27.女神降臨
「よくぞここまで参った。ルチアよ」
突然現れたそのお方は、直視できない神々しさでしたわ。悪役令嬢のわたくしですら、わかりましたわ。この世界の女神でいらっしゃる、と。
皆様が苦しそうにひざまずきます。メルテウス様だけが表情を変えません。しかし、跪いている点は港一緒ですわ。身体が強制的に動かされるのです。
「ルチア。お前には、あきれた」
「……なぜ?」
そんな場で一人、ひょうひょうと立っていらっしゃるルチア様。彼女こそ聖女なのだと再認識させられましたわ。
「逆ハールートを選び、攻略対象者を攻略するかと思ったら、なにもしないではないか。あろうことか、悪役令嬢の配下に入っている」
「配下じゃない」
「まあいい。この場で強制をかけさせてもらおう。もちろん、ルチア。お前にも」
女神様がそう言って、手をかざした瞬間、わたくしはルチア様が憎くてたまらなくなりましたわ。あんなにも親しくしていたはずのルチア様。
その様子に満足げに女神様は笑い、消えていきました。
その瞬間、ルチア様は意識を失い、そんなルチア様にマサットウ公爵令息様が駆け寄ります。それに釣られたかのように、殿下やアル先生、攻略対象者たちがルチア様の元へと駆け寄りました。
「ルチア様、大丈夫でしょうか?」
「僕のルチア嬢」
「ルチア様、自分がお支えいたします」
「なんなんだ、これは」
「お兄様。お兄様はなにも変わらないのですか?」
わたくしは、ルチア様に攻撃を加えてしまいそうな自分を律して、平然となさっているお兄様に問いかけます。
「あぁ。ナリアンヌ、大丈夫か? すごい汗だ」
「大丈夫ですわ、お兄様……」
「ナリアンヌ」
「……メルテウス様?」
顔をしかめたメルテウス様がこちらに歩み寄っていらっしゃいます。
「ナリアンヌに、何をする気だ?」
わたくしとメルテウス様の間に、お兄様が立ちはだかります。
「……ナリアンヌ、大丈夫かい? その感情が少しマシになるように、魔法をかけてあげるよ」
そう言って、メルテウス様がわたくしに向かって魔法を放ちました。
「……楽になりましたわ、憎しみが押さえられました。ありがとうございます、メルテウス様」
「役に立てて、よかったよ。ナリアンヌ」
「……魔法使い殿は平気なのか?」
「少し、気分が悪いけど大したことはないよ……。とりあえず、戻ろうか」




