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36.女神の警告

その日の夜、俺は不思議な夢を見る。



はっきりとした夢を見るのは、今回で二度目だ。

以前は四百年前の世界で、俺達がハジメと共に旅をしている時だった。ハジメに魔王の討伐方法を説明した途端、急に世界が消える夢だ。



今回の夢は少し種類が違った。

俺はまた、あの女神の空間にいて、目の前には女神が立っていた。


もしかしたらこれは夢ではなく、実際に女神が俺を呼び出したのかもしれない。



夢の中の女神は、いつもと変わらぬ様子で俺に話しかける。



「久しぶりね!どう、元気にしてる?……これでお別れって言ったくせに、また呼び出しやがってとか思ってるんでしょ!仕方ないじゃない、どうしてもあなたに伝えたいことがあって……」



俺は女神の姿を見て、チッと舌打ちした。


「なんだよ。まさかまた、どっかの世界に飛ばされるんじゃないだろうな」


「そんなことしないわ!これ以上あなた達に苦労はかけない。今回呼び出したのは、完全に私の個人的な判断で……」


「何なんだ。何かあるならさっさと言え」



すると女神は、少し言いにくそうに、両手をぎゅっと組み合わせる。



「私は今でも女神として、ずっとこの世界を見守ってる。そして個人的な好意から、あなた達のことを特によく見ているんだけど……。あの、あなた達のお友達がいるでしょ。ほら、ウィルよ。あの子について話があるの」



女神に好意を抱かれていたとは心外だ。

まあしかし、今回は本当に、魔王やら異世界やらに関する話ではないらしい。



「ウィルがどうしたんだよ」


「あの子、このまま放っておくと、危険だわ。……つまり命が危ない。だから何とかしてあげて。……あなた達がこれ以上、仲間を失うところは、私だって見たくないのよ」



俺はしばらく黙り込む。

なぜウィルの命が危ないのか、全く理解できない。


すると女神はまた話し出す。



「あなたも知ってるでしょう。あの子、転移魔法にすごく興味がある。あなた達と出会ってその熱意は加速して、今では毎日遅くまで研究しているわ。


……あの子、このままではいずれ、本当に転移魔法を完成させる。それも時間を超越する転移魔法をね」



「何でそんな事が分かるんだよ」


「それは……。気づいたでしょ、あの子は頭が良いし、あなた達が時間を遡ったことに感づいている。ハジメという名を聞いた時から、あの子はずっと考えていたのよ。それが過去の勇者の名だと気づいた時に、あの子は全てを理解したわ。あなた達には言っていないけれど」


「しかしそれでも、ウィルが転移魔法を完成させるとは言えないだろ」



女神はゆっくりと頷く。



「ええ。だけどあの子は今、それの完成に向けて猛進している。私達神はね、人間の世界を脅かしうる存在というのを察知できるの。神王様はその危険信号に気が付いているわ。


魔族だったら勇者のあなたに任せればいいけれど、それが人間の場合、自然にこの世界の摂理が働く。神の意思の下、世界は自然に危険な存在を排除しようとするわ」



「おい、あいつは犯罪者じゃないんだぞ。なぜウィルだけが、危険人物だと認定されるんだよ」



「あなたも経験したでしょ、過去の世界を書き換えると、未来が変わってしまう。下手すれば世界そのものが消滅するわ。人間達が見境なく過去へと向かえば、それこそ大変なことになる。


時間転移は完全なる禁術よ。それは神の領域で、人間が手を出すことは許されない。……それもハジメがしたような、自らの魂をいじるだけの禁忌じゃない。世界を滅ぼしかねない最大の禁術よ」



俺はまたチッと舌打ちをした。


「ったく、本当に厄介な世界だな。あいつはただ夢を持って、毎日研究しているだけだ。この世界ではそれすら許されないのかよ!」



「も、もちろんそれ自体は素晴らしいことよ!でもその内容が問題なの!……本来私は、魔王に関すること以外で勇者に口出しすべきじゃない。


だけどあの子がこのまま、自然の摂理に飲み込まれるのをどうしても放っておけないのよ!あの子がというより、これ以上あなた達が悲しい思いをするのがね!


私は神王様の許可なくあなたを呼び出したのよ!これで数か月は減給よ……ほんと嫌んなっちゃう……」



女神はめそめそと下を向いた。

俺ははあっと大きなため息をつく。



「それはどうもな。で、俺に何をしてほしいんだよ」


「だから、あの子の研究を止めさせて。何とか理由をつけて……」


「それは無理だろ。あいつは研究が命だ。それを取り上げたらあいつはただの変態になる」


「そんなこと言わずに、何とか……って、は、はい!すすすすみません!!あの、これはその……」



女神は突然、目に見えない誰かと話し出す。

おそらく神王だろう。




すると俺は突然、現実の世界に引き戻される。


目を開けるとそこは真夜中で、俺は寮の部屋のベッドの上にいる。俺の隣ではアルクが、すやすやと寝息を立てていた。




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