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世界樹転生─目的は異世界支配とビキニアーマー開発─  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
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ルシア動く

 ガリアニア陣地においては、それはそれは手際よく大会の準備がととのった。というのも兵士の中に家業が興行を生業とした者がいたからだ。


 参加者は1日分の給金を出し、くじを引いて左右に別れて呼ばれるまで待つ。

 そして呼ばれた者同士で対決、武器は木剣で続行不能か負けを認めることで決着。

 当人が望むなら連戦してもよし。ただし5人までとする。


 大雑把にこの条件ではじまった[最強兵決定戦]は、暇を持て余した兵士の観覧と、裏で行われている賭博とで盛りあがった。


「本来なら強さごとに賭け率を変えるんだが、そこまでは間に合わなかったな」


 このイベントを催した一部のカリステギア兵士達は、裏で賭け行為もしていた。

 あまりおおやけでは出来ないから小規模だが、[最強兵決定戦]に参加しない連中が他でも勝手に賭けの対象にして、そこらかしこでも行われているようだった。


 この状況を副官付き従兵は、にやにやしながら遠くから見ていた。


「さって、これで強者を集めてから煽って精霊に一騎討ちを申し込むようにすれば、世界樹というか木製憑依型人形(ドール)の性能が炙り出せるな」


 そんな事を呟いていると、背後から気配を殺して別の従兵が音もなくやってくる。


「おい、姐御から連絡だ。予定が変わるかもしれんと」


「どういうことだ」


 顔を向けず、小声で訊き返す。


「ガリアニア陣地が騒がしい。どうも撤退の動きがあるようだ」


「撤退だと、どうして」


「わからぬ。探ってくるから気に留めといてくれ」


「わかった」


※ ※ ※ ※ ※


 その少し前、ルシア・ガリニア・ファスティトカロン総司令官は物見より待ち望んだ報告を受けていた。


「かねてより言われていました森の向こうからの狼煙を確認しました」


「きたか。よし、我が隊1000人を旧街道よりカーキ・ツバタへ向かわせろ。軍監殿に咎められても無視して行くように。総司令官からの絶対命令だと言えばいい。リキニウス大隊長にはすでに理由は伝えてある」


 物見は陣幕を出てリキニウス大隊長のところに向かい、ルシアは自身の目で確かめようと物見台へと向かう。

 5m程の高さに組まれた物見台に登ると3人入るのがぎりぎりの台から見張りの指さす方を見る。[世界樹の森]より遥か北に狼煙のようなものが見える。


「あの辺りは何がある」


ルシアの問いに見張りが答える。


「カーキ・ツバタ王国の領地で街道沿いにある[はじまりの村]というのがあります」


「あの距離から見えるということは……」


「おそらく村すべてを燃やしているかと」


 一軒家燃やすだけで事足りるだろうに、村すべてを燃やしたらしい。


「どこの部族なんだろうか」


 ルシアはそこまでは分からなかった。


※ ※ ※ ※ ※


 リキニウス大隊長率いる1000人部隊が整然とそして静かに速やかに南下していく。

 それを見たアントニウス軍監は顔を真赤にしてルシアのいる陣幕に飛び込んできた。


「司令官、あの隊の動きはなんだ。聞いてはおらぬぞ」


 小心者は自分の預かり知らぬ事が起きると慌てふためく。ルシアはそれを見て身分と人格は比例しないなとため息をついた。


「落ちついてください軍監殿。たしかに伝えなかったのは謝りますが、事は急を要します。あくまでも司令官の責任として命令しました」


「どういうことだね」


「外に出ましょう」


 アントニウス軍監を連れて物見台に行く途中、コルレニオス将軍とボルノ将軍と合流し、事態の説明をすることになった。

 物見台から狼煙を説明するつもりだったが、すでに地上からも見えるほどの大きさになっていたので、ルシアはその場で3人に説明する。


「御覧のように森の向こうに異変が生じてます。部下に訊くところによると、あそこには[はじまりの村]というカーキ=ツバタ王国の領地かあるそうです」


「すごい煙だな。あれではまるで村ひとつ分が燃えているのではないか」


 コルレニオス将軍の言葉に、ボルノ将軍も同意する。


「仰る通りです。我々はカーキ=ツバタ王国の要請で遠征に来ました。それは北からの脅威に備えるためです。しかし[世界樹の精霊]とやらに阻まれた為どうやら間に合わなかったようです」


 そこまてルシアは3人に向かって話すと、今度はアントニウス軍監だけにむかって話す。


「[世界樹の森]から向かうは本国からの要請ですのでこのまま続けますが、それでカーキ=ツバタに被害がでては意味がありません。それゆえ異常事態が起きたときにすぐさま対応できる部隊を準備していました。彼等はいったん外周り街道まで戻り、そこからカーキ=ツバタ王国へと向かいます」


「それならそうと何故言わない」


「いま、対峙しているのは、精霊という得体の知れない相手、だからです。どこから此方の動向を知られるか分かりませんでしたからリキニウス大隊長と私だけの秘密の作戦としたのです」


 ルシアの毅然とした態度にアントニウス軍監は言い返せず、「このことは報告するからな」という捨て台詞を残して憤慨しながら戻っていった。


「両将軍にも黙っていたことは謝罪します。どうかお赦しを」


 ルシアに頭を下げられて、コルレニオス将軍もボルノ将軍も責めはせず、あらたな命令があるまで予定通り待機すると言い、陣地へと戻っていった。

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