表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/114

70.国王への謁見

王宮にたどり着くまでに、俺達は二階層、三階層を通り抜けてきた。



二階層になると一階層よりも建物が全体的に大きくなる。


そして一階層の雑多な下町のような雰囲気がなくなり、整然とした落ち着いた住宅街という様子で、多少値が張りそうな大きな商店が増えた。


一階層と二階層は平民の区域だが、明らかに二階層の住民の方が裕福なようだ。



そして三階層になると、突然町の色が変わった。


全ての建物が白い石造りでできているのだ。

そこは貴族の区域で、全ての屋敷には庭があり、高い門で囲われている。


道は建物と同じような白い石が敷き詰められ、完璧に舗装されている。

ゴミ一つ落ちておらず、雑草の一本も生えていない。



そして俺達を王宮まで送り届ける、別の馬車がそこで待機していた。



「なんか、まさにお金持ちのエリアって感じ……」


アルクが馬車の中から外を覗きながら、ボソッと呟く。


「ああ。三階層だけで、アゼリア国の王都全体分の金がかけられてるんじゃねえか」


ウィルも感心したように言った。


ロッセルはそんな二人の会話を聞いて、得意げな笑みを漏らしている。




そして俺達はついに、宮殿を見上げて立っていた。



他の建物と同様に白い石造りで、いくつも連なった棟の先端の屋根は真っ青だ。

中央の最も大きな棟の上部には、帝国の紋章がはめ込まれている。


国旗と同じく、金色の大陸の上で剣と杖が交差している紋章だ。



「どうしよう、僕、緊張してきた……」


アルクが宮殿を見上げながら、少し顔を青くした。


「大丈夫です。私がお教えした通りに挨拶すれば良いのです」


余裕の表情で宮殿を見上げながら、ミーシャはニコッと笑った。




俺達はすぐにロッセルに先導され、王への謁見の前に通される。



巨大な大広間の両開きの扉が開け放たれると、その奥に玉座があり、王が鎮座していた。



バルダン帝国の王は、アゼリア国や異世界の王のように、重々しいローブを纏っていない。

その代わりに、なぜか重厚な鎧を身に纏っていた。



「アゼリア国の勇者一行諸君、よくぞ我がバルダン帝国へ。余はバルダン帝国国王、アレクサンドロス・バルダンである」



王は物々しい雰囲気を醸し出しながら言った。



こいつがアゼリア国への侵攻を企てた張本人だ。

そんな奴に対してへりくだるのは癪だが、背後からミーシャの鋭い視線を受けながら、俺達は否応なしに跪く。



しかし、挨拶をするはずのアルクが、一向に口を開かない。

すると隣で跪いたウィルが代わりに口を開いた。


「お招きいただき感謝します、バルダン国王陛下。勇者アルク・フレデール、従魔しょこら、ユリアン女王直属の臣下ミーシャ、そしてユリアン女王の従兄ウィルギリウス・ヘイデンです。この度の訪問が両国間の新たな関係構築の一助となれば幸いです」


