ビキニアーマー解析
森の中心(ちょっと西寄りだが)にある本体の周りには、茨と毒草を生やしてある。
聖域庭園と名付けたここに入れるのは、オレとアディとユーリだけだ。
ペッターはずっといるから勘定には入れない。
本体の根の隙間にある地下に続く階段を降り、ペッターの地下工房に着くと、そこにはアディとユーリもいた。
オレが声をかけ戻ってきた事を説明すると、2人は喜んでくれた。
「で、どうしたんだい? 2人ともここに居るなんて珍しいじゃないか」
「ペッターがあたしに用があるって喚んだのよ。信じられる? ハーフドワーフのくせに精霊を呼びつけるのよ、しかも高位樹木精霊のあたしをよ」
ぷりぷり怒るアディとは別で、ユーリは興味本位でついてきたそうだ。
「ペッター、ただいま。戻ってきたよ」
「クッキー、良いところに来た。お前のチカラを借りたい」
こっちも珍しいな。この自信家がチカラを借りたいなんて。
工房のペッター専用の作業台の上には、エルザ女王からもらったビキニアーマーがある。
「このビキニアーマーってやつなんだが、なかなかの出来でな。ここんとこ解るか」
胸鎧と腰鎧のある部分を指差すが、何がどうなのか解らない。
オレがあれこれ見ていると、アディとユーリが、
「なんかイヤだね」
「うん」
と、ひそひそ話す。
いや、べつにイヤらしい気持ちで見てはいないが、まあそんな風に見えるかな。
ペッターは2人の言葉は耳に入ってないようだ。
オレは降参すると、ペッターは工具を器用に使って解体した。
「継ぎ目があったのか」
「こいつを造ったのはなかなかの腕前だな。オイラの次くらい巧い奴だ。そんなことより、中身を見てくれ」
カバーを外したアーマーには、全体的に文様が刻まれていた。
意味は解らないが、何か意味があると思われる文様だった。
「あー、これたぶん神霊族の祝詞ね。あたしも読めないけど、精霊族の祝福に似ているわ」
アディが口を挟む。
「ほう、やっぱりそうか。オイラもそうじゃないかと思ったんだ」
アディとペッターの意見が一致したとなると、ほぼ正解と思っていいか。
「それで、これとオレのチカラを借りたいと、どうつながるんだ」
「クッキーの前世って、こういうのをやっていたんだろ?」
ああ、なるほど。
祝詞をプログラムととらえれば、それを解析して、オレやアディみたいな精霊系の文様に変更できると思ったわけだ。
それが出来ればかなりメリットがあるな。
「バカ精霊がこれを見た途端アタシも戦いたいと煩くてな。マリオネットの型はより女らしく、なおかつ戦闘力も上げろなんて言うから、このビキニアーマーを解析しなきゃならんのだ」
「ビキニアーマーの文様を解析すれば何とかなるのか」
「クッキーの記憶によると、ただのヒト族である美聖女戦士とかいうのが、トテップ族を蹴散らしたのだろう? いくら戦乙女に憑依されて強くなったといっても、器である美聖女戦士が脆ければその強さを発揮出来ない。だから身体強化する仕掛けが何かあるんじゃないかと思ってな」
ブーツとガントレット、そしてティアラのカバーも外すと、やはりなとペッターはひとり納得する。
「ほら、全部に文様が刻まれている。胸と腰だけでなくティアラ、ガントレット、ブーツで一揃えなんだ。それぞれに宝珠が組み込まれている。おそらくだが、女神が憑依する、身体から神霊力が放たれる、宝珠に反応する、全身を何て言ったっけ、クッキーの世界の……そう、バリアってやつに包まれるんだ、だからヒト族離れした事が出来るんだよ」
ペッターの説明をオレも2人も聴いていたが、理解できたのはオレだけだったようだ。
どう見ても解ったふりして、しきりに感心していた。
これを解析して精霊でも使えるようにする。素材はどうする? 伐り倒された世界樹がある。
マリオネットを切り出した、端切れというには大きすぎて、アーマーにするにはちょうどいいサイズのがある。
アディのマリオネットに、[外付け]でアーマーを着ければ問題点は解決するか。
オレはさらに考えて、ペッターに訊く。
「──これって、精霊以外でも使えないかな」
「う~ん、どうだろう。──前提として霊力が必要だからな。そいつが神霊族や精霊族に匹敵する霊力をだせるのが条件だぞ」
「[世界樹の実]ならどうだ? あれなら有るだろう」
「ふむ、それなら──参号機の応用で出来るかもしれん。だがそれは必要か?」
オレの真意を問うように、ペッターがじろりと見る。
「参号機で[実]を3回使ったんだが、使うほどに身が軽くなってきた、たぶんマリオネットの質量を何割か持ってかれていたからだと思う。その証拠として最後は人型カイマの剣でめった刺しされて壊れたからな」
「……なるほど、実が発芽するには苗床が要るということか。それなら取り替えができるアーマーの方がいいかもな」
そういうことにしといてやる、という表情で納得してくれた。
「つまりクッキーもビキニアーマーを着けるということなのね。わーい、お揃いだぁ」
「ペッター、オレのヤツは意匠を変えてくれよ」
アディが言わなければ、オレ用のビキニアーマーが出来るところだった。
「とにかくまずは文様の解析をしないと始まらない。だから精霊、これからはクッキーに催促するんだな」
そう言うとペッターはオレ達に背を向け、ビキニアーマーの設計をはじめた。もうオレ達に興味が無くなったようだ。
「それならしばらく本体に引きこもるだろうから、先に色々と片付けてくるよ。ユーリ、モーリのところに行くからついてきてくれ。アディは自分のマリオネットのデザインをペッターと煮詰めておきなよ」
アディの催促をこちらに押しつけようとしたペッターは、げっという顔をこちらに向けた。
悪い、少しだけ時間が欲しいからもう少し相手してやってくれ。
オレはユーリを連れて、そそくさと地下工房から出ていった。




