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世界樹転生 異世界支配とビキニアーマー開発史  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
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11章 予期せぬ結末

 4日目の朝、[世界樹の森]の南に造った簡易闘技場ではクッキー(オレ)の決闘が続いていた。


 ずいぶん慣れてきたので再戦するヤツ、再々戦するヤツにも余裕で勝てるようになり、ついでにだんだん顔馴染みができてくる。そんななか、少し毛色の違うヤツがやってきた。


 藁色のボサボサ髪にボロボロの革鎧、衣服も粗末な兵士が着るやつで、肌の色は土埃で汚れていてよくわからない。食い詰め傭兵のようだ。だが、身体つきは筋骨隆々な男だった。

 腰に帯びた剣は分厚くて、斬るというよりはぶっ叩くような代物で、名乗りもせずに抜いてかまえる。


「名乗らなくていいのか」


「名は無い。クチキ・ユグドラシル・シゲル殿に勝ったら名乗らせてもらう」


 本当にそうなのか、謙虚なヤツなのか、それとも何か考えがあるのか、それはわからないが挑んできた以上、戦うしかなかった。


「では、いざ」


「参る」


 突進してきた男に、精霊力剣(ソウルソード)で切る──はすが受けとめられた。そのあと何合か斬りあったがすへて止められる。ということは……。


「こいつ、達人級(マスタークラス)か」


 ならばと精霊力剣(ソウルソード)を斬れ味をレベルアップさせた精霊力青龍刀(ソウルブレード)に変える。これなら切れるだろう。


「なに?!」


 これも受けとめるだと!?


「コイツ……」


 あらためて観察する。見た目は食い詰め傭兵のようだが太刀筋はちゃんとしている、それなりの剣法を身につけているな。外見で侮らせて実力を隠すタイプか。


精霊力青龍刀(ソウルブレード)で対等の闘気か。アイン・トーカーより上ということか」


 アイン・トーカー、お笑い枠のヤツだと思ったらなかなかの剣士で、この決闘では同等の剣士には会っていない。だがこの無名の剣士はそれを上回る。


「ならば」


 無名剣士が上段が斬りかかる刹那、精霊力青龍刀(ソウルブレード)をもうひと振り発現させクロスで受けとめる。


「はあ!」


 さらに精霊力(ソウル)を上乗せして無名剣士の剣を斬り落とす。

 半分の長さになった剣を見つめたあと、無名剣士はそれを鞘に納め両手を挙げる。


「参りました」


 おお、素直だな。礼儀正しい。こちらも精霊力青龍刀(ソウルブレード)を消失させて礼をする。


「なかなかの技量をお持ちで。正直危なかったです」


「いやいや、挑戦者が連なるわけです。クチキ殿もお強い」


 気持ちいいな。この男は投げ飛ばさなくてもいいんじゃないかな。

 そのことを話すと、意外にも投げ飛ばしてほしいと言われる。


「いいのか? けっこうキツイぞ」


「何事も経験です。ぜひともお願いします」


 変なヤツだな。まあ御希望とあらばしょうがない、アディに言って触手ツタで巻きつかせて持ち上げる。


「わわわ、た、高い、高いぞぉ」


 怖がる無名剣士が面白かったのか、アディは限界まで持ち上げてから帝国軍の方へと投げ飛ばした。

 大丈夫かな?


※ ※ ※ ※ ※


 帝国軍本陣では飛んできた無名剣士を丁重に受けとめる。


「ん? お前見ない顔だな? 何処の軍だ?」


 投げ飛ばされた傭兵を受けとめて治療するよう命令された部隊のひとりが訊く。


「いやあ、旅の者でしてたまたま通りすがったら金儲けの匂いがしましてね。こっそり参加したんです」


「おいおい、軍規を乱すようなことするなよ。ただでさえ精霊なんてわけのわからないモノを相手してるんだ。これ以上掻き乱すな」


「へへ、どうもすいやせん」


「怪我はないようだな。さっさとどっかへ行ってしまえ」


 無名剣士は立ち上がると、ぱんぱんと埃を払い歩いて帰っていく。


 しばらく歩いて辺りに人気が無いのを確認すると、ガリアニア軍の本陣に向かう。そこで副官とばったり会う。


「総司令官、なんという姿をしているのです」


「はは、さすが副官。よくぞ見破った」


「見破ったじゃありません。さ、はやくお着替えを。そんな姿を他国の者に見られたらどうするのです」


「大丈夫だよ。誰も気づかなかった」


 副官に嗜められながらも総司令官ルシア・ガリニア・ファスティトカロンは悠々と歩き、自軍の陣幕に入ると水と着替えを用意させる。


 ルシアの身の回り世話係として従軍している少年従兵が水で頭と身体を洗い拭き上げ、着替えさせる。

 継承権が低いとはいえ帝王の子であるルシアは、幼い頃から身の回りの世話を任せていたから羞恥の心は無く、身動ぎせずに終わるのを待つ。


「総司令官、いったい何をしてたのです」


「例の決闘に参加してきた」


 副官の問いにこともなげに言う。


「なんと。何故そのようなことを」


「いま一度相手の人となりを知りたくてな。決闘に参加した傭兵たちからの聞き取り報告を読んでいるうちに、直接確かめたくなった」


「だからといって」


「まあそう怒るな。おかげで色々と分かったよ。それに祖国を取り戻したとき、リキニウスやステラと傭兵として戦ったんだ。ヘマはしない。そういえばリキニウスから連絡はあったか」


「まだです。予定通りならまだ旧道の半分といったところでしょう、カーキ=ツバタのヨツジ関所には今日の日暮れあたりに着くかと」


「うーん、もう少し早くならないかな。となるとこの馬鹿げた決闘はまだ続くのか」


「なにか面倒なことでも」


 着替え終わったルシアが少年従兵を下がらせると、副官とともに執務用の陣幕へと向かう。

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