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世界樹転生─目的は異世界支配とビキニアーマー開発─  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
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若き有翼獅子

 途中、ボルノ将軍がコルレニオス将軍に話しかける。


「別動隊は我々も出すべきでしょうか」


 おそるおそる話しかけるボルノに、歴戦の勇である老将軍は無表情に答える。


「我々は本隊であるガリアニア軍の応援として参加しているのだ、余計なことはしない方がいいでしょう」


「……そうですな」


 ボルノ将軍は一礼すると自陣へと向う。それを見送ったあと、老将軍はルシアのところに戻ろうとしたが、足を止め、自陣へと歩を進めた。


※ ※ ※ ※ ※


「御帰りなさいませ将軍。何かありましたか」


 副官とその従者が用意した茶を席についた後に口にしたが、美味いけど妻の薬草茶の方が馴染むなと感じる。


「うむ、実はな──」


 コルレニオスは先程の出来事を話す。従兵はすでに下がっていたが、陣幕の外で聞き耳を立ててる。


「──そうですか、それでガリアニアの一部が戻っていったのですね。このことは話しても良いのですか」


「ああ、総司令官もそのつもりで話したのだろう。動揺が拡がる前に伝えてくれ」


 副官は敬礼してさがると、従兵も素知らぬ顔で後をついていく。

 独りきりになった老将軍は無表情のまま美味しい茶を飲み干し、思いをめぐらせる。


 ──カーキ=ツバタ王国で起きた異変に対応するために部隊を向かわせる。それ自体はおかしくないのだが、まるでそうなるのを知っていたかのような対応なのが気になる。知っていたのか? ならばどうやって? ……ガリアニアは我がリュキアニアの北にあり内陸部にある。我が国に無い特徴といえばピザトラ大砂漠周りにある街道の入り口があり、そのため商隊(キャラバン)が行き来する拠点ともいえる宿場街があるということ……、商人にとって情報は武人にとって武器と同じ、そこから情報を得たか──


 コルレニオスは目を瞑る。

 老練で堅実なコルレニオスはほとんど感情を表に出さない。若い頃は表情豊であったが、将となって部下を死地に送りだす立場になってから、その責任の重さに感情を顔に出さないようになり、晩年となった今はそれを知る者が少なくなり、昔から小難しい顔をしていると思われている。


 ──いや、違うな。あの若き総司令官はその程度ではない。何度も戦ったから解る、あの若者はもっと上をいく器だ。

 あの若さで負けそうになるとさっさと撤退する潔さ、タダでは負けない闘志、何度でも挑んでくる粘り強さ、自らの足りない部分を認めて補う柔軟性、そして……まだまだ伸びしろがある可能性を秘めている。ならばだ、そんな若者ならどう作戦を練る──


 コルレニオスはこの遠征が始まった頃を思い出す。


 ──カーキ=ツバタ王国への遠征の要請があったのは30日ほど前、それから隊を編成してガリアニアでカリステギア軍と合流し、進軍。……いやまて30日前じゃない、戦というものはもっと前から用意が必要、だいたい100日ほどかかるものだ。なぜなら最初は相手との交渉からはじまり、次に交渉を有利にする為、情報戦となる。それでも解決しなければ武力行使するぞと威嚇をする。この時点で軍人は用意をはじめる。そして交渉決裂で戦となるのだ。つまり──


「あの若者はすでにある程度の情報をすでに手に入れている。商隊から? いや違う。商隊のふりした諜報部隊からだろう、その方が確実だ。そしてカーキ=ツバタ王国を守るという口実のために、北のノマドとかいう部族にわざと襲わせた、だから対応が早かった……」


 コルレニオスはこの考えは当たっていると思った。が、なんの証拠も確証もない、確かめようがないのだ。

 おそらくルシアにこの考えを話したところで、微笑みながら聞き流されてしまうだけだろう。そこまで考えたのでコルレニオスはここで考えるのをやめたのだった。


「こんな搦め手まで使うとは、あの若者はどこまで成長するのだろうか。まるで空を舞う獅子のようだ。若き有翼獅子(ヤング・グリフォン)だな」


 この若き有翼獅子がどこまで成長するかを心の中の何処かで楽しみにしている自分に気づき、コルレニオスの頬がかすかに緩んだのであった。


※ ※ ※ ※ ※


 ヨツジに小さな森を造り、避難民の受け入れ準備ができたのはお昼少し前で、帝国軍から決闘を申し込まれているとイツハから連絡があったオレは、すぐさま[世界樹の森]に戻り南側前線壁に来ると、そこではヨツハ、イツハ、ムツハに抑えられているアディの姿があった。


──離しなさい、あの酔っぱらい、ギタギタにしてやるんだから、離しなさいってーの、お母さんの言うことをききなさい──


──アカンてお母ん、殺してはアカンとお父んに言われてまんがな──


 ムツハのエセ関西弁は緊張感が無くなるな。比較的賢いイツハに何がどうなったのか訊く。


──少し前にひとりだけ境界線を越えてきて、ずっと決闘をしろと叫んでいるんです。アディお母さんがその挑発にのって相手するってきかないんですの──


 カメラツタとマイクツタを使って、ソイツを見つけるとたしかに叫んでいた。


「おおぃ、まだ出てこんのかぁ。我が名はライナー。ライナー・ヨッパ―。大物戦斧使い(ビッグ・トマホーク)のライナーだーーーーーー!! 伐り倒してやるから出てこい木偶の棒ーーーーー!!」


……なんか面倒くさいヤツっぽいな。

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