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76.地下の研究

「な、なんでここに……どうやって………」



ウィルは床に転がったまま、ジークの姿を見上げる。


「て、転移魔法で来たのか?でも何でここが………」



ジークはウィルを見下ろし、いつものゆっくりした話し方で答える。


「説明は、移動しながらにしよう。とにかく、あいつらと合流するんだ」



ジークはそう言ってかがみ込み、ウィルを縛っている縄を解いた。


「え、どうやって……。この縄は術者しか外せねえはず……」


「結界魔法と似たような要領だ。回路を断ち切るんだ。この魔道具には、術者にしか取り外せないという術式が織り込まれた回路が存在する。それを……これも詳しい説明は後だ」


そう言ってジークはウィルを立たせた。


そして壁に激突して伸びている男に目を向ける。



「このような大がかりな火炎魔法陣を使用したのは、数十年振りだ。上手く行ったようだな」





俺がジークをテイムしたのは、今回の旅の前に、俺達がジークの部屋を訪れた時だ。



バルダン帝国からの招待を知ったジークは、俺達に向けて警戒するようにと伝えた。

俺はその日、ジークの部屋を去る前に、念のためジークをテイムしたいと申し出たのだ。



「旅が無事に終わったらテイムを解除する。だが万一何かあった時、転移魔法を使えるお前がいると対処しやすい。座標も念話で送れる。もちろん何かあっても、極力自分達で対処するつもりだ」


俺はジークにそう伝え、テイムすることの了承を得たのだ。



そして俺はその事実を、ミーシャにも伝えていた。


もちろんミーシャはこれまで、ジークの存在を知らなかった。

俺はジークの許可を得た上で、同じ魔族であるミーシャにだけは、ダンジョンの深層に住むジークの話を伝えたのだ。



「あなた達が囚われたと気づき、私は地下街で聞き込みをしました。あの小さな男の子を探し出すのに少し時間がかかりましたが。闇魔法を使ったら、あの子は簡単に答えてくれましたよ。黒装束の男達が、研究所という言葉を漏らしていたことも」



