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57.新たな旅へ

俺達はエド町を後にして、旅の続きを再開することにした。



ユリアンとミーシャを王都へ、ウィルとソフィアをヘイデン領へ、転移魔法で送り届ける。

それからヘイデン領を発ち、未訪問の地へと向かうことにしたのだ。



魔術学校は、俺達の手伝いがなくても何とかなるはずだ。

長期休暇中だった教師が、たまたま復帰したからだ。



俺達がヘイデン領を発つと言うと、ウィルは名残惜しそうな顔をした。



「まあ、転移魔法があるから、いつでも会えるけどさ。……なあ、近いうちまた会えるよな?」

「おう。どうせお前、ジークに会いに行くんだろ。その時は呼べ」

「おお、ありがとな、しょこら!!……でもさ、ジークに会わねえ時も、たまに呼んでいいか……?」

「好きにしろ」



アルクもウィルと離れるのは名残惜しいようだ。


「ウィル、いっそ一緒に旅をしない?研究ならどこでもできるしさ……」


しかしウィルは、笑って首を振った。


「ありがとな。でもそれは親父が許さねえ。俺は学校の手伝いをしながら、研究を続けるよ。……そうだアルク、お前のおかげで、親父からも少し研究を認められたんだ。本当は王位継承権を継げなかったら、次期研究費は打ち切りだって言われてたんだけどさ。ダンジョンから出た時のお前の言葉を聞いて、考え直してくれたらしい」



アルクはパッと顔を輝かせる。


「本当に!?よかったね、ウィル!!……けど、ウィルのお父さんは、ソフィアが試験で魔法陣を使うところを見てたんでしょ。たぶんその時から、決めてたんじゃないかな」



アルクがそう言うと、ウィルはふっと笑った。




その時突然、俺達の頭の中に念話が鳴り響く。

それはユリアンからだった。



エド町に滞在した日、俺は女子3人から散々弄ばれた後、さらに懇願されたのだ。

今後離れていても、連絡が取れる手段がほしいと。


どうやらユリアンは俺が念話を使えることを、ミーシャから聞いていたらしい。


そして俺は結局、リーン、ユリアン、ソフィアを、全員テイムする事となった。

さらには翌日、ミーシャのこともテイムしたのだ。



正直、面倒そうなのでそれは避けたかったのだ。

そして案の定、ユリアンは遠慮なく念話を繋いでくる。



『しょこら様、アルク様、無事ヘイデン領へ戻られましたか?もうすぐ出発されるのでしょうか。次の目的地がお決まりになれば、ぜひ私に一報を……』

『ちょっと、わざわざ全員に念話繋がないでもらえますか。うるさいです』


リーンの声が割り込んでくる。


『おいお前ら。必要な時にしか念話を使うなと言っただろ。テイム解除してやろうか』

『そ、そんなしょこら様、今は必要な時です……』

『あらやだ、アル、あなた女の子のお友達が増えたのね……』



そういえば、アルクの母にも念話が繋がっているのだった。


『ええっ……?も、もしや貴方は、アルク様の、お母様……』



全く、これだから嫌だったのだ。

アルクもウィルも念話を聞きながら苦笑していた。




俺達はコクヨウに跨り、ヘイデン領を後にした。


地図で座標を確認して転移する事もできるが、未訪問の地は現地の詳細が分からない。

そのため俺達は、コクヨウに乗って旅を続けることにしていた。



それにコクヨウをしばらく呼ばないと、俺達のことを忘れそうだったからだ。

子供のくせにじじくさいドラゴンなのだ。



「しょこら、これからどこに行こうか?」


空を飛びながら、アルクが俺に向かって尋ねる。



元々、ユリアンの生誕祭に出る前は、俺達は再びベラルディに行こうと言っていた。

しかしそこは転移魔法でいつでも行けるし、まだ行ったことのない場所を先に回ることにしたのだ。



「さあな。とりあえず西側に行ってみるのはどうだ」



俺達は魔王討伐の際、フレデール領から真っ直ぐ北上した。


四百年前の世界では王都から北上したし、今の時代に戻ってからは、王都とそのすぐ南側にあるヘイデン領にしか行ったことがない。


王都はこの大陸の、ほぼ中心に位置している。フレデール領は、王都の東側にある。


つまり俺達は、大陸の西側と南側に、一度も行ったことがないのだ。



「ねえ、それならさ、一度西の端まで行ってみない?僕、この世界で海って見たことないんだ」


アルクが目を輝かせて言った。



俺達はヘイデン領から、真っ直ぐ西に向かって飛んだ。

途中休憩を挟んでも、西端までたどり着くのには丸二日ほどかかった。




「わあ、すごい………」



海に着いた時は夕暮れだった。

俺達は西の端にあるファウンデンという町へ到着し、すぐに海を見に来たのだ。



海はオレンジ色の太陽の光を反射して、キラキラと輝いている。


「本当に久しぶりだ。前世以来だよ、海を見たのは………」


アルクは猫の姿の俺を抱えながら座り込み、海を見つめていた。

俺も海を見るのは初めてなので、黙ってじっと眺めている。



ここアゼリア大陸は、海に囲まれた一つの国家だ。

海を越えるともちろんそこには他の大陸や島があり、そこは全く別の国なのだ。



アルクもその事を考えていたようで、海を見ながら呟く。


「アゼリア大陸は、他の大陸からはずいぶん離れてるみたいなんだ。他の国に行くのは船ですごく時間がかかるって、小さい頃に習ったよ。でもいつか、外国にも行ってみたいね……」



俺達はしばらく無言で、海を見つめる。


しかしふと、俺の目に何かが留まった。

水平線のはるか遠くに、船のようなものが浮かんでいる。



それは特にこちらへ近づく様子もなく、ただ水平線上を行ったり来たりしていた。


「おい。あれはこの国の船か」


俺が尋ねると、アルクもそれに気づき不思議な顔をする。


「さあ……。たぶん、そうじゃないかな。他の国の船が来るなら、王室から発表があるはずだし……」



そう、ほとんど他国との交流のないこの国に、他国から使者が来ることは稀だ。

数年に一度程度はあるようだが、その際は民衆へと広く通知されるのだ。



「魚でも捕ってるとか?それにしてはすごく遠いけど……」



しかし、俺達が見つめているうちに、その船は姿を消した。

やがて日が暮れてきたので、俺達は宿屋へと戻ることにした。




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