ノマド動く
カーキ=ツバタ王国には樹液モニターは現在のところユーリの部屋と謁見の間そして会議室にある。
会議室と謁見の間には貴族達が自由に出入りできるので、ユーリは自室にだけアンナとヒトハと連絡を取れるようにしてある。そして連絡役に親衛隊のエリスを選んだ。
アンナにもユーリと連絡とれることは後発隊には伝えないように指示してる。そして昨日の魔導師と協力して空間映像を創り上げたヒトハは、その後すぐにクッキーと連絡し、そのままアンナの下に残っていた。
上級ドライアドとはいえ少々酷使してしまったなとユーリは思い、休むように伝えてあるが、その気遣いこそ永久契約した精霊への栄養。
ヒトハはそれをさらに配下の下級ドライアドに分配、総勢25体のドライアドは元気ハツラツ状態であった。
※ ※ ※ ※ ※
「ヒトハさん、避難民はいまどの辺りですか」
デンワツタで連絡をとるアンナに、旧街道沿いに支配地を伸ばしているヒトハが報告する。
「1000メーターごとにカメラツタを生やして北側に向けてますが、今のところ映りません。先行の救援隊は旧街道に出ました。どうやらすれ違ったようなので南北どちらに行くかで迷ってるようです」
「救援隊にデンワツタを生やして。偵察を北へ、そして本隊はそこに待機」
「あ、お待ち下さい。避難民をとらえました。救援隊より南にいます」
「それなら本隊は南下。偵察は北へ出して」
「アンナ様。それは御自身でお願いします。スピーカーツタを生やします」
旧街道沿いに生やした支配地のいちばん北端からスピーカーツタを生やす。救援隊より南であったが、ヒトハは避難民にも聞こえるように大きな音を出せるよう大きめのスピーカーツタにする。ヒトハはどうぞとアンナをうながす。
「聞こえますか[はじまりの村]の民よ。私はアンナ、カーキ=ツバタのアンナ王女です。村が蛮族に襲われたことはききつけました、いまそちらに救援隊を差し向けてます。いましばらく頑張ってください」
カメラツタがとらえた避難民は最初戸惑ったようだったが、もう一度繰り返してアンナが言うと少し安心したような顔になる。
そして北側から救援隊がやってくると、最初は警戒してたが王国の衛兵の姿を見てようやく喜びの姿をみせた。
「アンナ様、私はこのまま旧街道沿いに支配地を伸ばしていきます。カメラツタの他にスピーカーツタとマイクツタを同じところに生やしますので、避難民と救援隊の指示をお願いします」
「わかったわヒトハさん。さすがユーリ様の使い魔ね」
アンナはスピーカーツタでヨツジに救援本隊があることを伝え、こちらに来るようにいう。
一方、ヒトハは意識を本隊のあるヨツジの森から旧街道沿いに北上し、そこにいたフタハと合流する。
──フタハ、お疲れ様。このあとの命令は入ってる?──
──ううん。入力待ち──
ヒトハからヤツハまでの8体は対等のいわば八ツ子のようなもので、ヒトハがユーリに嫁いた関係となっている。つまりフタハはまだ実家暮らしなのでクッキーかアディの命令が必要なのだ。
──フタハ、お父さまかアディお母さまに手伝ってもらっていいか訊いて──
──う、うん──
フタハは戸惑い、どうしていいか分からずにいる。
ヒトハはおやっと思うが、ユーリ譲りの知能で理解する。
──そうか。私の立場が明確化されてないんだ。だからいうことをきいていいかどうかが判断できないんだ──
そこまで解ると言い直す。
──フタハ、仕事が終わったこと伝えて──
それならば差し支えないとフタハはアディに伝える。そして[世界樹の森]に戻るように命令され帰っていく。代わりにアディがやってきた。
──どうしたのヒトハ。フタハが困っていたわよ──
ヒトハはアディに現状を説明すると、フタハに手伝ってほしいと伝える。
──うーん、それで困ってたのか。あのねヒトハ、ユーリと永遠契約したことによって、あなたはクッキーやあたしよりユーリの命令をきく立場になったの。だからフタハたちからすると他所の精霊から命令されたようなカタチになるのよ──
──どうすればよいでしょうか──
──うーん……フタハだけでいい?──
──はい──
──ならあとであたしが解除するまで優先順位を変えてあげる。あたし、クッキーそしてヒトハの順に変更。それでいい?──
例えていうならクッキーとアディを両親としてヒトハを長女とするようなものだ。
──はい。ありがとうございます。フタハを大事にします──
──うん。じゃあフタハをお願いね──
アディは[世界樹の森]に戻っていき、ふたたびフタハがやってくる。
──フタハ、アディお母さまの言ったことわかってる?──
──ん、ヒトハん姉。わかってる──
フタハとその配下の下級ドライアド25体の協力を得て、ノマドの見張りをさせながら旧街道沿いの支配地をさらに北上させる。
※ ※ ※ ※ ※
──ヒトハん姉、[はじまりの村]からヤツ等が動き出したっペよ──
やはり動いたかとヒトハはフタハ達をヨツジの森まで避難するように指示。自分はノマドのことを調べようとその場に残った。
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