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世界樹転生─目的は異世界支配とビキニアーマー開発─  作者: 藤井ことなり
カーキ=ツバタ王国編
19/120

マリオネット四号機

闇地底の民(ダークボトムズ)と戦ったのか、そりゃやられるか」


「知っているのか」


「半分ドワーフ(土の妖精)だからな。ドワーフは地上の民だが、土の中で暮らしているので奴等とも親交はある。らしい、オイラにゃ関係無いが」


ヒト族とドワーフのハーフであるペッターは、それなりにツラい生き方をしている。偏屈になったのはそういう経緯があったからかもしれない。


「ペッター、知っていることを教えてくれないか。たぶんヤツ等との戦いは長引くと思う」


「めんどくさい」


「そう言わないと。頼むよ」


「……いいだろう、その代わりまたクチキの記憶を覗かせてもらうぞ」


「わかった」


 世界樹のどこかに[脳]にあたる[記憶装置]的なものがあるらしく、そこにはオレの前世の記憶が記録されている。

 オレ自身も忘れている事が事細かく正確に記録されている、まるでハードメモリみたいなものだ。


|創造至上主義《根っからのクリエイター》のペッターは、異世界の技術にすごく興味を持っている。

 この情報と地下空洞の工房を提供する事で、ペッターはオレに協力してくれているのだ。


「クチキ達が[カイマ]と呼んでいるアレは、ダークボトムズでは、[トテップ族]と呼ばれている。特徴は知ってのとおり、


多種族と交わること

その種族の特徴を持った子を産ませること

オスしか産まれないこと

繁殖期は100年のうち1年あるということ


そして、


他のダークボトムズの種族から歓迎されて忌み嫌われていること

連中の社会的地位は高いものから低いものまでいるということ


オイラが知っているのは、そんなところだ」


「トテップ族と呼ばれているのは分かったが、後半のはどういう意味なんだ。正反対の評価じゃないか」


「考えろよ、トテップ族の特徴からなら判るだろ」


トテップ族の特徴? 他種族の女と交わることだろう? それ以外に……


「あ! そういうことか。他種族の特徴を持った子が産まれるんだ、中には知性の高いのもいるということだな、そして反対に低いのもいるわけだ、だから評価がまちまちなんだな」


「そのとおり、半分正解」


まだ半分あるのか、なんだろう……


「わからないのか」


「わからない、降参だ」


「ヤツ等の妊娠率は[全部]だぞ」


「……だから?」


「鈍いヤツだな。どの種族も純血、つまり同種族同士の子孫が欲しいだろ、ところがこの妊娠ってやつは当たり外れがあるのは、どの種族も一緒なんだ、まったく効率悪くて極まりない」


「……え、ということは、まさか」


「確実に子孫が残せる血が手に入るのなら、他種族と交わってもよいと考えるヤツもいるということだ」


「望んで交わるのもいるということか」


今さっきまで、本能に支配され獣同然のヤツ等と戦ってきたばかりだったから、考えもつかなかった。


「そいういえば」


ペッターが何か思い出したように話しだす。


「オイラがまだ組合(ユニオン)の工房に居た頃に、変な注文を受けたな」


「トテップ族にか」


「はっきりとは名乗らなかったし、全身ご隠れる黒いマントの格好だったから断定はできないが、ダークボトムズ特有の青黒い肌は、ちらりと見えたな」


「それで変な注文というのは」


「眼鏡を頼まれた」


「眼鏡って、ダークボトムズは目が見えないのが特徴と聞いたし、実際オレがさっき関わったヤツ等も器官として眼はあったが、機能しているようにみえなかったぞ」


「だから変な注文なんだ。視力矯正の必要は無くて、ただ光を極力遮る素材と形状にしてくれとは言われた」


「それで」


「もちろん作ったさ。オイラを誰だと思っているんだ、ユニオン随一の称号[Z(ズィー)]を持った腕きき職人、ズィー・ペッター様だぞ。ちゃんと依頼人を満足させる代物を作ったさ」


 ペッターに出会ったのは100年くらい前でまだユニオンにいたから、その頃の話か。


「他には何か思い当たる事はないかい」


「……いや、それくらいかな。クッキーはこれからどうするんだ。オイラには関係無いけど」


話を続けたいが、時間が惜しい。急いでカーキ=ツバタに戻らなくては。


「使える躯体は残っているかい」


「今使っている試作体《零号機》と四号機だけだな。壱号機と弐号機は壊れてしまって修理していない。参号機は今日クッキーが永久欠番にした」


「じゃあ四号機で」


「そこにある」


マリオネット置場ではなく、工房にある躯体を指されたので、それに憑依(うつ)る。

 これの基本設計は、オレの前世の身体で、亡くなった31歳の身体ではなく、18歳の頃の身体をベースにしてある。その頃がいちばん身体機能が良かったからだ。

 顔もなんなら美形する事ができたが、なんか落ち込んでしまいそうだから元の顔を少しだけ良く(プチ整形)した。


このマリオネット(四号機)はどうしたんだい」


「これを食べてみなよ」


ペッターは手元にあった果実入れから果実を取ると、こちらに放り投げる。

 それを受け取って口にすると、驚きが身体中に走った。


「あ、味を感じる。すごいぞペッター、味を感じるぞ」


ペッターも自分の分を口にしながら、不具合が無いかとオレをじろじろと見続ける。


「それはどんな味だ」


「……甘酸っぱい、ペッター風に言うのなら、甘いが7、酸っぱいが3というところかな」


「……ふむ、オイラと同じようだな。とりあえず成功か。世界樹の森に肉食の植物があると聴いたからな、食べれるようにしてみた。簡易養分補給ができるようになったから、たぶんこれでかなり遠くまで行けるようになったと思う」


栄養補給が出来るようになったということか、これはありがたい機能だな。

 五感のうち4つまで使えるようになったぞ。


ペッターに礼を言うと、オレはアディのマリオネットを担いで地上に出て、カーキ=ツバタに向かった。

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