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54.集合

休暇2日目、俺達はエド町にいた。



俺とアルクはもちろん、リーンの顔を見に来たのだ。

しかしなぜか、ウィル、ソフィア、そしてユリアンとミーシャまでもが一緒だった。



事の発端は、王都へと戻るユリアンが、わざわざ学校まで出発の挨拶に来たことだった。


相変わらずウィルの研究室に集まっていた俺達に、ユリアンが名残惜しそうに挨拶する。


「私はこれから忙しくなりますから、しばらくお会いできないと思います。皆様、どうぞお元気で……」



今生の別れかのように涙ぐむユリアンの後ろで、ミーシャは何食わぬ顔で笑っている。

そしてユリアンは、俺達に向かって尋ねた。



「アルク様としょこら様は、これからどうなさるのですか?またどちらかへ、旅に出られるのでしょうか……」


「僕達は今日、北の端にあるエド町に行こうと思ってる。知り合いの子に会いに……」


「へえ、エド町かあ!俺、小さい頃に行ったことあるぜ。すげー変わった文化だよな。………いいなあ、俺も行きてえ………」


「え、ならウィルも一緒に行こうよ!ちょっとくらい研究を休んでさ……」



アルクが言うと、ウィルは少し考えた。


「……それもそうだな。脳にも休息は必要だし、それにしょこらの転移魔法があれば、移動時間がなくなる。いいな、一緒に行こうぜ!!」


「わ、わたしも……」


黙って聞いていたソフィアが、焦ったように声を上げる。


「わたしも、行きたい……」



ユリアンはそのやり取りをじっと見つめていた。

そして葛藤するように、体をわなわなと震わせている。


「エ、エド町はこの国一番の観光地ですね。……ミーシャ、私達も視察に行くべきじゃないかしら?」


ユリアンの発言に、全員思わず目を向ける。



「おい。お前、ついさっき忙しくなると言わなかったか」


俺がジトっと見つめると、ユリアンは焦って手をブンブン振る。


「い、いえ!どのみち次は王都の北側の地を訪問予定でしたので、それほど当初の予定から外れる訳では……!」


するとミーシャはやれやれとため息をついて笑った。



「はいはい、分かりましたよ。移動時間を省けるのはこちらとしても都合が良いですし。それに失恋したとはいえアルク様と温泉宿に行きたいでしょうし、そこにいる知り合いの子というのが誰なのかも気になるのでしょう。そうと決まれば皆様、とっとと行きましょう」


「「ええ……」」


アルクとウィルは唖然として、同時に声を発した。




そして俺達は1時間後には、エド町の門前に立っていた。

人目に付かない郊外へと転移し、ここまで歩いて来たのだ。


女王が突然エド町に現れたとなると騒ぎになるので、ユリアンは変装していた。

といっても、いつも金髪の髪が茶色くなっただけだ。



ソフィアは初めてエド町を訪れたようで、目を輝かせて町中を見つめていた。


「すごい。へんな服……。へんなたてもの……」


ソフィアの目には、浴衣も木造の建物も、真新しいようだ。



「すげえな、俺の記憶にある頃より人が多くて発展してる。やっぱそこらの町とは雰囲気が全然違うな。異世界に来たみてえだ……」


ウィルも少し興奮して、町を見回した。



俺達はまず、リーンに会いに兵舎へ向かった。

5人と1匹の大所帯での訪問に、リーンは目を丸くした。



「……お久しぶりです。ずいぶん仲間が増えたんですね」


リーンは相変わらずツンとしている。

しかし俺の姿を見ると、すぐにさっと抱え上げる。そして他の4人に目を向け、ペコリを頭を下げた。



「もうここには来ないのかと思いました」

「え、どうして?」


リーンが言うと、アルクはきょとんとして尋ねる。


「王都へ向かってから、王女様との結婚話でもちきりでしたよ。あ、今は女王になったみたいですけど」

「あ、ああ、そうなんだ……。でも約束したじゃない、また戻ってくるって……」



すると突然、ユリアンがずいっと一歩踏み出した。

そして右手をリーンに向かって差し出す。


「お初にお目にかかります、リーン様。私がこの国の女王、ユリアン・アゼリアです。突然の訪問、どうぞお許しください……」



リーンはポカンと口を開けてユリアンを見る。

ユリアンの横で、ミーシャはまたやれやれと笑っていた。



「……え、女王様?なんでここにいるんですか?」


リーンはユリアンの手を握り返さず、純粋な疑問を投げかける。

ツンとした態度は、女王に対しても変わらない。


「わ、私はこの地の視察に来たのです。ついでにアルク様のご友人がどのような方かを知りたくて……」

「え、暇なんですか?」


リーンが言い放つと、ユリアンはウッと言葉を詰まらせた。

その隣でミーシャ、ウィル、ソフィアが全員吹き出す。



そういえばリーンは正直に物を言う奴だ。

いつかアルクに対しても、「嫌い」「気持ち悪い」と言い放ち、精神的に瀕死の重傷を食らわせたのだ。


「暇なら兵舎を見て行っていいですよ。私はこの人に訓練してもらうんで、邪魔しないでください」


リーンはそう言って、俺を抱えたままさっさと兵舎の訓練所へと向かう。

アルクは急いでその後を追った。




「おいアルク、お前、ここでも人をたぶらかせてたんだな……」


リーンとの訓練を終えて合流すると、ウィルがアルクに向かって言った。

ウィルはガバっとアルクの肩を組み問いかける。



「なあ、やっぱ優しさなのか?俺に足りないのはそれか?」

「な、何言ってるんだよ、ウィル……」

「まあそれが唯一の取り柄じゃないか」

「そんな、しょこらまで!え、というか何の話……」



そうこうしながら、俺達は宿屋に着く。

俺達がいつも滞在している、エド町で一番大きな宿屋だ。


すると宿屋の前では、リーンが立って待っていた。



「リーン様、なぜここに……」


ユリアンが思わず尋ねると、リーンはツンとして言った。


「誘われたから来ただけです」



訓練の後、アルクがリーンも誘っていたのだ。

ちょうど明日は休みらしく、リーンも兵舎での用事を片付けてから来たのだった。



そして俺達は6人と1匹で、宿屋に泊まる事になった。



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