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78.因果応報

その場にいた全員が、水槽をじっと見つめていた。



その人工体は、全て真っ白な体をしている。体だけではなく、髪までも真っ白だ。

体にはもちろん何も纏っていない。


どれも同じに見えるが、頭部だけはそれぞれ特徴があった。



一体目は赤い目をしており、髪は肩まで伸びている。

二体目は青い目をした、短髪の男のようだ。

三体目は緑の目に、胸まで伸びた髪。

四体目は茶色い目をして、髪は最も短く、額すら覆っていない。

五体目は白く光る目をした、腰下まで届く長髪だ。



どの人工体がどの属性を操るか、その目の色で判別できるという訳だ。


しかしその顔に表情はなく、まさに人形そのものだった。




『しょこら、気を付けて………』


アルクは目覚めた人工体をじっと見つめながら、汗を滴らせている。


『奴らきっと、しょこらを集中攻撃してくる。僕の事は殺すつもりはないんだ……』




バリイイイイィィィィン!!!!!!



アルクの言葉が終わるか終わらないかのうちに、水槽が大音量で壊れる。

中からオレンジ色の液体が溢れ出し、洪水のように床を満たす。


そして、それぞれの人工体が、配線を引きちぎり床へと降り立った。



残っている黒装束の男達は、震えながらその様を見つめている。


その震えは興奮のためか、あるいは恐怖からなのか分からない。



「さ、さあ、我々はお前達の創造主だ。勇者以外の者を直ちに殲滅するんだ!!」


男が声を張り上げ命令した。



すると、五体の目が突然光を帯びる。


そして次の瞬間、全ての人工体は、俺とアルクに向かって手をかざした。



「しょこら!!」



俺とアルクは同時にバリアを展開する。


火・水・風・土・光の攻撃魔法が、人工体から一斉に放出された。



ダアアアアアァァァァン!!!!!!




二重のバリアが震えるほどの衝撃が走った。

凄まじい威力を持って、攻撃魔法は周囲の空気を震わせる。


その風圧だけで、研究室の壁沿いにある装置が全て、粉々に破壊された。



「な、なんて威力なんだ……。一体どれだけの時間をかけて、あの勇者達を……」

「落ち着け。奴らの魔力には底がある。あの調子だとそう長くは持たないだろ」


俺はアルクに向かって言った。



人工体達は続けざまに、一斉に魔法攻撃を仕掛けてくる。


直撃を受ける度にバリアが振動し、徐々に亀裂が入り出す。



「おい。バリアが壊れたら攻撃開始するぞ」

「うん……!」



ついに何度目かの攻撃で、バリアは大音量を立てて崩れ落ちる。



次の瞬間、俺達の目の前に、五つの人工体が現れた。

一瞬でここまで移動してきたのだ。



青と茶色の目がそれぞれ大きくジャンプする。


その二体は同時に、俺に向かって拳と足を振り上げた。



俺はさらに高くジャンプし、二体の上空へと舞い上がる。

猫のしなやかさで体を旋回させ、空中から二体まとめて足で蹴り落とした。



ダアアアアアアァァン!!!!!



二体は叩き落され、床が完全に陥没する。


すると今度は緑の目が、俺に向かって風魔法を発動する。



まるで竜巻に呑まれるかのように、俺の体は宙へと巻き上げられた。

さらに旋風の隙間から、光の矢が何本も飛んで来る。


俺は旋回しながらバリアを展開し、光の矢を全て弾き返した。



アルクは赤い目に向かって、剣を振りかざし飛び掛かる。

しかし赤い目は、瞬時に体をしならせ攻撃をかわした。


それとほぼ同時に、アルクに向かって火炎攻撃を噴射する。


アルクは即座に水魔法で応戦した。



ドオオオオオオオォォォン!!!!!



衝突した二つの魔法が相殺され、周囲に煙が充満する。


煙が晴れた瞬間、アルクの目の前には赤い目が迫っていた。



思い切り振り下ろされた拳を、アルクは剣で受け止める。



俺もアルクも戦いながら、どこか違和感を覚えていた。




黒装束達は、人工体の完成度を見て歓声を上げる。



「素晴らしい!どうだ、これこそが我々の研究だ!」

「さらに改良を重ねれば、勇者をも凌ぐ存在になるぞ!」

「さあ行け、さっさと全員始末するのだ!!」



どうやら奴らは、ジーク達が姿を消したことにすら気が付いていないらしい。


すると黒装束の一人が、勝ち誇ったように声を張り上げた。



「どうだ、我が国の技術は!魔力だけではない、あの侵攻の際、お前達の動きを全てデータ化して人工体へと入力したのだ!その体術、攻撃法、速度も全て、いわばお前達の複製だ!実力的には全くの互角、こちらの方が数が多いとなれば、お前達に勝ち目はない!!」



