表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界樹転生 異世界支配とビキニアーマー開発史  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
73/137

ルシア・ガリニア・ファスティトカロンという男3

 ──ルシア・ガリニア・ファスティトカロンが祖父王に任せて本国に戻ろうとすると、単純に暗愚弟王を倒すではなく臣民を味方につけてから事に及んだ手段を高く評価し、帝王テオドシウス・ユリウス・ファスティトカロンはそのまま国を治めよと勅命する。


 血縁関係とはいえ、他国の内政に口出すのは如何なものかと重臣や民衆が騒ぎ出すのを感じた祖父王は自らルシアに王位を譲り、ガリアニア王国の国王とし、自身は摂政の地位につくと宣言しことを収めた。


 帝王の思惑通りなのかどうかは誰もわからないが、まだ手つかずの東部方面に優秀な方面軍司令官が据え置かれたのは紛れもない事実である。


 帝国をはじめとする諸国のある広大な地域は、南に海、北に断崖絶壁があり、その向こうはぶ厚い岩盤、そして砂海であるピザトラ大砂漠だ。

 ほぼ中央にある帝国は結果的に東西に侵攻する流れとなり、獣人族のいる西方地域からの守りを固めるため帝国はまず西部へ戦火を開き、東部はまだ手つかずだった。


 そこに帝王の継承権を持ったルシアが北東部ガリアニア王国の国王となったのだ。つまりルシアは東部侵攻を任されることになる。中東部、南東部、極東部の諸国は騒然となった。


 騒然となったのは諸国だけではない。ルシアより上の継承権を持った各国の王子達も、このままでは後継者争いに負けるとばかりに功を得ようと東部諸国に戦争を仕掛ける。その結果、驚異的な速さで帝国領が増えていき、ついに極東の一国、カリステギア王国だけを残すこととなり、彼の国の全面降伏によって帝国統一戦は成し遂げられたのである。


※ ※ ※ ※ ※


「あれがそうか」


 降伏したばかりのカリステギア王国王女一行が帝国本国に向かう途中、ガリアニア領国を通過するので挨拶をしに来たのだ。


 統一を後押しした功績により、ルシアは継承権を一気に上げ皇妃の子たちに次ぐ6位となっていた。

 祖父王も寿命でこの世を去り、監禁していた暗愚弟王も処刑され、名実ともに王となったルシアは、国土を帝国に差し出し、ガリアニア王国は領国となっていた。


 ──本国への人質政策か。母上もこのような立場だったのだろうな──


 論功行賞を受けに本国に行き、数年ぶりに再会した母は少し老いていた。

 もうこの世にふたりきりの親子である、ラウラはルシアに良き伴侶をと願っていた。


──妻か、まだはやいというか興味が無いな──


 弱冠23歳の身としては、まわりがそろそろと言っても本人には自覚が湧かなかった。それよりも内政に力を入れて形だけではなく実質的に統一しなければという使命感に燃えていた。


「失礼します、カリステギア王国の使者、ボルノ将軍がお見えになりました」


 兵士のあとから、身体つきは立派で顔も笑顔であるが胡散臭い男がやってくる。


「初めましてルシア・ガリニア・ファスティトカロン領主様、このたび本国へ移られるアンジェリカ第2王女の護衛を務めますボルノといいます。お見知りおきを」


──お見知りおきか、悪い方でそうなりそうだな──


 若いとはいえ才気溢れる領主は瞬時にボルノという男を警戒したが、一切態度に表さず笑顔で型どおりの挨拶をする。


「極東部から本国のある中央部まで長旅、ご苦労さまです。お気をつけて。といっても、もう危険なんかありませんがね」


 それだけで済ませるつもりだったが、ボルノ将軍のあとからひとりの女性に目を奪われた。


「御紹介いたします、カリステギア王国第2王女アンジェリカ・カリステギア様です」


 金茶色の背中まであるロングストレートヘア、軽装ではあるか高貴で品のある白を基調としたワンピースドレス、下品にみえないギリギリの女らしいスタイル。

 だがそれよりもルシアの心を奪ったのはアンジェリカの眼だった。

 顔はベールで被われているが、眼だけは見ることができる。


 ──吸い込まれそうな瞳だった


 ──大人の色香とでもいうのか


 ──品があるのに艶めかしい


 ──どう表していいかわからない、だが、間違いなく、そう、間違いなく美しくそして……


 ──惹かれてしまう


 ルシアが我に返ったときにはもうアンジェリカ一行は出立したあとで、その日からのルシアは心此処にあらずという感じで近習の者が不思議に感じていた。

 そしてルシアが恋に落ちたと自覚したときには、もうアンジェリカは本国に到着し、帝王に御目通りをしたあとであった。


※ ※ ※ ※ ※


 ルシアはすぐにアンジェリカ王女を妻にほしいと帝王に願いでるが、聞き届けられなかった。

 というのも、その美しさに魅入られたのはルシアだけではなく、道中挨拶した国々の王侯貴族や本国の臣下まで申し出たからである。


 アンジェリカの価値を確信したテオドシウス・ユリウス・ファスティトカロンは養女として迎える。

 この時、道理を無視して正妻に迎えなかったテオドシウスのことを後世の歴史家は誰もが評価したという。


 どうすればアンジェリカ王女を手に入れられるかと悶々としていたルシアに帝王からカーキ=ツバタ王国攻略の勅命が下る。ただし条件としてユグドラシル樹立国を経由することが付記されていた。


 アンジェリカ王女を手に入れられる好機と、ルシアは此度の遠征に意欲的に出るのであった。


お読みいただきありがとうございます。


励みになりますので、ブックマークの追加


PRの下にある、いいねとスターポイントで応援


できれば感想もよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