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32.訓練と研究

試験4日前、俺達は授業を終えた後、屋内の実技訓練所にいた。



俺とアルク、ウィル、ソフィアの四人は、ダミー人形の前に立っている。

ソフィアは昨日一晩で、ウィルの魔法陣をすんなりと暗記していた。


「とりあえずやってみるぞ。おいソフィア、魔法陣を展開できるか?」


ウィルがそう言うと、ソフィアは小声で呪文を唱え、手のひらに魔法陣を作り出した。

小さく水色に発光している。


「よし、それをあの的に向けて、いつも通り魔法を発動するんだ」



ソフィアは手をダミー人形にかざす。

すると、魔法陣から緩やかな勢いで、ピュッと水が飛び出した。


「わあ、すごい、水が飛んだよ!やったね、ソフィア!」



アルクが笑顔で言うと、ソフィアも小さく笑った。

ソフィアは最近やっと、控えめな笑顔を作るようになっていた。


するとウィルが横から口を挟む。


「おい前て。今、ソフィアの奴、水魔法の詠唱してたか?」

「ううん、してないよ。……あれ、そういえば最初からそうだったね。僕、無詠唱が当たり前になっちゃって、全然気づかなかった……」


アルクは今更になって、その事実に気が付いたのだ。



しかし、試しにソフィアに詠唱してもらっても、魔法の威力に特に変化はなかった。

ウィルはまた顎に手を当てて考える。


「詠唱しても変化なしか。でも、無詠唱でも発動できるってのは都合が良い。本来は魔法陣を発動させる詠唱と、水魔法の詠唱、二つが必要になるんだ。俺とアルクが模擬戦した時も、俺はすげー早口で詠唱してたんだぜ!

だから魔法陣は全然実戦向きじゃないんだ。詠唱に余計な時間がかかる。だけど無詠唱魔法が使えるなら、話は別だ!」



それからソフィアは何度も、ダミー人形に向かって水魔法を放ち続ける。

そして数十回目にやっと、ダミー人形に水を浴びせかけることができたのだ。



「すごい!やったね、ソフィア!これで実技試験は、希望が見えてきたね!」


アルクがまた興奮して叫ぶ。

実技試験では、3体のダミー人形に連続して、一発で攻撃を的中させれば良いのだ。




次に俺達は別のダミー人形を使う。

それは魔物への攻撃を想定して作られたもので、足のようなものが二本取り付けられており、そこらを縦横無尽に動き回るのだ。


このダミー人形を攻撃できれば、次は校外学習で実際に低級魔物を相手にするのだ。

ソフィア以外の生徒達は皆、すでにその校外学習まで進んでいる。



後から聞いた話だが、俺達が担当していた初等部の連中は、初等部の中でも成長が遅い生徒だったらしい。

俺達が実技訓練に参加したことが刺激となり、試験直前になってやっと校外学習まで追いついたということだった。



とにかくソフィアも、やっと動き回るダミー人形を相手にできる段階まで来たのだ。




「え、えいっ、えいっ……」



ソフィアは必死になって、動き回る人形に狙いを定める。

しかし何度水を発射しても、人形に当てることができない。


「大丈夫、まだ時間はある。焦らないで……」


アルクは、だんだん涙目になるソフィアをなだめた。



結局その日、夕飯を済ませた後もソフィアは、アルクと共に再び訓練所へと向かった。

そして何度も練習を繰り返したのだった。




夕飯の後、アルクとソフィアが訓練所に戻ると言うと、ウィルは俺に向かって言った。


「なあしょこら。悪いがお前は、ちょっと俺に付き合ってくれ」

「どうせまた猫耳忍者になれって言うんだろ」

「あ、ああ、えっと……」

「ちょっと、ウィル!しょこらに変な事したら許さないよ………?」

「しねえよ!てかお前、俺のことを何だと思ってんだよ!」



俺はやれやれとため息をつく。

そして俺とウィルは、研究室へと向かった。




俺が忍者姿になると、ウィルはまた目を輝かせる。


「ああ、何度見ても、本当すげえ変身だ……」

「で、何の用なんだ」


ウィルはしばらくぼーっと俺を見つめていたが、やがて気を取り直して言った。


「ええと、すまん、実は忍者姿はあんまり関係ないんだ……。ただ、しょこらの魔力をちょっと貸してほしいんだ。言っただろ、人間が使える転移魔法陣を作りたいって。だけど実験を繰り返すには、膨大な魔力が必要だ。俺一人だとなかなか進まねえから……」


思っていたより普通の依頼だ。

俺はてっきり、また猫耳をいじられるかと思っていたのだ。


「そんな事なら問題ない。いくらでも貸してやる」


「あ、ありがとな!本当助かるぜ!!……………ああ、でも……………」

「でも、何だよ」



するとウィルは、急にガバっと机の上に突っ伏した。


「でもやっぱ、その姿を隅々まで調べてえ~~~~~!!耳を触りてえ~~~~~!!なあ、ちょっともう一回……………イテッ!!!」



顔を上げたウィルの頬を、俺はパーーーンと猫パンチした。




その頃アルクとソフィアは、訓練所で練習を繰り返していた。

ソフィアはなかなか、動き回る人形を捉えることができない。


しばし休憩して座り込みながら、アルクはソフィアに話しかける。



「ねえ、ソフィア。少し聞いてもいい……?」


ソフィアはアルクを見つめ返し、こくりと頷く。


「あのさ、どうして、魔法を学びたいの……?」



アルクはずっと気になっていたのだ。

生まれつき魔力が弱いソフィアが、周囲に反対されながらも、魔法を学びたいと願う理由が。



しばらく黙り込んだソフィアは、やがて小さな声で言った。



「お兄さまの、ために……」



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