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世界樹転生 異世界支配とビキニアーマー開発史  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
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シャッコウ族

 燃える[グリーン・ウォール]の向こうに現れた女に、ノマド達は何者だという顔をしながら大勢を整えていた。


 ユーリは熱い想いを燃やしながらも頭は冷静に相手を見定める。


──5騎か……乗っているウマはたしか北の平原奥辺りで見かけたな。それに纏っている毛皮の動物もその辺りのやつでかなり大きくて凶暴だった覚えがある──


「ヒトハ、ゾフィをもっと後ろに下げてその手前に[グリーン・ウォール]を作れ。そのあとはフタハと協力して頼んだことをやってくれ」


「はい。……ですがよろしいのですか」


「まかせよ。仇はとってやる」


「はい!!」


 ユーリの頼もしい言葉にヒトハはさらに元気を得て、触手ツタでゾフィを抱えると下がろうとする。だがそこへノマドのひとりが矢を射つ。


 ユーリは腰につけてた愛用のムチを素早く取りだし、その矢を叩き落とした。それを見たノマドはあらためてユーリを警戒しはじめる。なぜなら豪速で飛んでくる矢を叩き落とすなど本来できないのだ。しかしそれをやってのけた。


 真ん中の先頭にいる若そうなのが頭目らしく、何ごとかを他の連中に指示するが、その言葉を聞いてユーリは叫ぶ。


「お主ら、なぜここまで来たっ」


 自分達の言葉を話すユーリにノマド達がさらに驚く。


 ユーリが大賢者と呼ばれる由縁は400年近く積み重ねた経験と知識である。

 ギルドの冒険者であった頃、各地を旅し、商売上の取り引きができる相手と会うと、言語を習得しそれをギルドに登録する。


 登録された言語はギルドの貸し出し魔法会話魔法(ワード)で話せるようになる。だが商売にならない相手の言葉は登録されてない。だからギルドの旅商人であるモーリは解らなかった。


 冒険者は最初に自力で言語を解読する必要がある。それゆえユーリはギルドの登録しているもの以外の言語をいくつか知っているのだ。


──よし、どうやら通じるようだな。時間かせぎをかねて話しかけてみるか──


 とはいえだ。逆に言えばギルドに登録されてない、つまり取り引きに値しない相手、それは言葉通り《《話にならない相手》》ともいえるのだ。


 ユーリはヒトハに命じて高性能マイクツタとスピーカーツタを近くに生やさせ、あらためてノマドに話しかける。


「我が名はユーリ。カーキ=ツバタ王国の長だ。お主らはなぜ我らを襲う」


 しばらく無言でいたが頭目らしいのが騎馬のまま少し前に出て、大声で返事をする。


「我らは誇り高き部族シャッコウ族。そちらの長をだせ」


「私が長だ」


「違う。長は男だ。女じゃない」


 ……女を下にみる連中か。蛮族め。


 ユーリはエルザ女王の言葉を思い出す。力がある者が上に立つのが当たり前となれば、力に劣る女が虐げられる。世の女達は男の下になってしまう、でなければ生きていけない。

 だが女が治める国があることは世の女達にとって希望となる。カーキ=ツバタの存在は、この世の女達にとって心の支えで希望になると……。


「長であることは男でなくてもよい。つまらぬ男より役に立つ女の方がふさわしい」


 それを受けて若き頭目は挑発するように大笑いする。


「カーキ=ツバタの男は大したことないのだな」


「いきなりカーキ=ツバタの民を襲うという野蛮な行い、それをして悪びることない態度、そのような恥知らずな男は我らにはおらぬがな」


「弱き者が強き者に奪われるのは当たり前だろう」


「弱き者を守るのが強き者のすることだ」


「ならばお前は弱き者を守れるのか」


「もちろんだ。それが長だ」


 頭目は右腕を上げ他の4騎に合図を送ると、4騎とも矢をつがえユーリを狙う。しばらく間をあけたあとユーリの様子をみてから右腕を下ろす。


 音を立て豪速で4本の矢がユーリに向かう。1本なら落とせる矢も4本では防ぎようがない。


 そこへユーリの背後にある[グリーン・ウォール]を飛び越えて4つの影がやってくる。それらはヒトハとフタハの協力によりつくられた巨木の幹で、触手ツタによりユーリの手前に叩き落された。乱雑に落とされた幹により矢はユーリに届くまえに防がれる。


 そしてあらためて4人の女戦士が触手ツタによってユーリのそばに降ろされる。


「ユーリ様、ご無事ですか」


「エニスタか。よく来てくれた。アンナはどうした」


「うしろでゾフィ隊長のところにいます。現状を教えてください」


「ノマドの正体はシャッコウという蛮族、目的はまだわかってない。だが話が通じないので戦いになった」


「わかりました。ジャクリーン、レオーネ、アルス、戦闘を許可する」


 エニスタの号令に3人は呼応。それぞれ剣を抜きかまえる。


 応援が来てユーリはホッとしたが、シャッコウ族の弓矢攻撃に剣では相手にならないとは感じていた。そこへヒトハからスピーカーツタで連絡がはいる。


「ユーリ様、頼まれた用意ができました。はじめますか」


「よくやったヒトハ。はじめてくれ」


 ユーリが返事するとともに[グリーン・ウォール]からカメラツタが生える。そして触手ツタによりアンナが降りてきた。


「ユーリ様、ゾフィからあらましは聞きました」


「そうか。積もる話はあとだ、まずは蛮族を蹴散らすぞ」


「はい」

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