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世界樹転生 異世界支配とビキニアーマー開発史  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
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煮えきらない覚悟を決める

 ──そして忠誠を試すためにカリステギア王国軍と、長年の戦いによりその強さをよく知っているリュキアニア王国軍で編成し、威力行為で短期決戦するつもりで行動開始した──


「結局物見は帰らずか。やはり一筋縄ではいかないのを確認しただけだったな」


 ひと晩中連絡を待っていたルシア達だったが、予想通り予定通りの今日を迎えることとなった。


「ということは戦になるのは確実として、どうやって何を目的とします」


「まずは降伏勧告、決裂したら精霊もしくは精霊使いを捕虜もしくは排除を目的とし、初手は──そうだなボルノ将軍に任せてみようかと」


 カリステギア王国軍総大将のボルノはそれを聞いてやはりかと内心思う。


「お任せをルシア総司令官。海神ファスティトカロン帝国への忠誠を示してごらんにみせます」


 ボルノはそういうと立ち上がり、一礼してから自軍へと戻っていく。

 それを見送りながら、ルシアは軍人として為政者として、そしてひとりの男としてカリステギア王国軍への期待を高めるのだった。


※ ※ ※ ※ ※


 ミスマの世界でも太陽はひとつで、夜明け前が一番暗くなるのは変わらないなと、城郭のてっぺんから見てオレはそう思った。


「いよいよ戦争か……なるだけ穏便にすませたかったな」


 オレの独り言を聞きとめて、地下工房のペッターが回線をつかい話しかける。


「まだそんなこと言ってるのか。いい加減腹をくくれ。向こうはこっちを殺す気で来るんだぞ、遠慮なんかするな」


「わかってるさ、だけど、《《だけど》》なんだよ。前世では人間だったんだ、やはりヒト族を──殺すのはためらってしまうんだよ」


「今さらだろう。トテップ族、カイマだったか、ソイツらは殺しまくっただろうが」


「あれは……見た目こそヒューマノイドだが意思の疎通が出来なかったから、オレの中では魔獣枠なんだよ。正直あれでもまだ後悔しているさ、もっと上手くできなかっただろうかって。今度は見た目も意思の疎通も人間そのものなんだ、ためらって当然だろ」


 いつもならこんな弱音を吐くとペッターは小馬鹿にした物言いで皮肉を返してくるんだが、今日は違った。


「クッキー、同族に似たものを殺したくないのはわかる。だがな、だからといって最後の覚悟を決めないと死んでしまううえに大事な者を守れないんだぞ。──おいらみたいにな」


 ああ──そうか、ユニオンの策略でペッターは瀕死となり、大事なアシスタントドール、義妹をモデルにしたティムを無くしたんだ。


「おいらはもう迷わない。躊躇して大事な者を無くすという失敗は二度としない。生きる、生きて生きて生き抜いてやるからな」


 皮肉屋が珍しく直情的に言うので、オレも覚悟を決めなければと感じた。


「──そうだな。ペッター、その通りだ。覚悟を決めたよ。オレは……」


ひと息ためて言葉を続ける。


「オレは煮えきらない事にする。徹底的に殺さずに森を守り、ヤツ等を絶対に諦めさせる」


オレの決意を聞きペッターは呆れる。


「お前なぁ……、煮えきらないを決意するなよもう、ああもうしょうがねぇなぁ、つき合ってやるよ。徹底的に攻城戦──は向こうか。籠城戦をしてやるからバックアップは任せな。上級ドライアド(アドバンス)下級ドライアド(ベース)の采配は任せるからな」


「ああ。頼むよ」


 オレが覚悟を決めたと同時に東が明るくなる、いよいよ今日がはじまる──。


※ ※ ※ ※ ※


 帝国軍も夜明けとともに、様子が一変していることに気づきはじめ、気づいた者からそれらが兵士達に伝わり動揺の波が拡がっていく。


「城が出来ているだと。何を言ってるんだ」


自陣で仮眠を取っていたボルノ将軍は、叩き起こされて不機嫌なまま外に出て自分の目で確認し、一気に目が覚める。


「な、なんだあれは」


 昨日までは何もない草原の先に森があり、そこに世界樹という天を衝くような大樹がある風景だった。

 なのに今目の前にひろがる光景はまったく違うものだった。


 草原は腰の高さまで草が育ち、森の手前はまるで城壁のように3メートルほどの高さの草藪が整然と生えている。

 そしてその向こうはカレンダーなんかでよくみる西洋風白壁の森の孤城が建っている。

 その後ろは世界樹が変わらず立っていたので、かろうじて移動したのではなく景色が変わったのだと認識できた。


「た、たったひと晩で造ったのか。この地形を……」


 昨日のヤラン・レーヤクの戦いや女精霊のやりとりを見て、それなりに戦術を考えていたがすべて吹っ飛んだ。


「奴らは戦場(バトルフィールド)を創り変えることができるのか……」


 まったく異質なものと戦わなくてはならない──ボルノだけではなく軍内に不安の波が拡がっていく。


※ ※ ※ ※ ※


「おおー、ざわついてるなー。とりあえず一夜城作戦は成功だな」


 各地に配置したマイクツタとカメラツタからオレたちは成功したのを知り、アディとアドバンス達はがんばった甲斐があったねと喜びあう。


「みんなありがとうな。だが本番はこれからだ、打ち合わせどおり配置についてベース隊の指示を頼むぞ。アディはアドバンス達の指示を頼む」


「了解」


「わかりました、お父様」✕4




 さて、まずは帝国軍に挨拶しにいくか。

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