ミーシャは俺達に向かって淡々と説明する。



「そこで私はジークに念話で地下街の座標を送り、私の元へ転移してもらったのです。そして共に転移魔法でここへ参りました」




同じころ、ジークもウィルに対して同じ説明をする。


「しょこらの、危機管理能力のおかげだな。大したものだ」


ジークはそう言って説明を終える。

ウィルは感心したように話を聞いていた。



「おっと、そうだ。私はミーシャのように、人間の姿に変装できないのだ。今更だが、幻影魔法を使っておこう」


ジークは思い出したようにゆっくりと呟く。


すると次の瞬間、緑がかった皮膚はウィルと同じ肌の色になる。

頭に生えた黒い二本の角も、消えて見えなくなった。


ポカンと口を開けて見つめるウィルに、ジークは気づいたように言った。


「……お前には、幻影魔法の話はしたことがなかったか。また帰ったら教えてやろう」


「ジ、ジーク先生………」





やがて俺達は、ウィルとジークと合流する。


アルクはウィルの姿を見ると、すぐに駆け寄った。


「ウィル!!大丈夫、怪我してない!?ごめんね、僕のせいで………」



ウィルの黒いローブを掴み、アルクは心配そうにじっとウィルを見つめる。

ウィルはその様子を見て、またやれやれと笑った。


「おう、大丈夫だ。ってかお前のせいじゃないだろ。それより、お前らこそ大丈夫だったか?」

「うん、ミーシャが助けに来てくれたし、怪我も治癒魔法で治したから……」



アルクはウィルの様子を見て、安心して息をついた。



「おい、それより早くここを出るぞ」


俺がそう言うと、ウィルはキョロキョロと周囲を見回す。


「出口を探さずとも、転移魔法で……」


ミーシャはそう言いかけて、ウィルの顔を見てふと言葉を止める。


「ウィルギリウス様。どうされたのです?」



周囲を見回していたウィルは、一つの扉に目を止めた。

そのまま扉を見つめて、しばらく固まっていたのだ。



ここは魔術研究所の地下だ。

おそらくロッセルが言っていた、国家機密とかいう研究が行われているのだろう。


そしてそれは黒装束の男達が言っていた、魔導兵器の開発だ。



「おい。興味があるのは分かるが、深入りしない方がいいぞ」



俺がそう言うが、ウィルはまだ扉を見て固まっている。

そして唖然とした様子で、ゆっくり口を開いた。


「いや……。ほら、俺、前に行った魔道具屋の商店街で、魔力探知ができる魔道具を買ったんだよ。これなんだけどさ」


そう言ってウィルは、首からかけた紐状のものを服の下から取り出す。

紐の先には三角形の魔石のようなものがついている。



「こいつ、結構な精度で、魔力を探知できるんだ。でさ、あの部屋から、子供の魔力を感じるんだよな……」



俺達は全員、扉に目を向ける。

何か嫌な予感がした。



「まあ、一目見る分には問題あるまい」


ジークがゆっくりと言った。

おそらく研究者精神がうずいているのもあるのだろう。



俺はため息をつき、仕方なく先頭に立って歩き出す。

そして扉に手をかけ、ゆっくりと開いた。




そこは巨大な研究室だった。



地上に見えている研究所の建物よりも、地下に広がるその空間は何倍も広い。

しかし地上の研究所と同じような円形の空間になっている。


室内は暗く、謎の装置が壁際にズラリと並んでいた。



中央には、天井まで届く巨大な円形の水槽のようなものがある。

水槽から発せられる怪しいオレンジ色の光が、暗い室内を照らし出していた。



「な………あれは、一体…………」



水槽を見たアルクとウィルは、同時に大きく息を呑む。


水槽の中には、複数の人間のようなものが浮かんでいるのだ。


本物の人間なのか、ただの人形なのか、一目見ただけでは判別できない。

それらはいくつもの配線に繋がれ、全員目を閉じてオレンジ色の水の中を漂っている。



すると俺達の耳に、か細い声が聞こえてくる。


「た………たすけ…………」



俺は猫耳をピクリと動かし、声の方へ目を向けた。

その声はズラリと並んだ謎の装置の、背後の壁から聞こえてくる。



よく見るとそこはただの壁ではない。

壁をくり抜いたような空間がいくつもあり、それぞれ鉄格子で覆われている。つまり牢屋のようになっているのだ。


鉄格子の前に謎の装置が並べられ、牢の扉さえ塞がれている。



俺は壁際まで走り、ジャンプして装置の一つに飛び乗った。

そこから鉄格子の中を覗き込むと、各牢屋に一人ずつ、小さな子供達が囚われていた。


全員で5人、皆必死な目を俺に向けている。



俺は胸糞が悪くなり舌打ちをした。


とりあえず何も聞かず、俺は熱光線を発射して鉄格子を焼き切り始めた。




俺が子供達を救出している間、ウィルとジークは水槽を観察する。


「これは……本物の人間というより、人造人間といったところか」


ジークはじっとその人間達を見つめた。


「人造人間って……奴ら一体、何の研究をしてるんだ……」


「何となく想像はつく。奴らが欲しいのは、勇者に匹敵する存在だ。つまり人工的に、勇者を造り出そうとしているのかも知れない」


ジークは顎を搔きながら、ゆっくりと呟いた。



そうこうしているうちに、俺は牢に囚われていた子供達を全員脱出させた。


「ど、どうしてこんなところに、囚われて……」


アルクがしゃがみ込み、子供の一人を覗き込みながら言う。

衰弱している子供達に、アルクは回復魔法を施した。


「いや、質問は後にして、早くここから出ないと………」



「それはもはや許されない。ここがお前達全員の墓場だ」



その声に、俺達は全員入り口のほうを振り向く。



どこからか現れた黒装束の男達が、次々と扉から中へと入り込んできていた。


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