握った右手を胸に当て、右足を下げて跪いた格好で、ウィルがすらすらと言った。


俺とアルク、ミーシャも同様の姿勢を取りながら、アルクは俺達に念話で話しかける。



『ウィル、ありがとう!僕、挨拶の言葉すっかり忘れちゃってたよ……』

『そういえばお前、一応王族だったんだな』

『よくできましたね、ウィルギリウス様。さすが王族、ただの猫耳フェチではないのですね』



俺達が続けざまに言うと、ウィルは表情を変えずに力なく答える。


『だからお前ら、俺のことを何だと思ってんだよ……』



本来は王が話す間、跪いたまま聞くのがこの国の礼儀だという。


しかし俺に取っては知ったこっちゃない。それに今回は侵攻への謝罪も兼ねた招待なのだ。

俺は早々に立ち上がり、腰に手を当てて王を見返した。



『しょこら様、私の教えをお忘れですか?』


ミーシャが念話でヒヤリとした声を発するが、俺はフンと鼻を鳴らす。


そしてバルダン帝国王に向かって声を上げた。



「おい。俺達はいつまでも下手に出るつもりはない。今回はこっちが迷惑をかけられた側なんだ。侵攻に対する謝罪はきちんとしてもらうぞ」



俺がそう言い放つと、一瞬広間の空気が静まり返った。



「貴様、国王に向かって無礼な………」


傍に控えていた国王の臣下が、俺に向かって怒りの声を上げる。

しかし国王は手を上げてそれを制した。



「よい。その者の言う通りだ。此度の我が国の計らいはまさに愚かであった。改めて諸君らに謝罪しよう。此度の招待の目的は其方の言う通り、友好関係の構築のみならず、国としての正式な謝罪を兼ねてのものだ。そうかしこまる必要もない」



俺の隣で、アルクとウィルがほっと息をつく気配がする。


ミーシャは王への謁見が終わるまで、背後から俺に冷酷な笑みを向けていた。




「おい、しょこら、私の父上にあんな口をきいたのはお前が初めてだ!何だかとても爽快だったぞ!!」


広間を出ると、ロッセルが興奮して俺に声をかける。


こいつは王室では無能だと言われ、普段から肩身の狭い思いをしているのだろう。

俺が王族に歯向かう度に、ロッセルは嬉しそうな顔をした。



「で、挨拶も済んだしもう自由にして良いか。堅苦しい場は嫌いなんだ」


俺がそう言うと、ロッセルは思い出したように言う。


「ああ、そうだ、お前達に部屋を用意したんだ!今夜は晩餐会があるから、それまで部屋で休むと良い!しょこらは私の部屋で……」


しかしロッセルが言い終わらないうちに、アルクが背後からガバっと俺に抱き着いた。


「すみません、しょこらは僕と同じ部屋で良いです。早く案内してください」


アルクは再び、ジロリとロッセルを凝視して言った。



俺達が廊下を抜けて寝室のある東棟へと向かっていると、俺はふと視線を感じる。


そちらに目をると、二人の男が俺達をじっと見ていた。

ロッセルの従弟のギルバートと、その兄のデルバートだ。



俺が戦いの場で二人ともぶっ飛ばしたのだ。

二人は険しい顔をして、俺のことを睨みつけている。


俺は全く気にせず、無視してその場を通り過ぎた。




俺達には一人一部屋ずつ、宮殿内の客室が充てがわれた。

俺もアルクも別部屋なので、合計四部屋だ。


アルクは俺と同じ部屋でいいと散々喚いたが、ロッセルがきっぱりと断った。


「すまないが、未婚の男女を同室で宿泊させられない決まりなのだ。例え従魔でも、人間の姿になれるなら同じだ」



アルクはそれを聞いてぐっと言葉に詰まる。

しかしやがて諦めたように、ハアっと息をついた。




晩餐会とやらまでの間、俺達は部屋で休むことにする。


かと思いきや、ロッセルは早速俺の部屋にズカズカと入り込んできた。



「おお、しょこら、やっと二人でゆっくり話ができるな!!聞いてくれ、私がたった一人無傷で戦場から戻り、しかもユリアンと国交再開を約してきたことで、王宮の者達は度肝を抜かれていたのだ!!侵攻こそ失敗したが、情けなく倒されたギルバートやデルバートに比べたら、大きな成果だとな!!これも全部しょこらのおかげだ!!もはや誰も私のことを、見た目が良いだけの無能だとは言うまい……」


「おい。男女同室は禁止じゃなかったのかよ」


「一緒に夜を明かす訳ではないから良いのだ!!私にはしょこらと積もる話がたくさんあるのだ……」



俺はやれやれとため息をつく。

こっちには積もる話などないんだが。



しかしロッセルはお構いなしに、ひたすらに話し続けたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