の目的もあるらしい。



「ねえ、あの山岳にも、地図に印がついてるよね」


アルクは地図と、ここから見える山並みを見比べて言った。

確かに山岳の麓付近に、印がつけられている。



もう一つの目的とは、未開地の調査だ。


普段は魔物が多く人が立ち入れない区域や、人の足や馬車では到達できない地域に魔道具を設置する。

そしてそこに住む魔物の生態調査に役立てるらしい。



俺達ならコクヨウか、転移魔法で魔道具の設置に向かえる。

だからユリアンは特に俺達に協力してほしかったのだ。



「確か北の山岳地帯って、ドラゴンの巣があるんじゃなかったかな……」



アルクは山を見ながら呟く。

確かにドラゴンがうようよいるなら、普通の冒険者はなかなか近寄れないだろう。



「とりあえず飛んで行って、さっさと設置するぞ」

「うん、そうだね……」



俺達はコクヨウに乗って山の麓まで飛ぶ。

そして先程と同じ要領で魔道具を設置した。


設置地点は麓だったので、幸いドラゴンに出くわすことはなかった。

しかし途中俺達は、何体かのドラゴンが地面に落ちている姿を発見する。



「どうして、ドラゴンが……。他の魔物に倒されたとか………?」



アルクが不思議そうに呟くも、周囲に魔物らしき影はない。


特に手がかりのようなものもなかったので、俺達は結局、魔道具の設置が完了するとすぐにその場を離れた。




そして、その日のうちに俺達は、大陸北西部での設置をほぼ完了したのだった。


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