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77.目覚め

一体どこから現れたのか、何人もの黒装束の男達が、武器を持ち俺達を取り囲む。



剣や短剣を構えている者もいれば、魔術用の杖をこちらへ向ける者もいる。

男達はじりじりと包囲網を固めていった。



「お前達は禁断の領域に踏み込んだ。ここを見られたからには、生きて返す訳にはいかない」



男の一人が言い放った。

すると別の男が、解放された子供達の存在に気が付く。



「おい、奴ら()()()()()を解放してるぞ!あれがなければ我々の実験は……」

「構わん。侵入者もろとも抹殺しろ。勇者さえ生かしておけば、魔力には事欠かない」



「魔力供給源………?一体何を言って………」


アルクが動揺して呟く。

黒装束の男達は、俺が解放した子供達のことをそう呼んでいるのだ。




「どうぜ勇者以外は全員死ぬのだ、教えてやろう。その子供達は我々が見つけた貴重な魔力供給源だ。生まれつき魔力が高い者を集め、我々の実験に協力させている。お前達も見ての通り……」



男はそう言って、中央の巨大な水槽に目を向ける。



「我々の目標は勇者の創造だ。あの人工体は魔力を無限に吸収する。子供達から常に供給される魔力は人工体へと蓄積され、やがて勇者と同等の魔力を保有する兵器となる。人間と同じ筋肉構造を模倣しているのでほぼ人間同様の動きが可能だ。その反面意志を持たないので我々の意のままに動く。もちろん魔力は消耗するが、供給源さえ確保すれば無限に補給が可能だ。将来的には少ない魔力で最大限の威力が発揮できるよう改造される。……」



男はペラペラと研究について語る。


ジークは再び顎を掻きながら、興味深そうに話を聞いていた。



「ふむ、そうか。しかし勇者同様、五大属性全ての魔法を扱うことはできないのだろう。だから人形は5体いるのだな。1体につき1属性ということか。」



まるで世間話をするかのように、ジークはゆっくりと話す。


黒装束の男が、ほくそ笑む気配がした。



「ああそうだ。無論、研究が進めば将来的には1体で全属性が扱えるようになる」



全くご丁寧に説明してくれたものだ。

どうやら本気で俺達を地上に返す気はないようだ。



「そんな……そのために、子供達をこんな場所に閉じ込めて……?」


アルクがわなわなと震えながら言う。


「そんなの、まるで奴隷じゃないか!」



黒装束の男は、アルクに顔を向けて言った。


「ああそうだ。しかし国の発展のためには多少の犠牲は付き物だ。そして勇者よ、これからはお前がこいつらの代わりを務めるのだ!」



男が叫ぶと、突然周囲が動く。


黒装束の男達が一斉に、俺達に向かって攻撃を仕掛けてきたのだ。




一人の男が、剣でミーシャに斬りかかる。


しかしミーシャは隠し持っていた短剣を取り出し、いとも簡単に攻撃を受け止める。

そして男の腕を掴み、目を覗き込んで言った。


「さあ、あなたの敵は私達ではありません。この黒装束の者達が敵ですよ。奴らを始末しなさい」



男はすっとミーシャから身を引く。

そして近くにいる仲間を、剣でバサリと斬り付けた。



「おいお前、何してる!!」


同士討ちを目の当たりにした別の男が慌てて声を上げる。

するとミーシャはその男の肩に手を置いた。


「あなたもですよ。さっさと黒装束達を倒しなさい」


その男もまた従順に、近くの味方を剣でズブリと突き刺した。



数人の男達はウィルとジークに向かって火炎魔法を発射する。

同時に例の黒い縄が飛んできて、二人の体を一瞬で縛り上げた。



ドオオオオオオォォォン!!!!



三人の男から一気に放出された火炎魔法がぶつかり合い、辺り一面を煙で覆った。


「よし、残りの奴らも消し炭にしてや………あれ?」



煙が晴れると、男はポカンと口を開ける(顔は隠されているので見えないが)。


ジークとウィルの周囲にはバリアが張られ、二人は無傷で立っているのだ。

しかもジークは、まるで服に着いた髪の毛を払うように縄を振り落としている。



「な、我々の拘束魔法が、なぜ…………って、うわああああああ!!」



茫然とする男達の頭上に、魔法陣が展開される。

そこから雷が落ち、全員の脳天に直撃した。


「へへっ、煙のおかげで詠唱の時間が取れたぜ。どうだジーク、俺の攻撃もすげーだろ!」

「ああ。大したものだ」


ウィルはジークに魔法を披露できて嬉しそうだった。



俺とアルクはといえば、襲ってくる黒装束を次々に張り倒していた。


猫パンチや猫キックの一発で全員気絶する。

アルクも剣の一振りで、数人の男を一度に斬り捨てていた。



囚われていた子供達は、俺が施したバリアに守られている。

全員怯えた様子で、震えながら戦いを見守っていた。




しかしその時、俺はふと水槽に目を向ける。


先程研究を語っていた男が、水槽に近づいているのだ。

何をするつもりかは想像がつく。



「おい、やめろ!それはまだ完成していないだろう!もし破損でもしたら……」


黒装束の一人が、男の動きに気付き叫ぶ。

しかし男は大声で叫び返した。


「構うものか!!人工体はまた作れば良い。勇者さえ捕らえれば損失分は取り戻せる!!今は勇者以外の全員を抹殺するのが先だ!!」


男はそう言って、水槽の前にある装置に手を伸ばす。




『おい、全員ジークと一緒に外へ転移しろ。子供達も連れて行け。後は俺が始末する』


俺は念話で全員に語りかけた。


『僕も残るよ、しょこら!』


アルクはすぐさま俺に答える。


『ああ。では後は任せよう。そうだな、また地下街で落ち合うとしよう』

『しょこら、アルク、気を付けろよ。待ってるからな!』

『お二人とも、十分痛めつけて差し上げてくださいね』


ジークとウィル、ミーシャがそれぞれ答えた。



混乱に乗じて、ジークは転移魔法陣を展開する。

そして三人は、子供達とともに転移し姿を消した。



水槽に気を取られた黒装束の男達は、誰も転移魔法に気が付いていない。



男はついに装置のスイッチを押していた。


するとどこからともなく、うなるような重低音が響いて来る。



ゴゴゴゴゴゴゴ…………




アルクは剣を握る手にぎゅっと力を入れる。

そしてなぜか、俺を庇うような恰好で前に立ちふさがった。



全員の注目を浴びながら、オレンジ色の液体が波打ち出す。



そして次の瞬間、五つの人工体がそれぞれ、ゆっくりと目を開けた。


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