だからビキニアーマーなのか
「わかった、手伝おう」
あまりに簡単に返事したので、モーリは拍子抜けしたような顔をしている。
「本当によろしいので」
「正直、あまりヒト族同士の争いに関わりたくないし、それは世界樹の立場としても関わるものではないと思う。だが、オレのせいで争いとなるのなら、それを止めたいし、エルザ女王もそのつもりなら手伝おう」
「よかった」
「ただし、ひとつ条件がある」
「なんでしょう」
「[大地の嘲笑い]まで続く東の草原に、森を創ることを邪魔しないでほしい。もちろん共存が目的だ」
「……わかりました。すぐ本国に打診しましょう」
モーリはすぐに互いの条件を簡単にまとめると、オレに確認をとり、それを持って本国に向かった。
※ ※ ※ ※ ※
何日かかかるかと思ったが、翌日には戻ってきて正式に契約された。
カーキ=ツバタ王国、ユグドラシル樹立国の連盟が正式に世に出た瞬間でもある。
「やれやれ、これでとりあえずひと安心です」
「あくまでも専守防衛だからな。帝国が攻めてきたら応じる、それも防戦だからな」
「他力本願ですが、獣人連盟次第ですね。帝国が勝てそうな感じで負けずにいる状態が続けばいいんですが」
そんなムシのいい話は続かないだろうな。いつかは来るか。どうする? またドライアドで兵士を栄養にするっていうわけにはいかないしな。
考えが煮詰まった。この件は状況が変わるまで保留にしておこう。まずはユーリの為のビキニアーマー作りだ。聖域庭園に戻るか。
立ち上がってモーリの顔を見たとき、ふと思い出した。
「そういや、なんでビキニアーマーって名前になったか聞いてなかったな」
「色々とありましたからそういえば言ってませんでしたね。あれは旅の吟遊詩人が言い出したんですよ」
──きっかけは、アンナ王女が美聖女戦士に選ばれた事らしい。
女王になるには美聖女戦士となるのが条件だ。5人の父王のうち娘がいるのは3人。その中で美聖女戦士になれたのはアンナ王女だけだったので、次期女王が決まった瞬間でもあった。
「盛大な御披露目がありましてね、神器であるビキニアーマーを身に着けて全国民の前に立ったんです。それがきっかけであの格好が流行ったんですよ」
「それで」
「それまでは『美聖女戦士の鎧』っていわれてたんですけど、たまたま私の知り合いの吟遊詩人が遊びに来てましてね、『ビキニアーマーじゃん』と言ったのがきっかけで、名前が広まったんですよ」
「そいつはどこで知ったんだろう? 転生者なのかな? どんなヤツなんだい」
「獣人ですよ。茶色と黒の縞模様の猫獣人です」
──え、ちょっとまてよ。猫獣人で吟遊詩人だってぇ、しかもキジトラだと。
「ひょっとして、ジュンゴロウって名前じゃないか」
「そうです、お知り合いですか?」
「あいつかぁ。さっき話した唯一の知ってる獣人だよ。世界樹で爪を研いだとんでもないヤツだ、しばらく森に住んでいたことがある」
「おやまあ、意外と世の中は狭いもんですな」
え、ちょっと待て。ジュンゴロウがビキニアーマーを知っている筈がない、アイツはどこで聞いたんだ……、って、オレじゃないか!!
アイツに話したのオレだよ、なんだよそれ、ビキニアーマーの名付けの大元はオレかよ!!
それがわかった瞬間、オレは大笑いした。
モーリは何がおきたか分からないという顔で、こっちを見ていた。
ーーー カーキ=ツバタ王国編 了 ーーー
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