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80.意外な特技

俺とロッセルは王宮を出て歩き続た。



二階層を通り抜け、そのまま一階層へと向かう。


やっと一階層にたどり着いたのは夕暮れ近くになってからだった。



「おい、なぜこんな所まで来たのだ。も、もしやしょこら、私と逢瀬がしたかったのか……」


ロッセルの阿呆な発言を聞き流し、俺はそのまま路地裏を抜け地下へと向かう。

周囲は突然薄暗くなり、不穏な空気が漂い出した。



「しょこら、なぜまたこんなところに……。夜に来るのは物騒だぞ……」


ロッセルは縮こまって俺にピタッとくっついている。




俺はわざと地下街をうろうろした。


特に当てもなく歩き回るふりをして、以前俺達が捕まった、荒れ果てた広場のような場所へと出る。

そこには人気はなく、浮浪者の姿もなかった。



しばらくすると、俺の耳に何者かの足音が響いてくる。


俺はじっと耳を澄ませ、その足音が近づく気配に意識を集中した。

足音はどうやら二人分、ゆっくりとこちらに近づいている。



やがて、思った通り、その二人は俺に向かって飛び掛かって来た。




バイイイイイイイィィィン!!!




俺はバリアを展開して、二人の剣戟を防ぐ。

二人は相変わらずぎりぎりと歯を噛みしめ、俺を睨みつけていた。



「なっ、お、お前達……!一体なぜここに!というか、なぜ攻撃する!!」



ロッセルが愕然として叫ぶ。

俺のバリアで弾き飛ばされたロッセルは、地面に尻もちをついていた。



ギルバートとデルバートは、バリア越しに俺を睨みつけながら答える。



「無能は黙っていろ。こいつはこの国にとって害悪だ。今ここで始末してやる」



ギルバートがそう言い、改めて剣を振り下ろす。

しかしその剣は再び、バリアによりはじき返された。




思った通り、うまく二人を引きずり出せたようだ。


どうしても俺を始末したいこいつらは、帰国前に何とか機会を捉えようとするだろう。

だから俺はわざわざその機会を作ってやったのだ。



「従魔ごときが、先の戦いではよくも我々に恥をかかせてくれたな。勇者を取り逃がそうとも、お前だけは確実に始末する」


今度はデルバートが歯をむき出して言った。



「ちょっと前て、それじゃ研究員たちに暗殺を命じたのも、お前達なのか!?」


ロッセルはまた愕然として言った。


「しょこらにぶっ飛ばされて恥をかいた、ただそれだけの理由でか!?それに、研究所の違法な行いについても、お前達は知っていたのか!?」



ギルバートとデルバートは、忌々しそうにロッセルを見やった。



「無能は黙れと言っている。お気楽なお前は国の行く末を案じたことなどないだろう。こいつらがいる限り、我々の大国としての地位は常に脅かされている。一方に戦力が偏った状態で友好的な関係など築けるはずがない。弱者は強者の支配下に置かれるのが世の常だ。過去に何度同じ失態を繰り返したと思っているのだ」


「我が国の戦闘力強化は急務だ。多少の悪事を働いても迅速に研究を進めるべきなのだ、そのために地下街を犠牲にしてでもな。もう一度言うが、間抜けな正義感しか振りかざせない無能は黙っていろ」



二人は立て続けに言うと、再び俺を睨みつけた。



「さあ、いつまでもバリアなど張っていないで、かかってきたらどうだ!!」



俺はハアっとため息をつく。



とにかく、これで黒幕は露見したのだ。

二人を気絶させ、このまま王宮まで引っ張っていくか。



そうして俺はバリアを解除する。


二人は再びぎりぎりと歯を噛みしめ、瞬時に俺に向かって剣を振り上げた。



「死ね、このクソ従魔め!!!」




しかし、先に動いたのはロッセルだった。




既に二人の背後に回り込んでいたロッセルは、剣を大きく横に振る。

そして二人を同時にバサリと斬り付けたのだ。



「グアアアアアァァァッ!!!」



二人は痛みに悶え、ガランと剣を取り落とす。


それはいつもポンコツのロッセルらしからぬ動きだった。



「しょこらに手を出す者は許さん。それにお前達は間違っている。あの子供達の件は、()()()悪事などではない。それに………」


ロッセルは二人を睨みつけながら言う。


「お前達がもし本当に国のためを思うなら、まず一番に勇者を狙うはずだろう。しょこらを目の敵にするのは、お前達が恥をかかされたからだ。結局お前達は、自分のことしか考えていないのだ」



地面に倒れもがいているギルバートとデルバートを、ロッセルは冷たい目で見下ろした。




「お前、剣の使い方知ってたんだな」



俺が感心して言うと、ロッセルは急にいつもの調子に戻った。



「何を言っている、しょこら!私は剣技は得意なのだぞ!ただ私には指導者としての才がないから、私が率いる兵は弱いだけで……」


そういえば俺は、今までこいつが戦ったところを見たことがなかった。

一応、自称顔が良い以外にも特技はあったのだ。



ギルバートとデルバートは、気づけば白目を向いて気絶していた。

口では偉そうな事を言いながら、攻撃されることに慣れていないようだ。


このまま歩いてこいつらを王都まで引っ張るのは、さすがに骨が折れる。



俺はロッセルに向き直って言った。



「おい。今から見るもののことは、誰にも口外するな。もし口外したら俺は二度とお前に会いに来ない。内密にしていれば、また気が向いたら話を聞いてやる。分かったか?」


「え?お、おお……何のことか分からないが、任せろ!しょこらとの約束は命に代えても守るぞ!」




俺は頷き、周囲に誰もいないことを確認して、転移魔法陣を展開する。



真っ赤な魔法陣を見つめるロッセルの目は、キラキラと輝いていた。



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