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世界樹転生 異世界支配とビキニアーマー開発史  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
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名も無き戦士は

 執務室に着いたルシアが副官に思い出すように言う。


「傭兵達と決闘しながら極力殺さないやり方に疑問を抱いてな。実際に会ってみたら、最初に会った女精霊がいただろう」


「ああ、あの全裸の」


「女にしては羞恥心が無いので不思議に思っていたが、さっきクチキという戦士に会って納得した。あれは同一のモノだな。同じ精霊が女と男をやっているとみた」


「つまり同一人物だと」


「精霊を人扱いしていいかどうか分からないが、同じモノなのは間違いない。さらに、怖がってるふりして化け物ツタに持ち上げもらい草壁の向こうを見た。ざっとだが人の気配は無かった。もっと情報を得たかったがすぐ投げ飛ばされてな。あれはさすがに怖かったよ」


 笑いながら言うルシアに副官は呆れる。


「それで何かわかりましたか」


「うむ。あの精霊戦士は精霊力では敵わぬが、剣術なら勝てる。つまり精霊力を一時的でも凌駕すれば確実に勝てる」


「精霊力を凌駕ですか。そんなことは可能でしょうか」


「まあ可能性があるのは闘気や魔法だろうな。実際、私の闘気で精霊戦士の剣を受け止める事ができた」


「なんと」


「その後すぐに斬られたがな」


 そう言ってルシアは鞘から抜き半分に切れた剣を見せる。キレイな切り口の剣を目の当たりにし、副官はその鮮やかさに好みの芸術品に対峙したような戦慄をおぼえる。


「ご覧のとおりだ。ヒトの闘気など足下にも及ばない。傭兵達がいくらかかっても勝てるわけ無いのも納得だ」


「となると……」


 副官とルシアは陣幕の南側に視線を向けた。その向こうには祖国ガリアニア領国から持ってきた国宝が祀られている戦車(チャリオット)がある。


「……アレを有効に使える状況にする必要があるな」


※ ※ ※ ※ ※


 ルシアがクチキと戦う少し前、某所で4人の男女が集まっていた。


「姐御、どうしたんです。こんな時間にここで集まるなんて」


 姐御と呼ばれた女は苦々しい顔で黙ったままなので、フタミミとガンズはどうしていいか分からずにいた。

 そこへもうひとりが代わりに話しはじめる。


「昨夜の打ち合わせのあと、こちらのに来たところで姐御に影念飛鳥(ナイトバード)が来たんだ。それからずっとこうなんだ」


 「影念飛鳥(ナイトバード)ってカシラから姐御に直接送る急ぎの命令ですよね」


「……そうだ」


 ようやく姐御が口を開く。


「命令ではなく報告だったがな。帝国に残ってるチームの仕事が成功したらしい」


「帝国のチームというと、アイツ等ですか。何やってたんですか」


「帝国の閣議で砂海用船舶(サンドクルーザー)の実用化の運動だ。そしてそれが決定した」


「ええっと、それがなにか」


「アイツ等の手柄がひとつ増えたということだ。それに対して我々は世界樹が無事なのを確認して、さらに木製憑依型人形(ドール)の上位機種らしきものも確認してしまった」


「ええ」


「オレたちはここ数十年のつき合いだが、姐御は100年前の世界樹伐採に関わっている。つまり姐御は任務を失敗したということだ」


 ようやくガンズとフタミミは姐御の立場を理解した。


「アイツ等が手柄を得たタイミングで、こちらの失態が分かってしまった。このままでは差をつけられてしまう。あのダークエルフに」


「それだけではない。処分はチーム単位だ。姐御のゲイニンである我々も免れない」


「ええ」


「そんな」


「だから緊急で危険を冒してまでも集まったんだ。我々が助かるための知恵を出すためにな」


「とは言っても……」


 帝国軍5000の総掛かりでも世界樹に届かないのを目の当たりにしているのだ、たかだか4人ではどうしようもない。しかしこのままでは身の破滅が待っている。


「もし処分されるとしたら、どうなるんです」


「良くて全員死刑、悪くてあたしの降格でゲイニンとしてダークエルフの下につくだろうな。冗談じゃない、アイツの下なんて真っ平御免だ」


「となると……逃げますか」


ガンズの言葉に姐御は首を振る。


「それもできない。お前たちとあたしは法術で繋がっている。何処に行こうが追うことができる。同様にあたしもカシラと法術で繋がっている、だから逃げられない。いつかは見つかって処分される」


 追っ手に怯えながら逃げる生活を想像してゲイニン達は黙りこくる。


 ──しばらくの沈黙のあと、口を開く者がいた。


「うまくいけば失態を取り消し、失敗しても言い訳になるというのはどうです」


「ウツリミ、何か思いついたのか」


「こんなのはどうです」


 ウツリミは姐御とガンズ、フタミミに思いついたことを話す。それを聞いて姐御の目が輝きはじめる。


「そうか、難しく考えることなかった、そうすればいいんだ」


「いやでも姐御、それはどうやるんで」


「ちょうどいいコマが揃っているじゃないか」


 姐御はウツリミの思いつきを形にしはじめる。それはなんとなくの輪郭をもとに1枚の絵画を描くように、構図と配置そしてアングルが決まっていくようだった。


「なるほど。それならできそうです」


「よし、ならばすぐにでも動くぞ。それぞれの役割りはわかったな」


 ガンズ、フタミミ、ウツリミの3人は頷くと、それぞれ人目につかないように目的のところへと動き出した。

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