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12.契約解除

アルクはそれから3日間、王宮の一室に引きこもり続けた。



俺はその間、ウィルと共に何度か強行突破を試みた。

しかしその度にミーシャや、ミーシャから指示を受けた衛士により妨害されたのだった。



アルクが王宮に攫われてから5日目、俺の堪忍袋の緒は既にブチ切れていた。



「クソ、あの執事も執事だが、アルクの奴も一体何考えてんだ!どうせまた変な妄想してウジウジしてやがるに決まってる、いつまで経ってもガキなんだ」



俺は宿屋の部屋であぐらをかき、尻尾をパーーーンと床に叩きつけていた。

するとウィルがなだめるように声をかける。



「まあまあ、少なくともまだ婚姻はしてねえみてーだし……」

「フン、もう勝手にすりゃいいんだ。念願の引きこもり生活で本望だろうよ!」


俺のイライラが止まらないので、ウィルも少し困り果てている。


「にしてもあの執事、本当に厄介だよな……。なあ、やっぱあの勇者も、変な薬とか盛られてんじゃねえのか?」



俺はそれについて考える。

しかしもし精神操作されているなら、とっくに婚姻届けに署名しているだろう。



「いや、おそらくあいつは自分の意志で出てこないんだ。ガキなんだ」

「そ、そうなのか……?でもさ、これからどうするよ?」



俺は黙り込む。

しばらく考えを巡らせた後、床から立ち上がりウィルに言い放った。


「とにかくまた王宮に行くぞ。付いてこい」





その時アルクの部屋には、ミーシャが訪れていた。

ニコッと笑ってソファの向かいに腰かけ、婚姻届けの紙をテーブルの上に広げている。



アルクは空虚な瞳で、その紙を見つめた。



「さて、そろそろ心は決まりましたか?今日から3日後、正式に王女とあなたの婚約を世間に向けて発表します。それまでにきちんと署名してくださいね。今後についてご自分でもよく考えてください」



ミーシャはそう言い残して席を立つ。

部屋に残った王女は、その日もアルクの隣に腰かけていた。



「あの、アルク様……」



アルクが目を向けると、王女が縋るように、アルクの目を覗き込んだ。



「アルク様、どうか、私の気持ちを誤解なさらないでください。最初はもちろん、お父様のお役に立ちたい一心で、あのような馬鹿な真似をいたしましたが……。


今では私は、心からアルク様をお支えしたいと思っています。ほんの数日間見ていただけですが、私にはよく分かります。貴方は心優しくて、暖かで、そして私と同じく孤独な人だということが……」



王女は今度は手を握らず、アルクの首にぎゅっと抱き着いた。



「お願いします、そんな悲しい目をしないでください。私が、ずっと一緒にいますから……」



王女は自分の大胆さに赤面していた。

しかしその顔は、アルクからは見えなかった。





王女の部屋を出たミーシャは、王宮の庭へと向かっていた。

俺達が何度目かの侵入を試みるところを、窓の中から見ていたのだ。



俺はウィルを背中に担いだまま、思いっきりジャンプして王宮の壁を飛び越えた。

軽やかにスタっと着地すると、ウィルが感嘆の声を上げる。



「うわっ、すげえな!大したジャンプ力だ……それに……」


ウィルは俺に背負われて、目の前にある猫耳を見て思わず顔を緩めていた。

俺はその雰囲気を察して、ウィルを背負っていた手から力を抜いた。



「うわっ!!イッテええぇ!な、何すんだよお……」



急にビターーンと地面に落ちたウィルは抗議の声を上げる。

それでもまだ、その顔はニヤついていた。



そしてそこへ、ミーシャが現れて立ちはだかる。



「おや、これは何度目の不法侵入でしょう。今度ばかりは見過ごす訳には参りませんね。お二人とも、正式に処罰させていただきますよ」



ニコッと笑うミーシャに対して、俺は言い放つ。



「これはこちらのせりふだ。法に触れているのは他でもない、お前と王女の方だろう。事実をバラされたくなけりゃ、大人しくアルクの奴を返してもらおうか」



するとミーシャの顔から、笑顔が僅かに消えた。

まだ気持ち口角を上げてはいるが、その目は冷たい光を帯びる。



「あら、ご自分が何を言っているのかお分かりですか?虚勢を張るのはおやめください。私は法に触れることなどしておりません」


「そうか?なら生誕祭の日、アルクにした事についても、違法ではなかったと言えるのか?」



するとミーシャは、またニコッと笑みを作る。



「あら、王女に従われたのは、アルク様の意志ですよ。私共は何もしておりません。事実、証拠も何もないではありませんか」



俺はしばらくミーシャを見つめる。

そして、ハアッとため息をついた。



「………分かった。正直俺は、もう疲れた。これ以上あいつの救出に時間をかけるのは御免だ。」


そう言ってくるりと踵を返す。


「婚姻でも何でも、好きにしてくれ」



ミーシャは少し意外の感に打たれたようだ。

しかし笑顔を崩さず、俺に向かって手を振った。


「やっと諦めていただけたようで、何よりです。やはり頭の良い方は、話が通じやすいですね」



俺はピタッと足を止め、再度ミーシャの方を振り返る。


「おい。それよりこの腕輪を外せ。一生こんなもの付けられちゃかなわん。……腕輪なんかなくても、俺が宮殿に侵入するのは不可能だ。念話も使わねえよ」



しかしミーシャは首を横に振る。



「なぜそのような事が信じられるのです?あなたの腕輪を外すのは、婚姻が成立してからですよ」


「なら腕輪を外した瞬間、あいつとの従魔契約を解除してやるよ。片方が解除の意志を示せば契約は破棄される。俺に二言はない。もう面倒なんだ。婚姻なんて待ってられない。俺は王都を出て行く」



ミーシャは笑顔を引っ込め、じっと俺を観察した。

俺は臆することなく、ミーシャをじっと見つめ返す。



「……あなたは面白い人ですね。何を考えているのか計りかねる。しかし、いいでしょう。そこまで言うのなら、契約解除の瞬間を見せてもらいましょうか」



ミーシャはそう言って、俺の腕輪に手をかける。

すると腕輪はいとも簡単に壊れ、カチンと音を立てて地面に落ちた。



俺は腕輪の外れた右手首をブンブン振りながら言う。


「やれやれ。やっと解放されるぜ。」


そして右の手のひらを上に向け、小さく呪文を唱える。

すると俺の手の上に、ピンクと紫の間の色の魔法陣が展開される。




「「しょこらとアルクの従魔契約が、解除されました。」」




その声は、俺とアルクの頭の中に響き渡った。




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