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世界樹転生 異世界支配とビキニアーマー開発史  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
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王女の資質

 本来、戦乙女(バルキリー)化した美聖女戦士の攻撃力はこんなものではない。


 神霊界と繋ぐ(ゲート)を担う者からほぼ無尽蔵の神霊力(スピリッツ)を注がれて憑依者の身体がもつあいだは、ほぼ無敵と言って良い。


 だが、(ゲート)無しで美聖女戦士となっている今のアンナは、レギンレイヴが持っているだけの神霊力(スピリッツ)しか無い。いま一度精霊石の矢を受ければ強制的に憑依離(アセンション)されてしまう。


 その場から動けないアンナに、今まさにガギョウが矢を放とうとするところだった。


「アンナ様ーーー」


 エリスの個人防御魔法を纏ったジャクリーンとエニスタが駆け寄ってくる。


 ガルの隊は飛び越したアンナを追いかけようと反転して追いかけようとしたところを、後ろから来たジャクリーン達の手によって全滅させられていた。


 そのままアンナに合流しようとシャッコウ族本隊のところまで来たが騎馬軍団の円陣を突破できなかった。そこでレオーネ姉妹の得意技、空中曲芸の要領でジャクリーンとエニスタだけが飛び越してきたのだ。


「これを」


 ジャクリーンが途中で拾ったアンナの双剣を投げる。だがそれは受け取れない。

 なぜなら美聖女戦士は武器を持たない、自らの徒手空拳に神霊力(スピリッツ)を上乗せして戦うのが条件だからだ。手にした途端、契約違反となりレギンレイヴは憑依離(アセンション)してしまう。そうなればアンナは文字どおり丸裸となってしまうのだ。


 アンナは一瞬迷ったが、視野の端に映ったモノが別の選択を選びレギンレイヴは瞬時にしてその行動に移った。


 残り少ない神霊力(スピリッツ)で突風を起こし、ジャクリーンが投げた剣の軌道を変える。

 その剣は先ほど神霊力(スピリッツ)を吸い込んだ精霊石の矢じりに当たる。

 大量に神霊力(スピリッツ)を溜め込んだ精霊石は内側からの圧力により脆くなっており、剣が当たることによって破壊される。


「今よ」


 アンナはわずかな体力を振り絞って解放された神霊力(スピリッツ)に近寄り、それを取り込む。


「なに」


 ガギョウが驚くなか、エニスタが剣を投げガギョウの弓を叩き落とす。

 アンナはふたたび神霊力(スピリッツ)を纏う美聖女戦士になり、宙に飛ぶ。


「一気に決める! 飛燕反転二段蹴りスワロー・カウンター・キック!!」


 ガギョウに向かって高速降下で蹴りを入れ馬上から地面に叩き落としたあと、宙で後転からの錐揉み状に高速降下蹴りをさらに打ち込む。


「……!!」


 ものすごい勢いで打ち込まれた蹴りは、ガギョウを中心に土ぼこりが爆発したように舞う。


 それが落ちて視界が戻ってくると、ガギョウの身体を片手で高々と持ち上げてる美聖女戦士アンナの姿がシャッコウ族の目に飛び込んできた。


「お、御頭がやられた」

「な、なんだあのバケモノは」

「どうする? どうすればいい?!」


 大頭目のガギョウがやられた以上、頭目のギル、グル、ゴルの判断を皆が待つ。


 アンナはそれを尻目にガギョウのウマにガギョウを乗せると、北に向かって走らせる。

 それを見て、シャッコウ族はアンナ達を避けつつガギョウとともに北へと戻っていく。


 シャッコウ族全てが離れていくまでアンナは仁王立ちで見送り、もう大丈夫だと安心した途端、憑依離(アセンション)して、レギンレイヴは離れ神器ビキニアーマーも亜空間へと消えていく。全裸となったアンナはその場で倒れ込んだ……。


※ ※ ※ ※ ※


 あとから追いついたエリスが、ジャクリーンの指示で持ってきた魔法黒衣(マジック・ローブ)でアンナの身体を覆う。


「よくぞやってくれました」


 ジャクリーンが敬意と感謝の言葉をつぶやきながらアンナを抱きしめる。


「あの蛮族を蹴散らしたんだ。アンナ様は立派な王女様だな」


 ジャクリーンに対してエニスタがそう話す。


「あたしもそう思うよ」

「あたしも」


 レオーネ姉妹が同意し、エリスが無言で頷く。


「さあ、戻りましょう。このことを一刻も早く皆に伝えなくては」


 ぐったりとしているが意識はあるアンナは次の行動を指示し、ジャクリーン達はそれに従った。


※ ※ ※ ※ ※


 同じ頃、ヒトハによってヨツジに到着したユーリとゾフィ。そのヒトハによってアンナの勝利そしてシャッコウ族の撃退を知らされていた。


「そうか、やってくれたか」


「はい。お見事でした」


「ヒトハ、アンナ達を手伝ってくれ」


「わかりました。こちらは手伝わなくてよろしいので?」


「ああ。私も女王代行として結果を出さないといけないのでな」


 理解したヒトハはアンナ達のところへと向かう。ふとユーリがゾフィを見ると感慨深く浸っていた。おそらく涙をこらえているのだろう、ずっと顔を背け空を眺めている。


「ゾフィ隊長、まだ体力が回復していないだろう。任務をシンシアと交代してくれ。彼女の知識が必要だ」


「……わかりました」


 涙声がバレないように短くはっきり応えると、足早に離れていく。しばらくしてシンシアがやってくる。が、彼女も泣いた跡をその顔に残していた。


「……まったく果報者だな、アンナは」


「なにか」


 ユーリは独り言だ何でもないとだけ応えた。


 フタハからの情報で、南から来る少数の帝国軍がまもなくやってくるという。


 ユーリは避難民を連れた救援部隊は無事で詳細を話せる者を数人残したあとそのまま王国へ向かうように指示し、シンシアと衛兵小隊数人だけで交渉することにした。

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