またご丁寧に説明してくれたものだ。


しかしその言葉で、違和感の正体ははっきりした。



俺もアルクも人工体と戦いながら、どこかで見たことのある動きだと思っていたのだ。



俺はやれやれとため息をつく。


「まったく、とんだ計算違いだ」



その言葉に、黒装束達は再び雄叫びを上げる。


「ああ、その通りだ!!全ては我が帝国の技術を見くびったお前達の自業自得………」



しかし、その後の言葉は続かなかった。




俺とアルクは同時にジャンプして、互いの傍に降り立った。


そして互いに背を向けて、両手を前に向けてかざす。



次の瞬間、全く同時に、俺とアルクの両手から火炎魔法が放出される。

それは360度、研究室内を余すところなく炎で覆い尽くした。




ギイイエエエエエエエエエエ!!!!




五体の人工体は、一斉に奇声を発した。

それは獣の断末魔のようにも、ただ接触不良の機械が大音量で軋む音にも聞こえる。



黒装束達は、いつの間にか人工体が施したバリアにより守られている。

その中から、燃え上がり消し炭になってゆく人工体を茫然と眺めていた。



人工体が完全に燃え尽きると、俺達は水魔法を噴射する。


その後には焦げ臭いにおいと、虚しくぶすぶすと燻ぶる燃えカスだけが残った。




「……わ……我々の………何百年にも渡る、技術の結晶が…………」



絶望の声が黒装束達から上がった。


「一体なぜ………どこで計算が狂ったのだ………」



俺とアルクは、バリアに囲まれへたり込んでいる男達の前に立ちふさがる。

俺はフンと鼻を鳴らして言った。



「だから計算違いだと言っただろ。お前ら、侵攻してきた雑魚共相手に、俺達が本気で戦ったと思ってるのか」



そう、魔王に三度対峙し、ダンジョン深層の魔物を相手にした俺達にとって、帝国の兵など雑魚極まりない。

そんな奴らと戦った際のデータなど、役に立つはずもないのだ。



「そ、そんな…………」


男達はがっくりと肩を落とし、その場でうなだれる。



「おい。何全部終わったみたいな顔してるんだ。まだ終わってないぞ」

「え?」


俺が冷酷に言い放つと、男達はきょとんとする。




バリイイイイイィィィィィン!!!!!!




俺は思いっきり猫キックして、連中を覆うバリアを破壊した。

そして男達をじっと見て、クンクンと匂いを嗅ぎ、一人の男の胸ぐらを掴む。



「ひいっ………い、一体何を………」


胸ぐらを掴まれ宙に浮いた男は、怯えて足をバタつかせる。

俺は男を冷ややかな目で見つめながら言った。



「お前、さっき俺の連れを二度も殴ったな。それ相応の報いは受けてもらうぞ」

「ヒイッ…………!!」



そこからは、拷問の時間だ。



俺は男をドサリと床に落とす。

そして男がさっきアルクにしたように、思いっきり頬を蹴り飛ばす。



バキイイイイイイィィィィ!!!!!



歯を飛び散らせ吹っ飛んだ男の傍に、俺はジャンプして瞬時に降り立つ。


そして再び、男がアルクにしたように、その背中を思いっきり蹴りつける。



「グホオオオオォォォッ………!!!!」



男の背骨がバキバキと折れる音が響く。


あまりの勢いに男の体は、完全に床にめり込んでいる。

男は白目を向き、苦悶の表情で気絶していた。



俺はくるりと、残った男達の方を振り向く。

すると男達は一斉に、ビクっと縮み上がり身を寄せ合った。



「お前らもだ。これは俺の仲間と、あの子供達への所業に対する報いだ」



俺は残った黒装束達を全員、死ぬギリギリ寸前まで痛めつけた。



顔面を蹴飛ばされ、背中をへし折られ、床に叩きつけられる。

完膚なきまでに叩きのめされた男達は、一人残らず虫の息となる。



俺は仕上げに全員に治癒魔法を施した。

そして傍に落ちていた例の黒い縄で、まだ気絶したままの男達を全員縛り上げる。



もはや俺の拷問に慣れっこになったアルクは、小さくやれやれと笑った。



「さて、帰るぞ。地下街であいつらと……」



俺の言葉が終わらないうちに、アルクはこちらに歩み寄る。

そしてそのまま、俺をぎゅっと抱きしめた。



アルクはしばらくの間、そのままじっとしていた。

戦いと火炎魔法による汗が、じわりと互いの体に伝わってくる。



「おい。何してるんだ」

「ううん。何でもないんだ。」



それだけを言って、アルクは黙り込んだ。



俺はアルクに抱きしめられながら、尻尾を大きくゆっくりと振った。


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