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世界樹転生─目的は異世界支配とビキニアーマー開発─  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
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最強兵決定戦

 ──時は夜明けまでにさかのぼる。

 帝国軍の陣地では見張りがうんざりする光景を見ていた。


「おいおいまた草が生えやがったぜ。また無駄骨を折るのかよ」


「ま、今日はやらないと通達は来ているからな。草刈りをしなくてすむぜ」


「まったく、何しに来てるんだ俺たちは。話じゃ女ども相手に攻めるはずだっのによ。ずっと草刈りだぜ、やってられねぇよ」


「まったくだな」


 見張りの愚痴は兵士たちの愚痴でもある。各陣地でも同じような不満があがっていた。

 カリステギア軍の正規兵達も朝食のあとを、今日一日をどう過ごすか話している。


「やれやれ草刈りをしなくてもいいとはいえ、何もしないというのはな」


「配給を賭けてサイコロ(ダイス)でも振るか、カードでもいいぜ」


「よせよせ、若い総司令官はそういうのを嫌ってるらしいから、バレると損するぜ」


「バレなきゃいいんだよ」


「──もっといいやり方がありますよ」


 兵士たちの会話に割って入ったのは、見たことのある従兵の少年だった。


「お前はリュキアニア副官付きの……。今の話、聞かなかっただろうな」


「聞こえたから口を挟んだんですけどね」


「あれはただの冗談だ、雑談だ、本気にするなよ。──だいたいなんでカリステギアの陣地にいるんだ」


リュキアニア(ウチ)も暇をもてあましてまして。他所の陣地を見学しようかと。いや〜、カリステギアも一緒ですね、どう暇をつぶそうかとして似たようなことを考えてますよ」


「はは、そっちも一緒か。しかし老将コルレニオス・マイヨル将軍も堅物だから、そういうのを許さないだろ」


「ええまあ。しかも正規兵以外の雑兵とか戦士が多いので、それを抑えるのに苦労してますよ」


「ははは、大所帯は大変だな。ウチも似たようなものだ、部隊のあたま数を揃えるために雇われ兵が多くいるからな」


「さらにこの変な遠征は手柄のたてようが無いと嘆いてますよ、ずっと草刈りばかりで敵兵を倒すことができないって」


 正規兵は昇進のためだが、雇われ兵は報奨金のために戦う。草刈りでは名のある敵兵を倒してそれらを得る事ができない。


「だろうな。大きな声では言えないがウチも似たようなものだ」


「途中、ガリアニアの連中とも話して来ましたが、同じでしたよ。ですからね、そういった雇われ兵同士で戦わせて誰が一番強いか競わせてみたらどうでしょう」


「そんなことしてどうするんだ」


「お耳を」


 そこに居た兵士たちは少年従兵に集まり、内緒話を聞く。そしてなるほどと感心して行動に出た。


※ ※ ※ ※ ※


「なに、兵士達が騒いでいるだと」


 朝食をすまし、妻特製の薬草を煮出した茶を飲みながら、老将コルレニオス将軍が副官からの報告に無表情にこたえる。


「兵士といってもおもに雇い兵達ですが、自分たちは草刈りに来たわけではない、戦いに来たのにこれでは手柄のたてようがない。なので競い合ってもっとも強い者に多めに雇い金をはずんでくれと。要は報奨金の無心のようです」


「ふむ。それだけか、具体的にはなんと」


「我こそはと名乗りあげた者だけが参加、互いに参加費を払い勝ったほうが取る、最終的に勝ち残った者に報奨金をとのことです」


「ずいぶんと出来上がった話だな。……それはリュキアニア(ウチ)だけか」


「いえ、すでにカリステギア陣地において行われているようです。それが伝わってきたらしいです」


 軽く顔をしかめ、コルレニオスは黙考する。


(カリステギアは正規兵が少ない、三割近くが雇われ兵だから不満を抑えるためにやったのだろう……。ではウチはどうか? ほとんど正規兵なのだが、半分は魔法使い(ウイザード)どもだ、開催すれば奴等も参加すると言い出しかねない。

 そして万が一奴等が勝ち残れば、ヤラン・レーヤクの助命嘆願する可能性がある。なにしろ魔法使いどもの師匠であり隊長だからな。

 戦犯の可能性が浮き出てきたヤラン・レーヤクを無罪にするわけにはいかぬ。となると……)


「カリステギアは魔法使いどもも参加しているのか」


「いえ……、そこまでは確認しておりません」


「ふむ、……ならば正規兵以外ならカリステギアのものに参加を黙認としよう。それと総司令官にその旨を──そうだな、副官、貴官が伝えてくれ」


「自分がですか──、いえ、承りました」


 敬礼をすると副官は下がりガリアニア陣地へと向かい、コルレニオス将軍は冷めた茶を飲み少しにがいなと感じた。


※ ※ ※ ※ ※


 ガリアニア陣地においても少数ではあるが雇われ兵が騒いでいることを、ルシア・ガリニア・ファスティトカロン総司令官は報告を受けていた。

 そこにリュキアニアの副官がコルレニオス将軍の意向を伝えに来たので(あの老将が黙認したか……ならばそれに倣うことにするか)と考え、副官には承ったと伝え、自軍の隊長達にも黙認すると伝える。


 かくして帝国軍のガリアニア陣地において、[最強兵決定戦]が催すことになったのである。

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