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世界樹転生 異世界支配とビキニアーマー開発史  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
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誘惑と宝珠

※ ※ ※ ※ ※


 [世界樹の森]に戻ると、まずはアディ達による夜襲部隊の防戦を見に行く。

 月明かりのもと、刈り取られてところどころではあるが整然と焼け焦げた草原の中、夜襲部隊がやってくる。

 それらをヨツハ、イツハ、ムツハとそれぞれのベース隊が[グリーン・ウォール]に横一列に並び相手にしている。


 ドライアドの[誘惑(テンプテーション)]は樹木より媚薬風味のフェロモンを出し、男を夢の中へと誘う。そして精気(エナジー)を吸い取るのだが、その際の男たちは理想のシチュエーションと相手を夢想する。

 残念ながらそれらを見ることはできないが、羽化登仙という表情から、それはそれは楽しい思いをしているのだろうと想像できる。


 そして吸い取られた兵士は、ふらふらと歩きながら陣地へと戻っていく。彼らを見た陣地の兵士達は、果たして恐怖を感じるのか、それとも羨ましく感じるのだろうか。


──アディ、あんな感じでいいぞ。──


──うん。で、このあとどうするの?──


──奪った精気(エナジー)で夜明け前くらいに草原を復元してやれ。オレはペッターのところに行く──


※ ※ ※ ※ ※


 あとをアディに任せ、世界樹庭園(マイガーデン)の地下空洞に来ると、ペッターはまだ起きていた。


──ペッター、まだ起きていたのか──


「戻ったかクッキー、ちょっと躯体に憑依()ってくれ」


言われたとおり台座に置かれている|男性型世界樹製製躯体四号《マリオネット4》に憑依してから起き上がりそばによる。


 ペッターの前にある作業台には木製の防具類が置かれていた。それらはどれも装飾彫りされていて、丸く削られている。


「ペッター、これは」


「クッキー用のビキニアーマーの試作品だ。あとはこれに宝珠(オーブ)を取り付ければ一応の完成なんだが」


そう言いながら作業台の端にある桃くらいの大きさの石を取り、オレに渡す。

 赤黒い巨大なビー玉と言うべきか、これが宝珠(オーブ)というものか。


「ソイツはまだ宝珠じゃない。ただの魔鉱石だ。マナを大量に含んだ鉱石だ」


「これをどうすれば宝珠になるんだ」


「魔法使いのヤツ等は自分のマナと馴染ませることで、自分用の宝珠にするんだ。美聖女戦士のビキニアーマーの宝珠は女神フレイヤの神霊力(スピリッツ)で馴染ませてあるんだろうな」


「ということは、オレの場合は精霊力(ソウル)を馴染ませるということか」


 そういうことだと言うと、ペッターはなぜか部屋のスミに行き身を縮ませる。


「やってみてくれ」


「あ、ああ」


 左手に魔鉱石を持ち、右手をかざし、マナを精霊力に変換させる──。


バキッ!!!!


 魔鉱石が砕け散り、勢いよく四散、爆散する。


「おわぁ?!」


「やっぱり砕けたか」


「ペッター、こうなると分かってたんなら、先に言えよ」


「いやまあ、ひょっとしたら成功するかもしれなかったからな」


 驚いて文句を言うオレをよそに、砕けた魔鉱石を拾い集め、それらをしげしげと見ながら他人事のように言う。


「ま、それよりここを見てくれ。変換には成功しているぞ」


 魔鉱石の破片のひとつを見ると、赤黒いところが緑黒くなっているところがあった。


「どういうことだ」


「世界樹であるクッキーの精霊力は濃くて強いんだろうな。だから変換の……何ていうか勢いみたいなものが激しくて耐えられなかったんだろう」


「ということは……変換の速度を抑えればいいということか」


 そのことを踏まえて、別の魔鉱石でやってみる。

 さっきのはいつもの、アディがやってるようにしてみたが、今度はゆっくり基本動作を確認するように、蛇口を何気なく開けるではなくポタポタと出すような感じで変換させていくと、赤黒い魔鉱石が少しずつ緑黒く変わっていく。


「いけそうなら少しずつ速くしてみてくれ。もちろんそれを覚えておけよ」


「へいへい」


 その後も何回か失敗したが(魔鉱石も木目のようにクセがあり、石ごとに変換速度を調整しなくてはならなかったから)ようやく平均値の速度を突き止め、それをペッターのお気に入りになっている[菌糸演算コンピュータ]に記録。今後は新たに作った[照射ツタ]で調整しながら宝珠を作ることが出来るようになる。


 七つの宝珠(額用の小粒がひとつ、胸部・腰部用の大粒がふたつ、肘部・膝部用の中粒のが四つ)を防護鎧(プロテクター)の凹みに樹液で接着。これでオレ用ビキニアーマー試作品の完成だ。


※ ※ ※ ※ ※


 さっそく身に着けて、着け心地と外観を確認する。


「ふむ、悪くないな。身体の一部みたいだ」


「クッキーの場合は生身と違って躯体に合わせて着けれるからな。ま、それは当然だろ」


カメラツタで撮り、樹液モニターで姿を映す。

 相変わらずの黒髪短髪の平凡な顔に額当て。

 ユーリが縫ってくれた狩人の服に木目の胸鎧、腰鎧、手甲、脚絆、それぞれが装飾を彫られ緑黒色の宝珠が付いている。


「なんだか、勇者が四天王の最初のひとりを倒したくらいのときの装備だな」


「ま、試作品だからな。世界樹製とはいえやはり関節部分は弱い。だからそこを守るのを優先した」


なるほど。突貫製作するって言ってたもんな。


「ティムがいたらな……」


そう呟くとペッターは普段隠しているロケットを取り出して開いた……。

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