カーキ=ツバタ王国女王親衛隊
突如現れた5人の女にシャッコウ族の頭目は顔をしかめる。
「なんなのだ。また女が増えたとおもったら剣を構えている。コイツらは女しかおらぬのか」
後ろから手下がどうしたのかと声をかける。
「此奴ら、女しかおらぬらしい」
「ならいただいきましょうぜ」
その言葉に他の手下もそうしようぜと言う。
あらためて顔や身体つきを品定めすれば、高く売れそうな連中だなと損得勘定をする。儲かりそうだからそうするかと腹を決め、頭目は弓矢ではなく剣で戦うようにいう。
好色そうな顔つきとなった手下たちはウマから降りて、抜刀しながら頭目に近づく。そばに来たところで頭目も降りて抜刀する。
※ ※ ※ ※ ※
「ユーリ様、相手はどういうつもりなんでしょうか」
アンナの質問にユーリは苦々しくこたえる。
「遠くゆえ聞こえなかったが、唇を読んだ限りでは我々を捕らえて売り飛ばすつもりらしい」
それを聞いてレオーネとアルスが吐き捨てるように言う。
「は、安くみられたものだな」
「姉ちゃん、痛い目にあわせてやろうぜ」
レオーネ姉妹にエニスタが檄を飛ばす。
「ふたりとも、油断するなよ。相手は蛮族だ」
「わかってるよ姐さん。昔のとおりにすればいいんだろ」
レオーネとアルスの姉妹は戦争孤児である。幼い頃全てを失って途方に暮れてたとき、エニスタ父子によって拾われ3人は姉妹のように育ってきた。
エニスタの父が決闘で亡くなったあとは、エニスタがレオーネ姉妹の親代わりとして旅をし、カーキ=ツバタ王国に辿り着いて紆余曲折のすえ3人とも親衛隊に入隊したのだ。
「エニスタ、レオーネ達を頼む。私はアンナ様とユーリ様に」
「わかった。頼んだぞジャクリーン」
エニスタはレオーネ達のところに向かい、ジャクリーンはアンナの横につく。
「ユーリ様、腕に自信は?」
「それなりにな。ジャクリーンはアンナの助勢を」
「は」
そう言うとジャクリーンは双剣を構える。
ジャクリーンは騎士の称号を持つ代々騎士の家系の出である。女王の親衛隊として務めているうちに男女の体格差を補うため、護衛しつつ避けながら斬りつけるという護衛双剣術を編みだし御家芸としている。
「アンナ様、剣はひとつですか」
「ええ」
「ジャクリーン、アンナを守るぞ。奥の手になってもらうからな」
ユーリの言葉にジャクリーンは意味を悟り、それに合わせて前に出る。
「秘伝護衛双剣術、今こそみせてやる」
だんだんと近づいてくるシャッコウ族に強い意志を轟かせた。
※ ※ ※ ※ ※
「二手に分かれたか。おい、お前たちはあっちの生意気そうな3人組をやれ。オレはアタマ張ってるヤツをやる」
シャッコウ族は2人組と3人組に分かれ、3人組はエニスタ達のところへ向かう。
「ほほう、多少はやれるみたいだな。陣形を組んでるぞ」
「活きが良さそうだな。徹底的に嬲って絶望させてやりたいぜ」
「生意気な女が泣き叫ぶのは面白れぇからな」
シャッコウ族3人組は倒したあとのことを楽しみに、卑しく嗤いながら走り出した。
※ ※ ※ ※ ※
「こっちは3人か。レオーネ、アルス、いくぞ」
「「おう」」
それぞれの相手を定めるとエニスタ達も走り出す。
適当なところまで来ると足を止め、剣を交える。乱雑な力まかせの剣撃、エニスタだけはそれを受け止めるがレオーネとアルスはふっ飛ばされる。
「はっ、女の細腕でやれるとおもってんのかよ」
ナメたシャッコウ族達はふっ飛んだレオーネ達を追いかける。態勢を立て直したレオーネ達はふたたび挑むがまたしてもふっ飛ばされる。そして今度は立ち上がれない。
「はは、いちばん手柄はもらったー」
片膝でようやく起き上がったレオーネ達の目前まで来ると、相手の剣を叩き落とすように己の剣を振り下ろす。
その時だった。
息絶え絶えだったはずのレオーネとアルスが俄然起き上がり剣撃を躱すと相手を無視して走り出したのだ。
「な、なに?!」
ふたりは全力でエニスタのところへと向かう。
「し、しまった」
シャッコウ族達も追いかけるが、レオーネ達の方が断然速い。みるみる引き離してエニスタの身体で隠れるように一列になる。
気配を察したエニスタは相手に猛然と斬りかかる。
「な、なんだコイツ。どこにこんな力が」
防御一辺倒となったシャッコウ族。そしてエニスタの背後から左右に人影が現れる。
「な」
ふたつの人影はシャッコウ族の左右の腹を水平に斬りながら走り抜ける。
「ふぐっ」
動けなくなったシャッコウ族の隙をつき、鋭い一撃で喉をひと刺しするエニスタ。シャッコウ族は剣を抜かれた喉から血の噴水を出しながら無様に倒れる。
「まずひとり」
エニスタが剣をふるって血を飛ばすと、次の相手へと走り出す。
※ ※ ※ ※ ※
「あのバカ、やられやがった」
「くそ、どうやらワナに引っかかったようだ。アイツ等わざとやられたフリしてたな」
追いかけてきたふたりのシャッコウ族に、レオーネとアルスがふたたび挑む。
「ナメるな」
すれ違いざまに剣の腹でレオーネ達の身体を薙ぎ払おうとしたが、空振りに終わる。ふたりは相手の目の前でジャンプして頭上を飛び越えたのだ。
「な、なんだと」
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