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112.緩やかな旅

ラファエルとロベルトとの別れは、非常にあっさりしたものだった。



最も、この二人はいつでもこちらの世界に来られるのだから当然だ。


「じゃあね。また気が向いたら遊びに来るよ」


そう言い残し、俺達を送り届けたラファエルとロベルトは、一瞬で再び姿を消した。



俺達が戻って来たのは、やはり森の中だった。

しかし時刻は異世界とは逆なので、辺りは真っ暗だ。


俺は転移魔法を使い、ウィルとソフィアを魔術学校の寮へと送り届ける。


この時間から宿屋を取るのも面倒なので、俺達もまた寮の部屋に泊まらせてもらった。




翌日、皆で食堂で朝食を食べながら、ウィルがため息をつく。


「はあ………。二週間も休んだんだ、今日からすげー忙しくなるぞ。本当なら今すぐジークのとこに行って、ロベルトの魔法陣について語り合いたいんだが………」


そう言って、ウィルは再び深いため息をついた。



「大変だね、ウィル。……僕らも、また授業を手伝おうか?」


アルクが気の毒そうに尋ねると、ウィルは首を振る。


「いや、そう何度も迷惑はかけらんねえ。今んとこ大丈夫だ、ありがとな。もしまた困ったら相談させてくれ。………はあ、しかし、早く研究に専念してえ~~~………」



嘆くウィルの隣で、ソフィアも黙って座っている。

食事にはほとんど手を付けていない。



「ソフィア、大丈夫?体調でも悪いとか………」


アルクが尋ねると、ソフィアはゆっくりと首を振る。


「また、お友達にあいたい……」



どうやら既に、異世界に戻りたくなっているようだ。

同年代の友人ができたことが、余程嬉しかったらしい。



「そうだね。またいつか、絶対に会いに行けるよ。……それに今のソフィアなら、この世界でもきっと良い友達ができると思うよ」


アルクの言葉を聞いて、ソフィアはゆっくり目を上げる。

そして小さくこくりと頷いた。





朝食を終えると、俺達はウィルとソフィアと別れる。


そして久しぶりにコクヨウを呼び出し、その上に飛び乗った。



「お前さん達、いつぶりだったかのう。えらい久しぶりじゃな」


子供のくせにジジイのようなコクヨウは、それでも俺達のことを覚えている。

俺達は空へと舞い上がり、次の目的地について話し合った。



「ねえしょこら。もう一度さ、色んな場所を見て回ろうよ。ほら、僕らの家を作る場所を探そうって言ってたでしょ。ユリアンの依頼で各地に魔道具を設置した時は、あまりちゃんと見られなかったから……」


「まあそうだな。依頼もないし、しばらくゆっくり見て回るか」




思い返せば俺達は、常に何かの事件に巻き込まれている。


ダンジョンに落ちたかと思えば、バルダン帝国との戦いに巻き込まれ、さらに異世界でも事件に遭遇した。

こう戦い続きでは気が休まったもんじゃない。


特別な依頼がない限り、しばらく休んだって文句は言われないだろう。



そう思っていた矢先、俺の頭の中に突然念話が響く。

これまで存在をすっかり忘れていた奴からの念話だった。



『おいしょこら!!しょこらしょこら!!ああ、やっと繋がった!!ここ一週間ほどずっと話しかけていたんだぞ!!てっきり私とのテイムを解除したのかと……』



それはバルダン帝国の、あのポンコツのロッセルだった。

銀髪に赤い瞳を持つ、自称イケメンの男だ。



『何だよ。不必要に念話を使うなと言っただろ』

『私に取っては必要なのだ!!またしょこらと話がしたくて、毎日うずうずしていたのだぞ!!帰国してからしょこらの方からは一向に連絡をくれないではないか……』

『用件はそれだけか』

『あ、ああ、そうだが………』

『なら切るぞ。俺は今疲れてるんだ』



俺はそう言って念話を切った。

全く面倒な奴だ。




気を取り直して、俺達はコクヨウで飛び続ける。


たまに地上に降り立つと周囲の環境を観察し、住むのに適した場所を探した。




「なんだか、こうやってゆっくり旅をするの久しぶりだね。ずっとこんな感じだったらいいのに……」


その日俺達は、久々に野営をした。


転移魔法でどこかの宿へ行くことはできるが、野営の感覚も覚えておく必要がある。

今後いつまた何かに巻き込まれ、宿に泊まれないような事態があるかも分からないのだ。



テントの前に小さな焚火を作り、相変わらず俺を腕に抱えて、アルクは火を見つめていた。


そのうち俺の体に顔を埋め、大きく息を吸い込み出す。



「ああ、いい匂い………」

「おい。いつまでそうしてるんだ」

「いいじゃない、もうちょっと………」



思う存分深呼吸したアルクは、やっとその顔を離した。

それでもまだ俺を腕に抱え続けている。



「しょこら、今までに見て回った町で、住みたい場所はあった?」

「さあな。どこも似たようなもんだ。しかし正直、町中に住むのは面倒だな。人目に付かない場所の方がいいんじゃないか」

「そうだね。僕もそう思う。どちらかと言うと、静かな郊外に住みたいかな」



アルクも俺も、一応この世界では結構な知名度がある。

町中に勇者の家があると知れ渡れば、物好きな奴らが集まって来るかも知れない。



焚火が消えると、俺達はテントの中に引っ込む。



明日もまた別の場所を見て回ろうと言いながら、その日は眠りについた。



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