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22.しょこらは怒る

しばらく部屋の中の誰も、声を発さなかった。



するとアルクが後ろから、俺の腕をがしっと掴む。


「しょこら、何言ってるんだよ!そんなこと言ったら、しょこらまで……」



アルクは俺まで処刑されるのではと、気が気ではない様子だ。

ユリアンは驚いて目を見開き、ポカンと口を開けて俺を見つめている。


しかしウィルは、そこまで驚いてはいないようだ。

下を向き、頭を掻きむしっている。



「おい、聞こえたのか。俺は魔族だ。俺のことも処刑するのか」



国王はやっと声を取り戻したように、俺に答える。

言葉に詰まっていたその声は、少ししゃがれている。



「そ、其方の言う魔族とは……。いや、しかし、そんな事が……」


「本当だ。俺の母猫は魔王の従魔だった。魔王討伐の際に俺達が殺した」


「なんと、そのような……!!」



国王は驚愕の眼差しで俺を見つめ返す。

するとアルクが進み出て、俺の前に立ちはだかった。



「あ、あの、国王様。今の話は、本当です。だけど……」


アルクは俺を庇うように、俺の姿を国王から隠す。


「だけど、しょこらは生まれた時からずっと僕と一緒です!一緒に訓練して、旅をして、魔王を討伐したんです!!しょこらがいなかったら、僕、絶対に魔王を倒せませんでした……」



アルクは迷っている。

本当の勇者は俺だということまで、白状しようとしているのだ。


しかし俺は、アルクの肩に手を置く。



「おい、もういい。それ以上言うな」

「で、でも……」



すると後ろから、ウィルも国王に声をかけた。



「あの、えっと。魔族ってのは本当だぞ。い、いや、本当ですよ。詳しくは言えませんけど、魔族の血を持つ者でしか行使できない魔術を、しょこらは使えますし……」



ウィルは、改めて魔法陣を詳しく眺めた時に、気づいていたのだ。

その複雑な図形のほんの一部に、魔族の力のみを受け入れる魔術回路が存在することを。


人間が魔力を流し込めないのは、その回路が存在するからだという。



「だけど、俺はしょこらが好きですよ。危険な存在だなんて一切思わない。実際、魔王を討伐した張本人じゃないですか」


アルクは目を輝かせて、ウィルの助言に感謝の視線を送る。


「そ、そうですよ!しょこらは魔族だけど、僕の大切な家族です。種族が違っても、同じ心を持っているなら、一緒に生きていけるはずです!」



アルクは俺のことを考える。

そして異世界の、レオやレナ、エレーナ、ラファエルやロベルトにも思いを馳せている。



「魔族だから処刑するというのは、間違っています!!」




国王はしばらく、無言で俺達を見つめた。

目を閉じて何かを考え、そしてまたゆっくりと目を開ける。



「それが事実なら、確かに、其方達の言う通りだ。私はもちろん、そこのしょこら殿を処刑しようとは思わん。しかし、ミーシャに関しては別だ。例え我々が許そうと、民衆が彼女を許さない……」


「お前、いい加減にしろよ!その民衆を導くのが、お前の役目だろうが!!」



俺は思わず、国王に向かって怒鳴っていた。

アルクがまたひえっと声を上げる。



「何の手も打たずに早々に諦めてんじゃねえよ!だいたいお前な、いくら派閥争いが嫌だからって、無理矢理何の関係もない勇者を次期国王に仕立て上げる奴がいるかよ!勇者の人権ってもんを考えろ、この老いぼれ!!お前のそんな阿呆なとこがユリアンにも遺伝したんじゃねえのか!!」


「ちょ、しょこら様、あなたまでミーシャのように……」


ユリアンがまた赤面する。


「その通りだろうが!お前もお前だ、自分に酔うのは結構だが、人を巻き込んでんじゃねえ!そこまで父親に貢献したいなら、お前自身が王にでもなったらどうなんだ!!」



俺は最近、色々とイライラしていたので、思い切り発散させてもらった。

フンッと鼻を鳴らし、改めて国王を見る。



「とにかくミーシャを救う方法はお前が考えろ。国王なら何とかできるだろ。以上だ」



俺はくるりと踵を返し、ずかずかと部屋を後にした。

アルクとウィル、ユリアンは、また急いで俺の後を追ってくる。



国王はそんな俺達を、ポカンと口を開けて見送った。




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