大きな影が落ち、そして
小鳥遊家
僕…優斗
9歳 長男 ぼーっとした性格
お姉ちゃん …朱里
12歳 長女 明るく元気 友達が多い
お母さん…由香里
36歳 専業主婦 優しいが怒ると怖い
お父さん…湊斗
38歳 サラリーマン 家族にとても甘く怒ったお母さんをなだめるのはいつもお父さん
お姉ちゃんの死から数日が経ち、家はますます静かになっていった。笑顔が消え、暗い影が家を覆い尽くしたかのようだった。お母さんの笑顔はどこか無理をしているようで、お父さんも元気を失っていった。そして、僕は外に出ることができなくなってしまっていた。
外に出ようと思うとあの日の…事故のシーンが頭に浮かび足がすくんでしまうからだ。そんな僕に両親は無理に外に出なくても良いと言ってくれた。
そうして部屋の中でひとりぼっちで過ごす日々が続いた。眠ると嫌な夢を見てしまい人と顔を合わせたくなかったからだ。家族とも話すことが減っていってしまった…
その夢はお母さん達はなんも悪くないのに、なんとなく顔を合わせづらくなっていってしまった。
夢は、お姉ちゃんがいなくなってから少しして葬式が行われた日のものだった。周りからの可哀想なものを見る目、そして耳に入ってしまったあの言葉…
「なんで朱里ちゃんが…優斗くんなら良かったのに!」それを言ったのはお姉ちゃんの友達でとても仲の良かった子だ。
その時の言葉が頭を離れない…
本当になんで僕じゃなかったんだ…
そんな生活を続けているうちに両親は立ち直り始めていた。
外に出なくなった僕は知らなかったが、あの事故が起きた後、近辺に住む保護者の方が通学路を見守るようになったり、沢山の人に助けられたらしい。
両親は私を置いて立ち直っていく、僕は自分だけが取り残されたように感じさらに気を重くした。
そんな気を紛らわすために、部屋にあった紙と鉛筆を手に取った。別に絵を描くことが好きだった訳では無いが、すぐ目に入ったのが大きかっただろう。手に持った鉛筆で何か描こうとしたが、何も浮かばなかった…辞めようかと思ったが、ふと家族のことを描いてみようと思った。
思い出すのは明るかった頃の家族の光景。
夢中になって描いたその絵は別に上手かったわけでもなく、描きなれてないことが見て取れるものではあったが、お母さんにとても見せたくなった。
僕からお母さんに話しかけるのはいつぶりだっただろうか、突然話しかけてきた僕にお母さんは驚いていたが、とても嬉しそうにどうしたのか聞いてくれた。
僕はさっき描いた絵をお母さんに見せた。やっぱり上手くはなかったので、お母さんは指を刺しにながらこれは?と聞いてくる。
「これはお父さん、こっちがお母さんで、これが僕、それでこれがお姉ちゃん」と僕も指を刺しにながら答えた。
お母さんは「そっか、私たちのことを描いてくれたのねありがとう…お母さんやお父さんはもちろん、お姉ちゃんも嬉しいと思うなー」そう少し潤んだ目をしたお母さんが心から笑ってくれた気がした。
それがとても嬉しくて、また絵を描くために部屋に戻った。その時の顔はとても頬の緩んだ顔をしていたと思う。